表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/6

エンディング

あすか:(最終ラウンドの感動的な静寂の中、四人の穏やかな、あるいは晴れやかな表情を見渡し、深く頷く)「ありがとうございました。皆さんの魂の結論、確かに、お聞きしました」


(あすかは、ゆっくりとスタジオの中央へと歩みを進める)


あすか:「『時代が私に追いつくまで』…。もしかしたら、本当は、皆さんが時代を待っていたのではなかったのかもしれません。時代の方が、皆さんのそのあまりに純粋で、強靭な魂に、追いつくのを待っていた…。私たちは、今、ようやくその入り口に立ったばかりなのでしょう。皆さんが遺してくれた地図を頼りに、一歩、また一歩と」


(あすかは、再び四人に向き直る)


あすか:「この場所での対話も、まもなく終わりを迎えます。最後に、この時空を超えた語らいの場で、皆さんが何を感じ、何を得たのか。その最後の声を聞かせていただけますか。…では、ディキンソンさんから」


ディキンソン:(静かに目を開け、かすかに微笑んでいるように見える)「…私の部屋には、たくさんの客人が訪れました。嵐のような画家が二人。それから、雨のように優しい旅人。…私の静かな庭に、たくさんの声が響きました。たまには…こういう嵐も、悪くないものですわ」


あすか:「ありがとうございます。賢治さん、いかがでしたか?」


賢治:(柔和な笑みを浮かべ、少し照れたように)「わたくしは、自分のことで精一杯の、ただのデクノボーでした。ですが、皆さんとお話しして、確信いたしました。時代が違っても、国が違っても、魂の形が違っても…誰もが、自分の星を、必死に輝かせようとしているのですね。この声が届く、未来のどなたか。どうか、あなたのほんとうのさいわいを、見つけてください。心から、そう祈っております」


あすか:「その祈り、きっと届くでしょう。…では、ゴーギャンさん」


ゴーギャン:(ふう、と大きなため息をつき、ふてぶてしく笑う)「まったく、疲れる座談会だった。感傷的な奴は泣き出すし、説教臭い奴はいるし、独り言の多い嬢さんもいた。だが…まあ、退屈はしなかったな。それだけは認めてやろう」


あすか:(微笑みながら)「最高の賛辞と受け取っておきます。では、最後に…フィンセントさん」


ゴッホ:(穏やかな表情で、隣のゴーギャンを真っ直ぐに見つめる)「……ポール」


ゴーギャン:(ギョッとしてゴッホを見る)「…なんだ」


ゴッホ:「アルルでは、すまなかった。僕は、君を追い詰めてしまった。…でも、それでも、また、こうして君と話せてよかった。本当に」


(ゴッホは、心の底から、晴れやかに微笑む。その純粋な言葉に、ゴーギャンは一瞬たじろぎ、照れ隠しのように、わざと乱暴に顔をそむける)


ゴーギャン:「……フン。感傷に浸るのはそこまでにしろ。…次に来る時は、地獄かもしれんがな。その時は、もうちっとマシな絵を見せてみろよ、フィンセント」


(その言葉は、彼なりの友情の証だったのかもしれない。ゴッホは、嬉しそうに、ただ静かに頷いた)


あすか:(その光景を、万感の思いで見つめる)「…皆さんの声、確かに未来へ届けます。それでは、元の時間へとお帰りいただく時が来ました」


(あすかが静かに手を掲げると、スタジオの奥で、再びスターゲートが光の渦を巻いて起動する)


あすか:「ポール・ゴーギャンさん。あなたの揺るぎない魂と、孤高の哲学に、心からの敬意を」


(ゴーギャンは立ち上がると、ゴッホの方を一瞬だけ見て、ニヤリと笑い、誰に言うともなく「じゃあな」と呟いて、堂々と光の中へと消えていった)


あすか:「宮沢賢治さん。あなたの無償の愛と、銀河鉄道の旅が、これからも多くの人の心を照らし続けますように」


(賢治は、全員に深く、深く一礼し、「皆さま、どうかお健やかに」と言い残し、優しい笑顔のまま、光に包まれていった)


あすか:「エミリー・ディキンソンさん。あなたの静かな庭から紡がれた永遠の言葉を、私たちはこれからも探し続けるでしょう」


(ディキンソンは、静かに立ち上がり、誰にともなく、しかし確かに、小さく会釈をした。そして、まるで自分の部屋の扉を開けるかのように、躊躇なく光の中へと入っていった)


あすか:(最後に残ったゴッホに、ひときわ優しい声をかける)「フィンセント・ファン・ゴッホさん。あなたの魂が、どうか、安らかでありますように。あなたの愛したひまわりが、いつまでも太陽の方を向いて咲き続けますように」


(ゴッホは、穏やかな涙を浮かべ、晴れやかな、本当に晴れやかな笑顔を見せる。そして、深く一礼すると、振り返り、自ら光の中へと、確かな足取りで歩んでいった。その背中は、もう寂しくも、苦しそうでもなかった)


(スターゲートの光が静かに消え、スタジオには、あすか一人だけが残される。テーブルの上には、彼らがいた痕跡である、四つのティーカップが静かに置かれている)


あすか:(ゆっくりとカメラに向き直り、深く、長く一礼する)


あすか:「物語は終わりません。彼らの声は、これからも時を超えて、あなたの心に響き続けるでしょう。『歴史バトルロワイヤル』、また、次なる物語でお会いしましょう」


(あすかの静かな声が響き渡り、スタジオはゆっくりと暗転していく)

(了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ