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孤独の人  作者: 神の恵み
現代編
6/113

第6話 海外帰国子女

多少の恋愛要素も入れておりますが…

自分自身も鈍い方でして…


秋になって、父から『恋人ができた』と報告があった。

俺よりも祖母の方が心配顔をしている。


「いや、同居はしないでしょう」


と祖母をなぐさめたら


「いや、同居はするだろう、普通」


と父は困った顔をした。


どうやら子供(俺)の事を相談している内に、相手女性の娘の事も相談されて、お互いに相談し合う仲になったらしい。


女の子の声まねをして言ってみた。


「ママを取らないで!」


父と祖母の両方がギョッとした顔をしたので


「そんな事にならない?」


と父に聞いてみた。


「ふ~~~」


と長い溜息を吐き出したあと、父は冷蔵庫からロング缶を取り出して、祖母と飲み始めた。




いつもと同じ、朝5時半に起きて仏壇にお経を唱えてから腕立て伏せを30回。

6時からは中学用問題集に取り組み、7時半に朝食。


夏休みが終わっても、いつもの朝だ。


「はじめは通い婚からかな?」


「おまえは本当に……でも、それも有りかな…」



学校の帰り道、同級生の鈴本たちが学習塾へ入ったあと、俺はそのまま真っすぐに駅前商店街へ行ってから、マンションに帰る事にしている。


例の悪ガキ3人組がいなくなってからは、コンビニATMを目的に商店街に来ていた。


株取引でお金は増えたが、生活資金は必要都度、父から俺の専用口座に振り込んでもらっているからだ。


株取引しているのは俺だが、お金は入出金とも父の名義で俺の物ではない。

もし父が金の亡者だったなら、半分は取られるかも知れない。


また、利益に対する税金は、源泉徴収有りの特定口座にしているので、税率20%ほどで証券会社が代わって支払ってくれている。



コンビニに入っても、買い物はほとんどしない。

ATMでお金を下ろしてから、売れ筋商品がどんな変化をしているか、そんなチェックをしている。


スイーツの確認をしていると声を掛けられた。


「石山くん?」


振り返ると6年生になってから転校してきた女の子がいた。


「え~と、あり…『有本ありもとです』…そうだった。何かな?」


「スイーツに見とれてる子が、クラスの石山くんだったのが衝撃だったから」


「いや、見とれてたわけじゃないよ。飽くまで市場調査さ」



微妙な顔をして、納得していない事をアピールしているのかな…。


「ここじゃ~じゃまになるから、喫茶店でお話ししない?」


「えっ、喫茶店? コーヒーショップじゃなくて?」


「引っ掛かるのはそこ? 驚くのはわたしよ」



コンビニの支払いを済ませた彼女は、商店街の古びた喫茶店に俺を案内した。


「この店は、わたしのお爺さんがやってる店なの」


「へ~ 手伝ってるって事?」


「まさか…」


カウンターの向こう側のおじさんと目が合った。

あの人が有本さんのお爺さんになるのか…


「俺はホットコーヒーを!」


「えっ コーヒー飲めるの?」


「家にコーヒードリッパーがあります。父のだけどね…」


「私はレモンティーを!」


なんだかおじさんは笑顔になった。

(ま~俺も一応お客さんだし…)


まるで自己紹介のように話し出した彼女は、いわゆる海外帰国子女で、オーストラリア人の父と日本人の母の間に生まれた子だ。


将来の事を考えて、彼女を日本に帰国させて、日本で大学まで過ごさせようとしているらしい。

父親は日本食の熱烈なファンだそうで、老後は日本で暮らしたいらしい。


帰国してからの話も聞いたのだが

……早い話が、私と同じで友達がいないあなたに、私が友達になってあげる?


「ん?どういうこと?」


「学校でいつも一人だし…隠しても分かるわよ」


なんだか得意げに話す鈍感力には、感心するしかなかった。

もしかして断ると、泣いちゃうパターンか?

そんな事になると、おじさんが怖いんだけど…


「そういえば、この店のスイーツもお勧めよ!」


「いや、だから、あれは市場調査だって言っただろ…」


そう言って、小さなメモ帳をランドセルから取り出して見せた。

人気商品ランキングとかいって、3位までを過去から陳列していたのをメモしている。

食べない人だからこそ、商品名と価格はメモしているのだ。


「ふ~ん」


とりあえず、コーヒーの味は悪くない。

豆の劣化を起こさないためには、1日最低でも100杯は売れないと維持ができないと聞いた事があるが、この店はその水準を守れているらしい。


各種の簡単なランチも出しているので、固定客が一定数いるのだろう。

もしかして、料理の腕前がいいのかも知れない。

利益率は食品の方がいいのかな?


「ね~ どうするの?」


「ん~ いまのところ友達はいらないんだけど…」


あ!顔が凍り付いている気がする…



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