第5話 鈍感力
休みの日には多めに投稿しています。
読んでくれている人がいる…それだけでうれしいから。
進学先は、徒歩圏内の私立中学という事で、父とは合意が出来ている。
学力的にも問題はないらしい。
入試試験は来年の2月ごろとの事。
学校では修学旅行が話題になっている。
だが、なぜ栃木県なのか?
なぜお菓子を持って行くのか?
最も気に入らないのが『おみやげ』だ。
食べ物以外はすべてゴミにしかならない!
ま~ 俺は祖母の急病で行けない予定だけどね。
ママから父へ連絡があった。
『息子がママと話したがっている』と周囲に不完全な情報を広めたからだ。
俺のGメールアドレスにメールが届き、その後、Skypeのビデオチャットで会話をした。
ママの右肩には、知らない男の大きな顔が映っていた。
「あきら!! 大きくなったね~ ママを覚えてる?」
「hello !」
ここで『ブチッ』と回線を切った。
HUBからケーブルを物理的に引き抜いた。
無性に腹が立ったからだ。
『大人げない』なんて言うなよ。
小学生なんだから。
回線を復帰させたあとは、Skypeの呼び出しを無視して、Youtubeの動画を見ている。
ヘビーメタルというか、ベビーメタルというか…。
『俺にもチョコレートくれよ!』そんな気分だったから。
この夜はそのままふて寝する事にした。
寝付けないまま、自分の気持ちを振り返る…。
ママの寂しそうな姿を期待していたのかも知れない。
自分と同程度には。
まさか、幸せ感を120%出して登場するとは思わなかった。
『……』
いつもと同じ朝5時半に起きて仏壇にお経を唱えてからスクワットを50回。
6時からは中学用参考書に取り組み、7時半に朝食。
本当はオーストラリアに留学することを密かに目標としていた。
でも、もし現地であの幸せ感120%を見せつけられたら、正常でいられる自信が無い。
そんな俺には、ママが精神的トラウマになったかも知れない。
「大丈夫?」
祖母の呼びかけで、落ち込んだ表情をしていたのだと気が付いた。
「大丈夫だよ。ママ以上に幸せになってやる」
父が渋い顔になった。
インターネットで英会話ができるサービスがある。
月5000円程度。事前予約で約10分。
お試しをしたのだが、講師に当たり外れがあった。
最も嫌だったのが、相手が子供だと舐めてかかる講師だ。
相手の国の経済状況や物価動向などを英語で会話したいのに…。
英語学習の塾もあるようだ。
個別指導の塾にでも行ってみるか…。
合気道道場に近い英語塾なら、道も知っていて都合がいい。
夜になって、珍しく父が早めに戻っていた。
「ママとはうまくいかなかったのか?」
「英会話が目的だったのに、何か違ってたんだよね…自分の気持ちも、まだ整理できてないみたいだし…ごめんね父さん」
「いや…俺たちのせいで、おまえに辛い思いをさせてるって分かってるから…」
「つらいなんて思ったことはないよ、本当。寺での生活も今ではいい修行になったと感謝してるんだ」
空になった私のコップに、ロング缶のビールを傾け『飲むか?』という仕草をする父に
「9年早いよ!」
と言ったところへ、祖母がやってきた。
「私がもらおうかね~」
食器棚からコップを取り出し、ダイニングテーブルの俺の隣に座る祖母。
親子水入らずという感じで、仲良くビールを飲むふたりに
「お先に…」
と言って、部屋に戻った。
中学用の参考書がある程度進んだため、問題集で理解度の確認を行う事にした。
覚えた直後にやって『俺はできる!』などと勘違いしないために時間をおいている。
参考書や問題集など、本当に便利なものだと感じるのは、俺だけだろうか?
6年生になり、クラスでは真剣に学習に取り組む雰囲気はある。
だけど頭だけ鍛えてもダメだと俺は思う。
体と心を鍛えなければ、生きて行くのに障害が多くある。
心を鍛えるため、駅前で何やら大声で演説をしている人がいる。
思うに、心の強さは鈍感力でもあると思う。
自分を見る人々を、かぼちゃだと思える心。
自分を非難する声を、雑音だと思える心。
夏休みに入ったものの、学習塾でみんな忙しいみたいだ。
もちろん、スピンアウトする者もいる。
でも、みんなには鈍感力を養ってほしい。
具体的にどういう事かと言えば、ママからメールがたくさん届いているのだが、返事はしていない。
雑音なのだから。
資産運用の資金が1千万を超えたので、デイトレードでの金額も大きくなっている。
単純に金額を大きくしている訳ではなく、ボラティリティー(価格変動)が少し大きい銘柄も投資対象にしている。
ネタさえあれば、週30万円程度は簡単に稼げてしまう。
逆に、これと思う銘柄が見つけられない週は稼ぎがない。
基本的には、普及率の高い分野には投資していない。
前回の経験から底値を拾う買いと、上昇初期狙いのデイトレードが中心だ。
講座で学習したチャート分析も参考にしている。