第3話 資産運用
書きためたものは多いので、内容を再確認しながら投稿しています。
自分用のメモみたいな感じでしょうか…
実は『鈴蘭の剣』というゲームを始めてから、執筆が止まっています。
本当は、戦闘シーンの参考にでもなれば…と思って始めたのに…
5年生になると林間学校やらの学校行事が増えて来た。
だが、僕は全て不参加。
座禅は山寺で嫌と言うほど経験をしている。
もういいだろう。
4年生で5年用の参考書をやり終えた僕は、今6年用の参考書に取り組んでいる。
昔から家で1人の時間が多く、勉強か本を読んでいれば、周囲は優しかった。
今では勉強は趣味みたいなもので、好きな事をしていると思えば、それほど苦にはならない。
資産形成講座では、保険のしくみ、投資信託、株と債券、商品市場について学んでいるが、本ではなく、インターネット動画で、別にPDFテキストもある。
気持ちは大人。でも、英語由来の単語には弱い。
講座でコモディティー商品が金や原油、穀物の事やその先物取引だと知った。
ま~長期の講座なので、猿でも理解はできるのだろう。
「いや、貯金は貯金、保険は保険。餅は餅屋って言うでしょ?」
「確かに、そう言われれば満期返礼金はいらないわね…」
資産形成講座のおかげで、貯蓄型生命保険の矛盾を祖母に説き、携帯ゲームに課金する同級生には経済合理性を説明する小学5年生になった。
「人間のためになり、人間を幸せに出来る消費。そういう消費じゃないとダメだよね?」
「えっ? う、うん、でも少しだけだから…」
テストも運動もできているのだが、なぜかクラスの女子には引かれている。
ケチは女子受けが悪いらしい。
夏休みには、念願だった合気道道場に入会する事になった。
気持ちと頭が先行したが、やっと体も鍛える事ができる。
実際には、少年部コースの会員になり、頑張っている。
合気道では慣れるまで筋が硬く痛かったが、力を抜く事を覚えた。
組み手では、相手を投げ、相手に投げられる。
それを繰り返しながら、受け身などの基本動作を覚えている。
やはり武術は楽しい。
学校の成績通知表を見て、父の態度が明らかに変わって来た。
祖母とふたりで、どこの私立中学が良いのか情報を集めているらしい。
希望を聞かれたので『歩いて行ける所しか行かない』と答えておいた。
はっきり言って、東京は電車がめちゃ混みなのだ。
山寺にいた僕にとって、徒歩1時間の通学時間なんて楽勝だ。
父との話し合いで、俺も父のように海外留学は経験したいが、官僚や会社員は目指さず、実業家になりたいと話した。
最初、驚いていた父だったが
「それで資産形成の講座だったのか…」
一人で納得し、笑顔の父。
とりあえず、父の名義でネット証券の口座を開設して、毎日、空想の株取引を始めた。
銀行口座から証券口座にお金を振り替えても、一応、利息は付くので不利益はない。
未成年者の証券口座の開設には、親権者の同意が必要だし、父の銀行口座からの現金振替を原則としている。
証券取引の勉強のため、というのが建前で、父からもらった金額は100万円。
長期に投資できる金額ではないので、月曜から買い始めて金曜までには売り、土日は現金に替えておく短期投資。
先物は経験年数がないと取引はできないから、現物取引の買いから始める一手。
まずは値上がり株を一覧で見て少し買い、午後には売る事にした。
1日で売買した場合には手数料が特別に安いからだ。
30万円の売り買いで週に5万円ほど稼ぎ、夏休みが終わる頃、携帯を買ってもらった。
買った時点で、売り金額を入力し、自動的に売る事ができる。
だが手動だと、学校が終わる頃には証券取引所は閉まっているからだ。
そして4時半には道場に向けて30分の徒歩移動。
稽古が終わる6時は既にラッシュ時間だが、歩きの俺には関係がない。
秋に入り、注目していた値上がり期待の鉱山株が逆に暴落した。
2500円付近だった株価は1700円付近まで落ち、衝撃を受けた。
もしも買っていたら大損をしていたところだ。
株価が落ち着いた所で30万円ほど買った。
だが、翌週に更に株価は落ち、600円まで落ちた。
冷静に、冷静に…
自分に言い聞かせながら、追加で30万円分購入。
単価が落ちたので株数はたくさん買える。
これで平均単価は1700円から887円に。
だから900円まで値が戻れば、元金は戻る。
しかし、株価は更に320円まで落ちて来た。
資金はあと40万。
ここまで落ちて来たならと、追加30万円分購入。
平均単価は557円まで下がった。
ま~ 自分のお金ではなかったとは言え、気持ちは大きく落ち込んだ。
「もう少し待っていれば…」
そんな後悔だけが、いつまでも続く。
だが、さすがに1000円台には値が戻るだろうという気持ちもある。
気晴らしに、駅前商店街を歩いていると、ゲームセンターに例の3人組を発見した。
負ける気はしないが、今はリコーダーを持っていない。
さっさと歩を進めて、ドンキホーテに逃げ込んだ。
入口付近を注目していると、やはり3人組が入って来た。
エスカレーターに乗って上の階に誘導する。
派手な追いかけっこになると店員に怒られるが、俺が小学生で相手が中学生なのだから、こちらが有利か?
3階から階段スペースに回り込んで、待機。
一人に見つかって
「いたぞ~」
と視線を逸らし、大声を張り上げる男の子を足蹴りにしてから、近くまで来ていた一人を引き付けながら、階段を降りる。
この階段は2人分の幅しかなく、かなり狭い。
階段の4段を一気に飛び降り、壁に手を付き、その反動で更に下り階段を折り返す。
後ろに迫る男の子を引き付け、更に飛び降りた。
そして今度は、壁に手を付き、折り返さずに振り向き、俺の真似をして階段を飛び降りてきた男の子を迎え撃つ。
壁にもたれて彼の着地を待つ。
まるでスローモーションのように、彼の着地と同時に俺の足が彼の胸を蹴り、彼は階段に尻と背中を強打して、立てなくなった。
階段の上で見ていた3人目の男の子は、そこで見ていて、降りて来なかった。
「おまえら、警察に補導されたいのか」
「………」
彼らには俺の言葉は通じなかったのかも知れない。
だが、それはどうでもいいことだ。
戦う際には容赦はしない。
それが礼儀だと思うからだ。