表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女嫌いで男嫌いで人間嫌いで女よりも女らしい男の異世界転移。  作者: 私はがんばらない。
プロローグ
1/33

プロローグ

 好きになった女がいた。小学生のときだ。低学年のとき。1年とか2年の頃。

 もうよく覚えていない。覚えていたくもないことだから。


 女を好きになった、好きになった女がいた、なんて、思うだけで吐き気がする。

 ありえない。まじでありえない。おえ。


 本当にどうかしていた。あの頃のオレはオレじゃない。

 女を好きになる、なんて、そんな人間はオレではないのだ。


 ただ、そんなことをげろと一緒に吐き重ねていても話は進まない。過去は変わらない。ので、一度()みこんで――人間、過去にひとつは間違いを(おか)すものだ――なんて人生の()いも甘いも知ったような言葉で(つつ)んで()みこんで。……ただ()っぱいだけで、オレは盛大に顔を(しか)めるのだが。


 そんなオレも確かにいたのだと。そんな間違いも確かにあったのだと。

 

 オレの、間違いの、過去の、話をする。


 彼女に告白をした。フラれた。――なよなよしてる。女の子みたい。

 そう言われた。


 子供は男の子じゃなくて女の子が欲しい、そんなことをオレが産まれる前から言っていた両親は、オレに――産まれた男の子に、女の子の格好をさせていた。

 かわいい服を、かわいい格好をさせて、髪も女の子のように伸ばす。

 だから、当時のオレは、確かに女の子(・・・)みたい(・・・)だった。


 虐待だ、と思うだろうか。ただオレは、(いや)じゃなかった。

 とある(・・・)絶対的な(・・・・)ひとつの(・・・・)理由(・・)により、自分が女の子の恰好をするのも、両親がオレにかわいい服を着させてキャーキャーと写真を撮るのも、(いや)じゃなかった。

 それが当たり前だと、普通なんだと、思っていたくらいだ。


 子供……園児また小学生の低学年なんて、(みずか)らの家庭(いえ)が世界だ。

 普通(ほか)世界(いえ)を知るのは、それより少しあと、高学年ほどになってからだろう。


 だから、オレは、『なんとなく自分はほかの子たちと違う』と思っていたのが、そこで。

『自分はほかの子たちと違うんだ』と理解した。認識した。


 これがプロローグ。オレという人間のプロローグ。

 さて、では。


 自分はほかの子と違う――男の子なのに女の子みたいな男の子、だと認識したオレは、どうしたのか。


 ひとつ、教えておく。

 オレは、はっきりしないことが――なよなよ(・・・・)()()()ことが、クソ嫌いだ。


 だから、結論を言う。――オレはなにも(・・・・・・)変わらなかった(・・・・・・・)

 変わらず、女の子みたいな男の子のままでした。


 意味がわからないと思うだろう。きっと理解はできないだろうが、理由を言う。


 理由はひとつ。先のとある絶対的なひとつの理由だ。――()()()()()()()


 オレはかわいいのだ。

 それが絶対的なひとつの理由であり、絶対的なひとつの事実。


 今年の冬を迎えて17歳になる。成長したいまとなっては、美人、という言葉を選ぶほうが正しいのだろうが。そう、オレは、かわいかった。


 女の子(・・・)みたい(・・・)

 それは、女の子の格好が似合っていた、()()()()()()()()、ということで。


 両親が特に母さんが「うちの子は超かわいいねぇ~」「蝶よりも花よりも世界のどの女の子よりもかわいいよぉ~」とオレの母親であることが納得できる美人が台無しのクソ気持ち(わる)……だらしない顔でオレを着せ替え人形にしていたのは、ただの親バカということではないのだ。


 オレがかわいすぎた。それだけ。

 彼女が気持ち悪かったのは彼女のせいじゃない。オレのせい。

 かわいいは(つみ)、という言葉があるだろう。オレが(つみ)なのだ。


 名前も顔ももう覚えていない、彼女にフラれたオレは、なにも変わらなかった。

 なにも変わらなかった――けど。しかし。

 さすがに思う(・・)ところ(・・・)はあって。


 仮にも、(はつ)こ――ウォエッ。……失礼。

 (はつ)こi――ヴォェエ――ッ。

 ……はぁ、はぁ……、(はつ)(こい)、……だったんだ。


 初恋(はつこい)は、()()だ。それははじめての恋だからということも当然。初恋とは滅多に(みの)らないものであるから。


 初恋が(みの)った人間は、オレは宝くじの1等が当たった人間よりも少ないと思っている。さすがにそれはない? いや、教えてくれなくていい。初恋が(みの)った人間なんて――人間なんて、興味がない。

 オレが教えてほしいのは、初恋が(みの)らなかったとき。

 初恋相手の彼女あるいは彼にフラれたとき、どうするか。どうするだろうか。


 忘れたり。忘れて違う人間に恋をしたり。忘れられずにもう一度追いかけてみたり。トラウマになって恋をするのをやめたり。

 色々あるだろう。人それぞれ。千差万別だ。


 さすがに千も万もないだろうが、人間は、人間の行動は、人間それぞれに違って。だから()()()()()()人間もいる。


 オレは――復讐(・・)だった。

 そう、復讐だ。


 と言っても、言葉から連想するような過激なことじゃない。

 彼女になにかしたわけじゃない。するわけない。


 オレはもうそのときには、彼女に――オレ以外の人間に、興味なんてなくなっていたから。


 ――女の子みたい? なら、もっと女の子(・・・)になってやる。

 ――男のオレがお前よりもかわいい女の子になって、見返してやる。


 そんなことを思ったのだ。


 そしてオレは彼女に復讐をした。復讐を果たした(・・・・)。――そう、果たした。

 もうひとつ教えておく。


 オレは、女の子(・・・)みたい(・・・)じゃない。――女よりも(・・・・)女らしい(・・・・)()だ。


 言っておくことは、彼女のせいでオレは変わった、彼女によってオレという人間は変えられた――そうじゃない。

 名前も顔ももう覚えていない彼女も、オレにかわいい格好をさせはじめた両親も、それはあくまでも()()()()で。


 オレがこうなったのは、オレ自身だ。オレの気持ち。意思。


 他人に、人間に、変えられたわけじゃない。そんなのはありえない。

 オレをなんて思おうと勝手だが、そこだけは間違って思わないでほしい。

 本当に、どうしようもなく、吐き気がする。


 オレは、女が、男が――人間が、嫌いだ。


 そんなことを、つねごろ、毎日、四六時中、考えていたからだろうか。

 そんなことを考えていたから、こう(・・)なった(・・・)のか。


貴方(あなた)しかダメなのですね。貴方(あなた)の血を、飲ませてはいただけないでしょうか?」


 オレは〝吸血鬼(きゅうけつき)〟とかいこうした。

頭のなかでは9章ほどできているのですが、どうにも仕事が忙しくて遅筆です。

どうか応援よろしくお願いします。

ブックマークや評価お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ