008 驚く者。
こんにちは、ボンバイエです。
順調に連休が消化されていきます。
こうやって日々は過ぎ去り、歳をとっていくのでしょう。
本当に、20歳以降は時間が経つのが早い。
それも年々早くなります。
同じ24時間365日のハズなんですが・・・。Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
『天使様は浮世離れしていらっしゃる。』僕は正直そう思った。
だってそうだろう?
ここに来た事がこの家で何をしても良いとおっしゃるのだから。
ザバルティさんは笑いながら詳細を説明してくれた。
僕とアーニャが最初に訪れた倉庫部屋はある特殊な条件によってある扉を開けて入ると来る事が出来る場所なのだそうだ。
それも一方通行のその扉は、特殊条件を満たしていない場合だと現地の部屋に入る普通の扉なのだそうだ。
「特殊条件?」
「そう、特殊条件だよ。」
と言い僕を見るザバルティさんの笑顔に変化は無い。
特殊条件に満たしていれば、あの倉庫部屋に通ずる扉に繋がる魔法が発動する仕組みだという。
そしてその倉庫部屋の物を持ち出す事を容認する理由がその特殊条件を満たしている人だからだと言う。
「その特殊条件を満たしている人だったら、良いという事なのですか?」
「そうだよ。持って出られて困るモノは置いて無いし、逆に手助けになるなら持って行って良いモノしか置いて無いからね。」
僕はそれを聞いてほっとした。
『罪に問わない』と言ってくれているのと同じだと思ったからだ。
ある意味で、洞窟でみつけた宝箱の物を持帰るのと同じだと思ったからだ。
「あの、『特殊条件』って何が条件になるんですか?王族とか?」
「あははは。そうだね。そんな所だよ。」
笑って答えるザバルティさんはチラリと僕を見た。
王族だからこそでは無いのだろう。
他の条件があるが敢えてそれを言わないで僕を見る所、何となく条件が分かった気がする。
「まぁ、ここに来た時点で何かしら手助けしてあげたいと思うのだけど、姿を現して説明する気も無いから、いつもは成り行きを見ているだけなのだけど、ここに返しに来るって所が気になってね。ついつい声をかけてしまったよ。」
「変ですか?」
「そうだね。この世界では変かな?そうでも無いのかな?まぁ、そもそもお金を置いて行くというのも気になったからね。二つ重なると『あれ?』ってなるでしょ?あぁ、もちろん好意を憶えたからだけどね。」
そう言って『あははは。』と笑うザバルティさん。
神々しい容姿でほんわかした雰囲気にはギャップを感じる。
「そうだ。ちょっと提案なのだけど、君達さえ良ければ少しこの家に住まないかい?」
「えっ?」
「いやね。少し訳アリみたいだし、時間が経てば色々変化するだろ?どうだろうか?」
「正直ありがたいです。本当に良いのですか?」
「うん。もちろんだとも。但し。」
ゴクリと唾を飲み込む。
何を提供させられるのだろうか?
「但し、『働かざる者、食うべからず。」だからね?」
「もちろんです!」
「働かざる者、食うべからず?」
アーニャが理解していなかったので、ザバルティさんは苦笑いを浮かべた。
僕はアーニャに働かないと食べる事は許されないという事だよと説明して理解してもらったのだが、そんなに難しい意味だろうか?
「では、よろしくね。」
「「はい。よろしくお願いします。」」
僕とアーニャは頭を下げた。
とにかく、これで当面の事は何とかなりそうだと思い、ほっとした。
その後、ザバルティさんは僕達が住む部屋を案内してくれた。
廊下に出て玄関とは逆方向に行くと階段があった。
階段を上がると二階の廊下に繋がっており、その廊下の左右に部屋が並んでいた。
「この家には今は私しかいないから紹介できないけど、明日以降にはちょっとずつ戻ってくるだろうから、その都度紹介するね。」
「はい。お願いします。」
「じゃあ、ジャック君はこっちでアーニャ君はこっちを使ってくれ。風呂はそれぞれの部屋にあるのを利用してくれ。使い方も説明しておこう。」
そう言ってザバルティさんは僕にあてがわれた部屋の扉を開ける。
僕は思わず『うぁ。』と感嘆の声を上げてしまった。
手前に廊下のような小さなキッチンが用意されておりその逆の部分にトイレと風呂が設置されているもちろん扉つきのモノだ。
で、キッチン兼廊下の先にはベットと机が置かれている。
部屋の広さ的には12畳はあると思える。
つまり、1DKのマンションの一室という様な造りなのだ。
しかも、ガラスが使われている窓も設置されており、陽射しが入る様になっているのだから僕が驚くのは無理からぬ事だと思う。
この世界にはガラスはある。
だが、まだまだガラスは高い。
貴族の館などには使用されているが、この大きさの一枚ものは早々お目に掛かれないだろう。
それが惜しげもなく部屋の窓に使われている事が凄い事なのだ。
しかも、テラスまであるのが見て分かる。
より一層マンション感がグッと上がっている。
テラスにはテーブルとイスが設置されている。テラスの屋根はガラスで出来ているのか、夜空が見えている。
「すごい!」
「あははは。ちょっと頑張っちゃった人が居てね。あははは。」
アーニャと僕の感激している様子を見てザバルティさんは苦笑いを浮かべている。
もしかすると、ザバルティさんの意志ではないのかもしれない。
だが、それでも凄い事には変わりない。
そして、お風呂の使い方を教わる。
蛇口をひねる事で水が出る。
しかも温度は調整できる様で、調整ツマミがついている。
「あちっ!」
可愛らしくアーニャが飛び上がったのを僕とザバルティさんは笑って見守る。
『てへへ。』とアーニャが頭をかいて恥ずかしがっている。
「とまぁ、この部屋にあるモノは何を使って貰っても良いから。」
「はい。」
「じゃあ、夕食の準備が出来たら、呼びに来るからそれまで二人はゆっくりとしていると良いよ。」
「ありがとうございます。」
アーニャが『お手伝いします。』と言ったが『今日は良いよ。』とやんわり断られていた。
ザバルティさんが部屋を出た後、僕とアーニャは部屋に用意されていた椅子に座る。
「一時はどうなるか?と思いましたが、良い人に出会えて良かったですね。」
「そうだな。でもこんなに僕等に都合の良い話なんてあるのかな?」
「う~ん。今考えても仕方ないのではないですか?」
確かにアーニャの言う通りだ。
疑い過ぎても意味は無い。
ただ警戒心は早々に捨て去る事は出来ない。
情けなくもあるが、それが経験からくる染みついた反応なのだから仕方がない。
「そうだな。それよりも凄いな。ここは。」
「そうですね。下手な王城よりも設備が整っているのではないですか?少なくとも公国よりは凄いです。」
これもアーニャに同意する事だ。
一見すると公国の王城の方が豪華に凄く見えるのかもしれないが、この部屋の造りを見る限り圧倒的な技術力の差を感じるのだ。
きめ細かい造りの様子は建築美を意識しているのだと思える。
審美眼があると自惚れている訳では無いが、素人目に見ても唸らされるモノがあるのだ。
アーニャにとってはこの世のモノとは思えないと感じるのではないだろうか?
僕にとっては懐かしい?地球の景色である。
「とにかく、お言葉に甘えてゆっくりさせて貰おう。」
「はい。」
僕はアーニャを部屋へ見送った後、お風呂でシャワーを浴びた。
シャワーを浴びる事が出来る事が出来るなんて思っていなかった。
何かジーンと来るものが有り、眼から溢れるモノを抑える事が出来なくてシャワーから流れるお湯を顔にかけ続けた。
シャワーを浴びて見も心もスッキリして、部屋でくつろぐ。
偶然にもこの場所に来る事が出来たからこうしてゆっくりとする時間を与えられている。
そしてアーニャの進言に従って、素直に盗ったモノを直ぐに返した事も良かったのかもしれない。
とにかく、僕が判断して行動した結果が今に繋がっている。
そして、今のこの状況やこれからの行動で、その先の結果も変わる。
もしかすると、先を考え行動する事が出来るのもインストールされた前世の記憶のおかげなのだろう。
そんな事を考えていると部屋の扉がノックされた。
「用意が出来たから、キッチンに来てくれるかな?」
「はい。」
「あぁ、その前にちょっと良いかな?」
「えっと、どうぞ。」
僕はザバルティさんを部屋の中へ招き入れたのだった。
驚くと言えば、こんな私が子育てをしている事かもしれません。
自分の歩んできた道のりを考えると驚きでしかないですね。
日々、子供の成長を感じるのは楽しいです。
あんなに煩かった子が、今では大人しくなっていたりします。
ただ、煩かった頃の無邪気な笑顔をまた見たいと思うのは無い物ねだりでしょうか?(。-`ω-)