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005 隠れる者。

どうも、ボンバイエです。

もうすぐ正月休みは終わりです。

可もなく不可もなくという休みを堪能しています。

実家に帰省して両親の顔を見に行ったりしてますが、歳を取る毎にする事が限られてくるモノですね。

現在、バリバリの若い方達は今のうちに色んな事に挑戦する事をお勧めします。

それが例え苦手な事でも、やってみると案外面白かったり、その内役に立つ事も多いいですよ。


昼間のはずの『死竜の森』は生物が存在しないのかと思えるほど暗く静かである。

もちろん、僕の眼には精霊達が見えている為、静かでも無ければ生物の存在もわかる。

しかし、隣に居るアーニャにはそれは見えない。

今も僕の上着の袖をギュッと握っているし、ちょっとした物音を感じ存在を感じると『キャッ!』と僕の腕を抱きしめる。

あの『頑張ります!』宣言と前向きな様子は影を潜めている。


「お化けは苦手です。」


「いや、お化けは居ないと思うのだが・・・。」


ジッと僕を見つめるアーニャは立ち止まり僕の眼の前に立つ。


「殿下。何か様子が変わりましたよね?」


「そんな事は無い。」


ドキッとする事を言うアーニャの視線を躱し周囲を警戒している様にみせる。

この手の事は女性には敵わないので、たぶん誤魔化しきれないだろう。

だが今は話すつもりが無い。

アーニャを安全地帯だと思える所に連れて行くつもりだが、その先は彼女に決めさせたいからだ。

アーニャはそれ以上の話を聞くのを諦めた様だ。

その諦めた理由に周辺が怖いからだと思うのは気のせいだろうか?

僕が産まれてからずっと見てきたアーニャが僕の変化に気が付かないという事はないだろう。

だが、僕が真実を話すのと気が付いて確信を持つのとは大きく意味が異なる。

少なくとも確信を持っていても僕が言わない限り『もしかしたら・・・』が付いて回る。

それにアーニャに嘘はつきたくないという気持ちもある。

であれば、『沈黙は金』に頼る方が良いと僕は思う。


僕達は精霊が多い方へと歩いている。

もちろん目的地であるラルク王国に向かう為に進んでいるのだが、出来る限り魔物に遭遇したくないからだ。

精霊は魔物が近いとそこを避けようとする傾向があると僕は思っている。

逆に、精霊が多い方はそういう意味では安全な方だと考えているのだ。

この世界に悪い精霊が居れば、アウトでは有るけど、少なくとも僕は酷い目に遭わされた事が無いのは事実だ。


「殿下。殿下は迷わず進みますね?どうしてですか?」


そろそろ、その殿下呼びは止めて貰おう。

街に着くと色々と面倒だろう。


「精霊が多い方を選んでいる。それより『殿下』は止めてくれ。僕はバウエン公国で死んだ存在だ。もう王子では無い。それに、その呼ばれ方は好きじゃないんだ。」


「えっ、でもどの様にお呼びしたら?」


「そうだな。ジャックという名前も捨てたいからジャンかな?どうだ?」


「ジャン様ですか?」


「ああ。『様』も必要ない。」


「ムリです。」


即答で断られた。

間髪入れずとも言うな。

その後、押し問答を繰り返すが、呼ぶ方が勝手に呼ぶのが人という者だと思い直し諦める事にした。

そして何故精霊が多い方を選んでいるかの説明もして納得してもらった。

いち早くこの森を抜けたいという気持ちはあるが、安全が優先である事も納得してくれた。

『やっぱり別人?』とボソッと言っていた気がするが華麗にスルーしてやる。


そのまま、小さい声で会話しながら森を進む。

マッピング機能みたいなのがあれば良いのだが、残念ながらそんなスキルを持っていないので、目印を刻む事も考えたが追手が居た場合にそれは危険になるので止めておいた。

死竜の川をわざわざ越える事はしないだろうが、それでも念の為だ。

それに間者が居ないという保証も無い。

ここは国境なのだ。


死竜の川が両国を分ける役目を担っている。

川の太さがその原因だが、ここが渓谷という立地である事も理由の一つだ。

国境と言っても何かしらの柵がある所は平野部にしかない。

森などはその存在自体が天然の要塞の様なモノになるので、基本的には置かれていないのだ。

それに、この世界は魔物が居る為に基本的な防衛機能は都市毎に用意されている。

それ以上は防衛費の無駄になり易く、巡回している兵団がある程度である。

特にこの死竜の森は魔物の領分として認識されており兵を送る様な事はよっぽどの事が無い限りおこなわないだろう。

そもそも占領しても旨味が少ない。

死竜の森を開拓する余力があるならば、その他にいくらでも広げる土地はある。

また、死竜の森の様に大きな森は魔物が生息しており、下手に生態を乱して他の森に魔物が動かれる方が、人間にとって都合が悪くなるだろう。

そんな諸々の理由からこの森は触らずの森の一つでもある。


「はぁ~(煙草が吸いたい。)」


「どうしました?」


「いや。このまま森から出てラルク王国に向かうつもりだったのだが・・・。」


そう言って、僕の視線は僕の服とアーニャの服に向く。

平民らしくない恰好である事もまた一つの悩みだ。

もちろん服が良い事もだけど、傷ついている服である事も問題だ。

僕の視線で察した様子のアーニャも『そうですね。』と言って自分の服を見る。

小さい国であるとはいえ支給されている服は上等なモノだ。

それに死竜の森から出る所を見られても良いとは言えない。

『ふぅ~。』ともう一度だけ息を吐き、この問題を深く考えないようにした。

とにかく今は渓谷から抜け出す事と死竜の森から抜け出す事に注力する事が先決だ。


僕達は現在この死竜の渓谷の中心を通る死竜の川を背にラルク王国側の崖を目指している。

あまり中心部には行きたくないが、迂回できるとは限らない。

精霊の動きを見て動いているからだ。

本来は水の確保が出来る道具も無いので、川を下りたかったのだが、死竜の森の中心地が川下にある為に避けるしか無かった。

更にその方向には精霊が少ない事も判断材料にしている。



移動を初めて数時間が経過した。

ここまでは運よく魔物に遭遇していないが、ここから先も遭遇しないとは言い切れない。

ようやく渓谷の崖が微かに見えてきた。

崖の部分は土がむき出しになっているので少しばかり目立つ。


「ようやく、第一ポイントだ。」


僕は自分を励ます為にそう呟いた。

アーニャは相変わらず僕の上着の袖を握ったままだったが、少しホッとしている様子だ。

ふっとアーニャが居る方とは別の方角へ視線を向ける。

するとそちらの方から精霊が逃げてくる様な様子が見えた。

僕はアーニャの手を引っ張り、口を手で塞いで声を出さない様にジェスチャーで伝える。

アーニャは頷き了承を伝えてきた。

そのままアーニャを連れてその場所より離れて木に隠れる場所まで急いで移動した。

じっとしていると移動する生物の音が聞こえてくる。


『木の精霊達。僕達の周りを囲んで。』


僕は木の精霊にお願いすると近くにあった木の枝やツタが僕達の周りを包んでくれる。

まさにアニメの一場面の様な感じであっという間に包まれた。


『風の精霊。僕達を包んで。』


直ぐにふわりとした風が僕達を優しく包む。

これで僕達の存在を誤魔化せるか分からないけど、少しは何とかなるだろう。

僕達はその場で身動きせずに静かに待った。


少しして大きな何かが先ほど迄、僕等がいた場所の辺りに現れるが何も気にする様子もなく通り過ぎようとしている。

その存在が出てきた方向から多くの足音とギャギャっという音?鳴き声?が聞えてくる。

かなりの数の様子が伺える。

何かが狩りをしているのだろうか?


そうすると、先に動いていた様子の大きな生物らしきモノが獲物だろうか?

その割には逃げている様子では無かった気がする。

悠然と動いていた様な気がしたのだが気の所為なのだろうか?


その後も少しの間、ギャギャと煩い集団が最初に現れた悠然と動いていたモノの後を追う様に動いていた。

僕等は、その様子を見る事は出来なかったのでジッとそのまま動かずに時間の経過を待った。

その判断は正解だったみたいで二足歩行の歩く音が聞えてきた。


「ふん。下等生物は所詮下等生物だ。」


「まぁ、そう言うな。これも作戦のうちだ。」


女と男の二人の声と二人の存在を感じた。

ゴクリと僕は唾を飲み込んだ。

どうも視線を感じるのだ。


「どうした?」


「いや。何でもない。行こう。」


男が相方の行動に疑問を呈した様だが、それに女は即答した。

ひやりと背中に流れるモノを感じる。

だが、その二人?はそのままその前を動くモノ達の後を追う様に居なくなった。


僕とアーニャはそのままジッと時間の経過を待つ事にした。

たぶんあいつ等は戻って来ないだろうが、気にしている様子もあるので様子見をする事にしたのだった。


ご都合主義というものがありますよね。

あれって、作者の願望があたり都合よくする必要がある場合に起こり得る現象ですよね?

『絶対、私の作品には無い!』と私は言えません。

ご都合主義万歳!の人間なので。

主人公を含めた周りの人々が幸せになるのが好きな私は必ずやってしまうでしょう。


では、また明日。ボンバイエでした。

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