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037 美味しいご飯は食堂で。

こんにちは。ボンバイエです。

更新が遅くなり申し訳ありません。


さて、徐々に暑い日が増えて来ていますね。

とは言え、まだ春。

これからムシムシする梅雨が来ます。

今年はどんな感じになるのでしょうか?

ジメジメ降る雨は連日続いている。


所謂【()()】である。


語源は中国であり、【()()】からその季節の【梅】に変換され今に至るという説がある。


カビが生えるほどの湿気を含む季節であり菌が繁殖する季節でもある。




「いつもこの時期には憂鬱な気分になってしまうよ。」




溜め息と共にジョージア君が呟く。


「雨が降らないのは降らないで困るんだどね。」とも付き足したのだが、憂鬱な雰囲気は変わらない。


薄暗い天気が続き雨が降り続けるこの季節は好まない人が多いだろう。


ただ、誰もがこの時期の雨が大地を潤す事を知っており、必要な雨である事を認識しているだろう。


だからと言って好きになるかどうかは別なのだ。




「そうだね。僕も晴天の方が良いな。」




「だよね。カラッとした晴天の方が気持ちが良い。」




気持ちの問題なのだろうが、薄暗い雨模様より明るい晴れ模様の方が僕は好きだ。


ジョージア君も同じ気持ちの様だ。


二人して『どよん』とした空を見上げてそんな会話をしていた。


先日からずっと続く胸の重みの様なざわざわした感じがしているのもこの天気の所為だろう。




「とにかく、飯だね。」




「ジャック君は今日は何を食べるつもりだい?」




「う~ん。Bランチにしようかな?」




僕とジョージア君は二人して食堂へと向かう為に歩き始める。


これから行われる音楽祭の事など雑談を楽しみながら歩いていると外から騒がしい音が聞えた。




「あれ?何かあったのかな?」




「う~ん。どうだろう?いつも通り騒いでいる者が居るだけかもよ?昼休みだし。」




「そうかもね。」と雑談の一つとして僕等は通り過ぎた。


僕とジョージア君はあまり野次馬にはならない。


僕なんて野次馬が集まる方側だからね。








◇◇◇◆◇◇◇








「だから人間族はダメなのです!自分と少し違うだけで差別する等、劣等の極み!!」




「なんだと!!」




いきり立つ人間族の生徒たち。


その反対側にはハーフや獣人族など他種族が集まっている。




「はん!その人間族であるジャックにお前ら亜人達はやられているでは無いか?!」




「なんだと!!」




今度は、人間族の者から他種族の方へと売り言葉が飛ばされる。


だが、それもジャックという個人が関係してしまっている内容でありジャックにとってみれば只のとばっちりである。




「お前達!何を騒いでいる!!」




そんな状況下で風紀委員会の腕章をつけた者達が声を荒げ中央に入り込む。


それを見た一部はそそくさと逃げ出すように去って行くが熱くなり過ぎた者達は風紀委員達に睨まれながらひく様子が無い。


「のせられやがって!」とキリヴェル風紀委員は胸の内で悪態をつく。


とは言え、それを公言できるわけもなく、「ちっ!」と舌打ちをした後、前にズイッとでた。




「ふん!この屑共が!この私が自ら相手をしてやる。思いがある奴が出て来い!!」




美しい顔に厳しさを纏い大きな声で威嚇したキリヴェル風紀委員の様子を見てその場に居た者達は圧倒され、一気に冷静さを取り戻した。


その様子を見て溜め息をつくキリヴェル風紀委員は『不穏分子は先ほど離れた者達だな。』と確信した。




「よかろう。今日は見逃してやる。だがな、ここに居る者達は全員名前とクラスを名乗って行け。次は無い!」




ばっと風紀委員の面々が周囲を囲い、列を作らせ一人づつ開放していく。


予め決めていたかのように慣れた行動を見せる風紀委員のメンバー達。


そんな中、キリヴェル風紀委員は一人離れて独り言の様に呟く。




「おい。分かっているな?」




『もちろんだ。既に手配済みだよ。』




「なら、良い。」




キリヴェル風紀委員は左手でピアスに触った後、そのまま面白くなさそうな顔のまま歩き続ける。




「まったく。俺は忙しいというのにな。」




その視線の先にはジャックとジョージアの姿が見えた。


手を真っすぐジャックの頭に向けてニヤリと笑うのだった。








◇◇◇◆◇◇◇








「うぉ!」




「どうしたんだい?」




「いや。今寒気が走ってね。」




「風邪でも引いたのかい?」




「う~ん。そんな事は無いと思うけど。」




ぞわりとした感覚が身体を襲ってついつい変な声を出してしまった。


なんだろ?


僕は周囲を見渡すが何か違和感を憶えるモノは無い。




「まぁ、お腹いっぱいに食べれば大丈夫だろ?」




「そうかもな。」




気にするのを止めて、僕達は食堂へと入る。


食堂の中はガヤガヤと騒がしい。


皆、楽しそうに話しながら食事をとっているようだ。


僕達も注文をして商品を受け取り空いている席を探すと、窓際に空きがあるのが見えた。




「あそこで良いかな?」




「ああ。」




僕達はその空いている席に着いて食べ始め、談笑を交えて楽しく食事をとっていると少ししてザワザワした食堂が静かになっていた。




「あれ?静かになったね?」




「そうだね?どうしたんだろう?」




不思議に思い周りをキョロキョロと伺った。


すると、人だかりが中央で割れたのが見えた。




「あれは?」




そこを見ているとその割れた人だかりの真ん中を白い制服を着た二人の女性が何人かを従えて歩いていた。


そして何故か視線が合った気がした。




「ヴィクトリア公爵令嬢とキュアラニー公爵令嬢。」




ジョージア君が苦々しい顔をしてボソリと呟いたので僕はジョージア君の方へ向き直る。




「うん?今何て言った?」




僕の質問に我に返った様子のジョージア君が僕の顔を見ると苦笑いを浮かべた。




「あぁ。ごめん。彼女達は王位継承権を持つ公爵家の令嬢だよ。」




「公爵令嬢?って事は王族の血筋って事?」




「うん。解釈は間違っていないけど、少し違うかな。」




「どういう事?」




「あっそれはね~。この国の王族が一つの血統では無いからなんだよ。」




「へぇ~。そうなんだ。」




僕は思いっ切り前かがみになってジョージア君へと身を乗り出した。


とそこで、人影が目に入り僕とジョージア君はそっちへと顔を向けた。




「ごきげんよう。」


「ごきげんよう。」




二つの顔が僕の方へと向いていて、順々に言葉を発していた。




「はへ?」




僕は間抜けな声をあげてしまう。


それを見て目の前に来ていた二人から笑い声が聞こえる。


聞こえるというのは変かもしれないが、二人ともが扇子を持って口を隠しているから聞こえるって感じがしたわけだ。


つうか、予想外だろ?


なんで知らない人が声を掛けてくる事を予想できる?


僕は自意識過剰では無いよ?




「あ、あの何か用ですか?」




クスクスと笑う二人を前にとりあえず声をかけた。




「うふふふ。ごめんなさい。あまりにも可笑しくって。」




「もう。ヴィヴィ。笑い過ぎよ。うふふふ。」




「あら、キュアだって。うふふふ。」




二人ともツボったのだろうか?


笑いは止まらないようだ。


すると、後ろに控えていた一人の男前がスッと前に出てきた。




「貴様がジャック・マカロッサか?」




「ええ。そうですが。」




「お二方がお前に挨拶をなさりたいとおっしゃってわざわざここへ参られた。」




「はぁ。」




正直『だから?』って感じなのだ。


が、イライラした顔を向けてくるこの男前のこの態度ムカつくな。


まぁ、先輩からしたら僕みたいな後輩に話をする状況が嫌なのかもしれないけど、高圧的な態度をとられるとこっちまでイライラしてくる。




「なんだ貴様?!その『はぁ。』とは!!」




僕の態度が気に入らなかったのか、男前は僕へ腕を伸ばしてきた。




「止めなさい。」




鈴が鳴るような声で止めの声が掛った。


すると、男前はクルリと止めた人の方へ顔を向けた。




「ですが、キュアラニー様。」




「ディクト。」




「は、はい!出過ぎたまねをして申し訳ありません!!」




ディクトと呼ばれた男前はキュアラニーさんに向かって頭を深々と下げた。


ディクトを見ているキュアラニーさんの視線は物凄く冷たい。


それを感じたのだろう。


ディクトはスッと出てきた場所へ戻ろうとしたが、そこには別の人が居り一番後ろまで下がっていった。




「ジャック様。私の従者が失礼しました。」




「いえ。」




「うふふふ。ありがとうございます。私はジィールメア公爵家の次女キュアラニーと申します。」




「本当にお優しいんですね。私はディールメア公爵家の三女ヴィクトリアと申します。」




順々に挨拶をしてくれるキュアラニーさんとヴィクトリアさん。




「丁寧にどうも。僕は・・・まぁご存知だとは思いますが、ジャック・マカロッサです。ところでどういった御用でしょうか?」




「いえ。特にあるわけではないのですよ。」




「そうです。そんなに身構えずとも大丈夫です。」




ニコニコと笑うキュアラニーさんとヴィクトリアさん。


だが、身構えるなと言われても、女性が好意的に来る場合、碌な目に遭っていないんだよな。


だから、どうしても体が硬くなる。




「うふふふ。体育祭でご活躍された殿方が気になっただけですわ。」




「そうですか。」




「うふふふ。これからよろしくお願いしますね。」




「は、はい。」




「では、私達はこれで失礼しますわ。」




「ごきげんよう。」


「ごきげんよう。」




順々に挨拶をされた僕はピクピクしながらも「ご、ごきげんよう。」と返した。


キュアラニーさんとヴィクトリアさんはそのまま食堂を出て行かれた。


嵐が過ぎて行った様な気がする僕はドンとイスに腰を下ろした。


静まり返っていた食堂は元のガヤガヤとした状態へ戻っていく。


その中で僕が噂されているのは事実だろう。


時折聞こえてくる会話にジャックという言葉が聞えたから。




「ジャック君。大丈夫かい?」




「うん。たぶん。」




ジョージア君が心配そうに僕を覗き込みながら肩に手を置いた。




「面倒な相手に注目されてしまったね。まぁ仕方が無いか。」




「なにそれ。慰めになってないじゃん。」




「あははは。そうだね。ごめん。」




面倒事に巻き込まれる感じがまとわりつく。


『はぁ。』と深く溜息を吐く僕は、今後の事を思って憂鬱な気分になってしまった。

雨が続く日は気分まで暗くなりがちです。

環境に影響されるのが人間なのでしょうか?

それとも感情に左右されるのが人間なのでしょうか?

どちらにしても周囲の影響を受けるのが人なのだと思います。


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