036 やっぱ王子様キャラは王子様キャラだ。
こんにちは。ボンバイエです。
昼間の暑さと明け方の寒さにやられて体調を崩しそうになってますが、皆さんはどうですか?
歳の所為なんでしょうか?
いやはや、年齢には勝てないのかもしれません。
体育祭から時間は経ちジメジメした梅雨の時期が来た。
もう音楽祭が近づいている。
やっぱイベント多すぎじゃないだろうか?
ただ、通常の授業も普通におこなわれており日常が過ぎていく。
未だに僕に対する周囲の攻撃性は失われていない。
少しの変化と言えばクラスメイトが優しくなったという事だろうか?
「ジャック君も大変だね。」という言葉を多く耳にする様になった。
同情されているとも言えるのかもしれないけど。
後は、僕の心境の変化だろうか?
いや単純に慣れただけかもしれないが、気にならなくなった。
隠すのが馬鹿らしい気がしてきたからだ。
中途半端な事が一番良くない事を思い出したとも言う。
だって、最強であれば挑む者は居てもチャチャを入れる者は減る。
それを思い出したのだ。
ちなみに同時に思い出したのは格言で『最強の人間とは最強の男の妻である』だ。
たしかにそう思える節は多々あると思う。
最強という定義自体があやふやな部分があるが、常に最強の存在であっても愛する妻には弱いだろう。
それが人という生き物だと思う。
もしかするとそれすらも倫理観によって束縛されているのかもしれないのだが。
「ジャック君。どうしたんだい?」
「いや。ちょっと思い出していただけだよ。」
「ああ。ただの賢者タイムか。」
「え?賢者タイム?」
ジョージア君の言葉に驚いて聞き返すと、ジョージア君はクスリと笑い教えてくれた。
僕はどうも常習的にボンヤリしている事があるそうだ。
そのボンヤリした後に何かしら物事が動く事から、いつの間にか『賢者タイム』と周りの人間が言っているそうだ。
それに身の覚えのある僕は恥ずかしくなり『うぐっ』となる。
たいていの場合、ボーっと考え事をしている時に僕の周りが騒がしくなる。
風紀委員の出頭命令も、茶道部の勧誘もそうだった。
「あははは。まぁそんなに気にするな。腐っても賢者の名を使って貰えるんだから。」
「いやいやいや。賢者様に悪いよ。」
「古の賢者様達は何も言わないさ。」
「古の賢者様?」
ジョージア君は博識だ。
この世界の賢者と呼ばれた存在について教えてくれた。
記録があるだけでも千を越えるらしい。
その中でも大賢者と呼ばれる存在は10人程いるそうで、魔法の開祖から魔術の開祖などファンタジーにお馴染みと言えそうな存在から、物お理を発見した人や電気の発明をして大賢者と呼ばれる存在もいるらしい。
「ちなみに物理の大賢者様の名はニュートン大賢者様だよ。」
ドキリとした。
また地球の偉人の名を聞く事になるとは。
「じゃあ、電気の大賢者様は?」
「電気の大賢者様はエジソン大賢者様さ。」
いやいやいや。
どちらも地球の偉人の名前じゃん。
その二人も転生か転移してきたのだろうか?
「でも、そのわりには電気は使用されていないよね?」
「うん。そうだね。電気製品は高価だしそもそも電気を作りだすシステムは開発が進んでいないんだよ。魔法があるからそっちの方が使い勝手が良いからね。」
そうでした。
魔法がある世界でした。
まったく使えない人もいるらしいけど、魔術文明が発達して魔石を利用して生活インフラが整えられているからな。
「でも、拷問とかで電気を使用すると聞いた事があるな。感電死する人もいるらしいし、小型の発電機ぐらいはあるのかもしれないね。」
「こわっ!」
利用用途がそれってというのが恐ろしい。
まぁ、効果的なのかもしれないけど人がやる事はどんな世界でも同じっていう事だろう。
「まぁね。たしかに怖いよね。」
何だろう?
ジョージア君は悲しそうな顔をした。
怖いという言葉とは違うその顔を見て不思議な気がした。
「って、そんな事より音楽祭の練習しに行こう。今日は第10音楽室の使用が認められたって学級委員長が言ってたよ。」
「ああ。分かった。」
僕はジョージア君に頷き腰を上げた。
◇◇◇◆◇◇◇
僕達が音楽室に到着すると、既に大半のクラスメイト達が自分の場所を定めて座っていた。
僕等の姿を見つけたシンシアさんが両手を腰に目を細めた。
「遅いよ!」
「すまん。」
「ごめんね。」
僕達二人の謝罪を受け取ったシンシアさんは顔を緩め僕を自分の傍へと招いてくれた。
「あれ?ジョージア君は?」
「彼は、ピアノの伴奏をするのよ?聞いて無かった?」
「へっ?」と僕の口から間抜けな声が漏れた。
シンシアさんの言う通りなのだろう。
ジョージア君はピアノの前に座っていた。
「マジ?」
「ふふふ。私も初めはビックリしたけど・・・彼、凄いわよ。」
そのシンシアさんの言葉はこの後証明された。
ちょっとした練習なのだろう、ジョージア君はピアノの鍵盤に指を押し込み始めた。
時に力強く、時に儚い音をリズムよく刻む。
ジョージア君の指が織りなす音の旋律は現代いおけるプロと呼ばれるピアニストにも引けをとらないのではないだろうか?
ただ素晴らしいと思ったのは僕だけでは無い様で、周囲から「ほぅ。」と感嘆の息が漏れている。
トントンと僕の肩をシンシアさんがつつく。
振り返ると「ね?」と言わんばかりの顔でシンシアさんが僕を見た。
「ああ。」という同意する気持ちで頷く。
それから少しの間ジョージア君の練習曲を聴くという時間が出来たが、ピタリと音楽が止むと学級委員長が「じゃあ、始めましょう。」と声をあげ、音楽祭に向けた合唱の練習がスタートした。
◇◇◇◆◇◇◇
ガヤガヤとした喧騒が周囲を包むように奏でられている。
それに合わせるかのようにカチャカチャという食器の音も響いている。
「にしても、ジョージア君はピアノも弾けるとは。何でも出来るよね?」
「そんな事は無いよ。嗜んでいただけさ。」
「あれが嗜むというレベルかよ?」
「あははは。」と困った苦笑いを見せるジョージア君。
やっぱ、王子様だよね。
うん。
間違いない!
今もこうして一緒に食堂で食事をとっているが、食事中ですらその所作に品がみられる事からしても王子様であってもおかしくないなと思ってしまう。
少なくとも僕の中では王子様キャラで確定だ。
その思いには周囲も同意しているのか、女子からの視線が自然とジョージア君に引き寄せられている。
ただ一点、納得できない事がある。
同じ様に目立ち、女性からの視線を集める人間であるのに、僕とは違い争いに巻き込まれないという事だ。
僕が毎日大変な目に遭っているというのに、ジョージア君に喧嘩を売る存在が居ないのだ。
何故なんだろうか?
何が違うというのか?
「ジャック君。どうしたんだい?また賢者タイムかい?」
「いや、何でもない。」
ジョージア君の言葉で我に返った僕は慌てて頭を振った。
まぁ考えても仕方が無い事だろう。
僕は更に乗せられていた鶏肉のソテーを一口サイズにして口に入れる。
うま味のある肉汁が口の中に広がり、香草の香りが口の中に広がる。
塩味のあんばいが程よく、肉のうま味を二段階ぐらい上げている。
「それにしても、ここの食事は美味しいよな。」
「そうだね。ここは元王宮に仕えていた料理人がパルメア学園内の総料理長をしているそうだよ。」
「へぇ。というと、ここ以外の場所もその人が関与しているって事?」
食堂は幾つか用意されている。
流石に万人もいる学生の食事を一ヶ所だけで賄う事は難しのか、複数の場所に食堂が用意されている。
しかも、それぞれコンセプトが違う様で建物も内装もそれぞれ特徴がある。
現在いる食堂は所謂洋食を中心としたモノらしくフォークやスプーンにナイフを使う地球で言う西洋風のコンセプトだ。
内装や外装も西洋風という感じでレストランを彷彿とさせる仕様の場所だ。
「そうらしい。彼は色々な料理に精通しているようだからね。」
「へぇ。」
色々な料理を知っているだけでなく、それを料理出来るって事かな?
まぁ、全てを料理する必要は無いか?
総料理長が自ら腕を振るうってあんまりないかもな。
いつも通り雑談を繰り広げた後、ふとジョージア君が口にした。
「やっぱ気になるな。」
「何が?」
「ターナー君達の事だよ。」
「あぁ。」と僕も思い出した。
あの体育祭の後から彼等ターナー君達は学校に戻って来ていないのだ。
急遽、体育祭の初日が終わってから自領へと戻っていったターナー君達。
家が大変な事になっているのか、取り巻き達も同じ様に帰省した。
そこから、何の情報も無い上に戻って来ていない。
「そんなに気になるのかい?」
「クラスメイトだからさ。」
「そんなもんかね?」
「ジャック君は気にしなさすぎるよ。」
薄情男の様に言われてしまったが、戻って来なくて清々しているメンツもいると僕は思う。
面倒な貴族メンバーだったからな。
平民平民煩かったしな。
ジョージア君が外へと視線を向けたのつられて、僕も視線を外へ向けた。
そこには青空が広がっていたが、遠くの方には黒い雲が空を覆っていた。
「夜中は雨かな?」
ジョージア君がぼそりと言った言葉に僕は頷くと同時に、何か得体のしれないモノが沸き上がってくるような気がした。
皆さんは、カヲル君をご存知でしょうか?
そうです。
あの、〇ヴァン〇リオンのカヲル君です。
僕が、初めてアニメなどで王子様キャラとして認識した存在です。
後は、蔵馬君ですね。
そうです。
幽〇〇書の蔵馬君です。
どちらが先かもう覚えていませんが、強烈なインパクトを私に残してくれたキャラ達です。
そしてそのどちらにも成れないと僕は自覚をしたものです。
ええ。(。-`ω-)




