033 騎馬戦。
こんにちは。ボンバイエです。
ようやく一本仕上がりましたので更新します。
申し訳ありません。
とりあえず、これからは更新日は不定期とさせて頂いて、時間を0時にしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
あっ、全滅じゃん。
ターナー君達って弱いな~。
「どうする?ジャック。」
「時間もありませんね。」
僕とジョージア君とシンシアさんは三人並んでターナー君達が突撃していった様を見ていた。
僕達三人を置いて突撃したターナー君達は簡単に囲まれ粉砕された。
少し時間が掛かったので頑張ったと言えるのかな?
そのおかげで厳しい状況になったが。
「う~ん。負けるのは面白くないよね?」
「ああ。当たり前だ。」
ジョージア君が大きく頷く。
シンシアも笑顔だ。
「じゃあ、行こうか。」
「ああ。」
「はい。」
僕達は僕を先頭に縦に並び馬を走らせて敵チームに突撃を開始する。
「ふん。今更来てどうするってんだ?囲め!!」
敵チームのリーダーが大声で指示している。
V字隊列になってこちらに対応する様に動き出した。
木槍を素早く左側の内側に投げ入れ、僕はそのまま右端の先頭の外側へ向かう。
外側から彼等内側に対して攻撃を仕掛け、次々と仕留めていく。
僕の攻撃で相手は大きく避ける。
そうする事で足が止まる敵にシンシアさんが攻撃を仕掛け注意を引き、ジョージア君がとどめを刺す。
それを手前から順番に繰り返し行う。
単純だが、これを躱すのは難しいと思う。
「これが最後!」とジョージア君は最後に残った一人の風船を綺麗に割った。
「そこまで!」という審判の声により僕達の勝利が確定した。
「上手くいったな。」
「ええ。」
俺達三人は頷き合い観客席からの拍手に答えながら退場した。
退場した先で待っていたのはターナー君達七人だった。
「俺達が疲れさせた所で美味しい所だけ持っていくとは平民らしいな。」
「申し訳ありません。ターナー様の作戦勝ちでしたが、目立ってしまいました。」
「う、うむ。分かっていればよい。よくやった。」
別にターナー君の作戦では無いが、そういう事にしておいた。
ジョージア君とシンシアさんが苦笑いをしている。
僕は真面目な顔を作って更に付け足した。
「次からもお願いします。」
「あ、ああ。分かった。お前達もこの後の競技もしっかり頼むぞ。」
「はい。お任せください。」
こうして、体育祭の騎馬戦は終了した。
今回は体育祭の一種目でしかないので、勝つか負けるかで点数が入るだけで、優勝とかは無い。
◇◇◇◆◇◇◇
拍手が鳴りやまない。
先ほど迄おこわれていた協議の熱が冷めていないのだ。
「凄いな。彼等は一年生だよな?」
「ああ。あの三人は良い動きだった。」
観客席のあちらこちらから感想が聞える。
どれも、先ほど行われた騎馬戦の感想である。
その中の奥の席にテーブルとイスが置かれ、ガラス張りになっている観客席がある。
そこへ一人の貴婦人然とした女性が入って来る。
「父上。いかがでしたか?」
「ふむ。彼はなかなかやるね。」
「はい。」
「お前が望む気持ちは分からなくは無いな。しかしなぁ。」
髭を蓄えた老紳士と言った感じの男が思案する顔になる。
その傍には落ち着いた様子を見せる貴婦人然とした女性が座っている。
その女性の整った顔は周りの者に緊張を与えるほど美しい。
周囲に居る者がチラチラと女性に視線を送っているのだが女性は気にする素振りも無い。
「出自の問題ですね。」
「そうなのだ。平民であると思われるのだが不明な部分が多いのだ。改めて調べたのだがな。」
老紳士はさらに困った顔へと変化していく。
それを見つめる女性も思案顔へと変わる。
「そうですか。父上の力をもってしても全ては分からなかったのですか?」
「うむ。申告通りなのだがな。おかしいのだ。」
「シャルマン商会・・・ですね。」
「ああ。その通りだ。」
「それでは仕方がありませんね。」
シャルマン商会。
この世界において、シャルマン商会の力は測り知れない程に強大である。
それはこのダルメシア王国においても変わらない。
そのシャルマン商会が彼に関係しているとなると一定以上の情報は遮断される。
王国民でありながら、シャルマン商会に関係する人物。
平民であっても、シャルマン商会に関係する人物への詮索は控え得なければならない。
『触らぬ神に祟り無し』である。
「ですが、私は彼を傍に置きたいのです。」
女性はキリっとした顔で強く主張した。
老紳士は視線を女性の目へと向けた。
「本気か?」
「はい。」
沈黙が場を支配する。
見つめ合ったままの老紳士と女性。
「ふ~。わかったわかった。良いだろう。」
「ありがとうございます。」
彼女の華やかな笑顔は全ての者を魅了していく。
倒れた周囲の男がでるほどに。
老紳士は苦笑いだ。
「ハルティアよ。珍しいな。」
「・・・そうですね。そうかもしれません。」
「惚れたか?」
「・・・。」
「まぁ良い。しかし、ライバルが多いのではないか?」
「はい。仕方ありません。優れた者には集まるモノです。」
ハルティアと呼ばれた女性は立上り席を離れ部屋を後にした。
「よろしいのですか?」
「仕方あるまい。あれが願ったモノだ。」
「お甘い事で。」
メイド服姿の女性のその言葉に苦笑いを浮かべる老紳士。
執事姿の男が「不敬ですよ。」とメイド服姿の女性を嗜める。
「甘い自覚はある。まぁ許せ。では帰るとしよう。」
老紳士の言葉を受けメイドと執事はテキパキと周囲をかたづけて部屋を後にした。
◇◇◇◆◇◇◇
僕は騎馬戦後に100M短距離走に出場し一着を獲得。
身体向上魔法を弱めたり強めたりを利用して離れすぎない様に注意して一着を獲得した。
今更感はあるが自制した。
「あいつ。本気じゃなかったよな。」
「ああ。かなり手を抜いていたな。」
が、気づかれているみたいだ。
やはり僕は下手くそなのだろうか?
僕は聞こえないふりをしてそのまま競技場を後にした。
その後は魔術的当て(ターゲット_マジック)も中心命中を3回連続ヒットさせたので最高得点をゲットした。
「やっぱ、おかしくないか?」
「そうか?たまたまじゃないか?」
「あははは。偶然さ。」
う~ん。
どうも目立ってしまったようだが、クラス優勝の為には仕方が無い。
ジョージア君が頑張っていたからな。
僕の出場種目は、こうして一日で終わった。
体育祭は二日間でおこなわれる。
そして基本的にクラス対抗となる為、他学年は関係ない。
人数が多い為にこういう仕様になっている。
学年一番になる事が優勝という形だ。
それぞれの協議の合計点によって順位が決まるのだ。
◇◇◇◆◇◇◇
初日の最終で中間発表がある。
僕等はその会場に来ている。
僕等のクラスは何番だろうか?
40クラスという大所帯の順位発表はそれだけでも大変だ。
待っていると運動会の役員さんらしき人が順位表を貼り始めた。
集計が終わった様だ。
1-13は、何処だ?・・・第三位?
「よし!」とジョージア君が僕とシンシアさんを見て声を上げた。
僕達はハイタッチで喜び合う。
順調と言って良いだろう。
一位との点差は10点しかない。
四位との差は50点以上。
僕等のクラスは優秀の様だ。
近くからターナー君の取り巻き達も声を上げて喜んでいる様子が伺える。
「流石、ターナー様がいらっしゃるクラスです。」という声も聞こえる。
周りがそんなヨイショをするから、中二病に拍車が掛かるというのに。
「たしか、ジャック君は明日は出場種目は無かったよね?」
「うん。無いよ。明日は応援を頑張る所存です。」
僕は少し畏まった感じで答えた。
それを見たジョージア君とシンシアさんは笑った。
「まぁ、ジャック君はそれで良いさ。誰かの代わりに出場する事になるかもしれないけどね。」
「ちょっと、フラグっぽい事言わないで欲しいんだが。」
「フラグ?」とジョージア君とシンシアさんは首を傾げた。
「いや。何でもない。」と僕は慌てて答える。
ただ、心の中では嫌な感覚が広がっていく。
僕は言霊を信じている。
だから、そう言うのは思っていても言葉に出して欲しくないと思ってしまうのだ。
「よし。順位も見たし食堂に行こう。」
「そうだな。」
「賛成。」
僕等三人は意気揚々と食堂へと向かったのだった。
あっさりと体育祭でのジャック君の出場種目は終わりました。
という事は?
翌日の体育祭は何事も無ければ良いのですが・・・。




