032 パルメア学園・第三競技場
こんにちは。ボンバイエです。
最近、筆が進みません。
ちょっと緩やかな更新になってしまうかもしれません。
楽しみにしている人が居てくれるとしたら、本当に申し訳ありません。<m(__)m>
パルメア学園・第三競技場。
この第三競技場は他の競技場とは作りが違う。
観客席が同じ方向に向けて横に長く設置されているだけである。
さらにその観客席の前面に広がる競技空間はとにかく広い。
何故なのか?
競馬場としての運用が成されるからなのである。
観客席はスタンドと呼ばれ、その前にある広い敷地にはトラックコースが整備されている。
トラックコースは芝ではなく砂である。
直線距離は1000メートルはありそれに沿う様にスタンドも設置されている。
トラックは直線の途中よりカーブがあり一周すればおよそ2000メートルとなる。
直線の100メートル地点と、800メートル後の900メートル地点にコーナーがありおよそ400メートルかけて曲りきると向こう正面に800メートルの直線が有り400メートルのコーナーがあり直線100メートル地点に戻る仕様になっている。
正しく競馬場である。
これが王都ダマス内にあるパルメア学園の敷地内にあるのだから、王都ダマスの広さが想像できるというモノである。
なお、この競馬場は王国も利用出来る様になっている為、学園の敷地でも最外に設置されており、直接この第三競技場である競馬場に入る事が出来る様になっているが、その分しっかりした警備が敷かれている。
また第三競技場に入る学園側の入口では学生証の提示が必要になっている上に、競技場を囲う壁は厳重な造りになっている。
この第三競技場からの学園への侵入は容易には行えない様に警備システムがひかれている。
「凄いなぁ~。」
「うん。ここは王都ダマスの一つの名所になっているからね。」
ジョージア君は誇らしげに言うのだが、たしかにここは素晴らしい。
造りもそうだが、整備具合もかなりこまめにされている様子が伺える。
砂なので偏りや足跡が残り易いと思うがキッチリとならせれている。
「それにしても、ジャック君が乗馬も出来るとはね。」
「あははは。まぁ偶々知り合いに馬を持っている人が居てね。」
ジョージア君の追求の視線を笑いながら誤魔化す。
誤魔化しきれていない気がするけど、ジョージア君はそれ以上追及はしなかった。
学校管理の馬か自身で用意した馬を乗って競技に参加する必要がある。
今乗っている馬は学校が管理している馬の一頭だ。
パッカパッカと揺られながら競技場内を回る。
競技場内の説明はジョージア君が買って出てくれているのでそれを聞きながら進んで行く。
のどかな風景なのに、どこかピリッとした空気感がある。
競技をする場所だからだろうか?
「ここから少し先はちょっと高くなっているから少し見晴しが良くなるよ。」
ジョージア君の言う通り少し勾配が有り、他よりも高くなっている場所がある。
ただ平坦なコースではなく、こういう勾配がある事で馬に要求する能力幅が広がるそうだ。
そもそも平坦な土地ばかりがある訳では無い。
より実践的に考えるならば、こうした勾配などがある方が自然だろう。
「どうだい?良く見えるだろ?」
ジョージア君が教えてくれたポイントは勾配の頂上付近で見晴しが良く、コース全体が見渡せる場所だった。
「そうだね。良く見えるよ。それにしても広い場所だね。」
「ああ。広い。我が国でこだわった施設だよ。」
自信満々に胸を張るジョージア君は誇らしげだ。
少し眩しい。
視線をスタンド前に移すと少人数ながらも団体で行動している様子が見える。
騎馬戦はその名の通り、馬に乗った人が戦う競技だ。
地球の日本であった騎馬戦とは様子が違うというわけだ。
集団でおこなう騎馬戦は団体行動が必要となる。
集団練習が必須となる。
学年毎に練習できる時間が割り振られており、クラス毎にその時間の中で振られた場所と時間を使って調整する感じだ。
あのスタンド前での練習時間は30分程度しかない。
一学年に3000を越える人数がいるパルメア学園ではクラス数も半端ない。
一クラス100人弱という大所帯ながら、40クラスもあるからだ。
40クラスで割るとどうしても30分程度になってしまうのだ。
ちなみに、クラスの授業も体育祭の為に編成された時間割となる。
練習時間を捻出する為の処置だ。
スタンド前も2クラスが同時に使う為、手前と奥とで分けられており、その中央には臨時に区切られた壁があり学校側の監視員が設置されている。
「それにしても、何でここまで大掛りにイベントを開催するのだろうか?」
「うん?おかしい事かい?」
「いや。不思議に思うだけだ。」
「う~ん。僕にとっては普通だけど外から見たらそうなるのかな?学園創始者が言うには学生時代に沢山の事を経験させたいという思いがあると聞いているよ。後は、それが国の意向に沿う事だからだと思うな。」
僕の不意な質問に対して丁寧に答えてくれるジョージア君。
ジョージア君の言う通りなのだろう。
教育機関はどうしても国の元で構築される。
特に、このパルメラ学園は王都のそれも城があるエリア内に設置された学園なのだから、国の意向は重要だ。
教育機関の独自性を保つ為に学園都市という形をとる場所もあるらしいが、どこまで独自性が保たれているのかは分からない。
結局はある程度の意向をくみ取る形になっているのではないだろうか?
まぁ、この世界に裏口入学などあるのかは分からないが、あっても問題にはなりそうにない。
力が全てであり、貴族という枠組みが健在なこの世界において金やコネクションも力であると認識されているし、公平さをどこまで保てるのかという問題と、情報漏えいの狭さも手伝って裏口入学という金の力とコネクションを利用した行動も容認しそうだ。
情報は重要だが、その情報を発信し拡散する労力は現代地球とは違う。
拡散する力が無ければ、一人の人間では限りがあるだろうし、そもそも平民や農民にとってどうでも良い話でしかない気がする。
精々、そういう話が出回ると困るのは学園側であり威厳の問題で落ち着きそうだ。
このパルメラ学園においては運転資金のほとんどを国が捻出しているそうだ。
それ以上の収入はこういうイベント時に手に入れているのかもしれない。
「よし、じゃあ少し走ろう。」
「了解。」
僕はジョージア君の後について馬を走らせた。
乗馬なんて前世ではした事は無かったが、今世において練習させられたので今では普通に乗れる。
やっぱ馬は良いな。
欲しいな。
面倒を見るのは苦手かもしれないが、金次第でどうにかなりそうだし考えてみよう。
流れる風景を横に見ながらジョージア君を追っていく。
ジョージア君の騎乗姿はカッコいい。
綺麗なフォームだ。
◇◇◇◆◇◇◇
「あいつは本当に平民なのか?」
「ただ馬の扱いになれている農村出身とか?」
「う~ん。農村部に乗れるような馬はいない気がするが?少し裕福な村なのだろうか?」
ジャックの馬の扱いや乗り方を見てブツブツ話し合うターナー君の取り巻き達。
「だが、ターナー様より上手なのはおかしくないか?」
「そうだな。ターナー様は伯爵子息という事でかなり練習されていたハズだ。」
「おい。それぐらいにしておけ。耳に入ったらどうする。」
周囲を警戒して口を閉じる面々。
ターナーの耳に入ると自分達が攻められるばかりか、問題が大きくなる。
ターナーがジャックを目の敵にしているのは皆が知っているのだ。
ターナーが口に出して言っている訳では無い。
行動を見てそう感じているのである。
「はぁ。もう少し自重してくれないかな?」
◇◇◇◆◇◇◇
10人編成での騎馬戦。
僕とジョージア君以外のメンバーはターナー君と取り巻き六人。
そして最後の一人がシンシア・フォレッツオさん。
フォレッツオ男爵家のご令嬢。
凛とした感じの綺麗な人で、人気があるんじゃないかな?
かなり腕が立つみたいなのだけど、騎乗があまり上手ではない。
「ふん。田舎貴族の娘か。足手まといにならぬ様端っこで練習せよ。」
そう言ってターナー君が自分の周りから外した。
「お前達三人は、我らの邪魔にならぬ様に我らの後方で待機しておれば良い。」
追加で頂いた言葉だ。
つまり7人と3人という状況が作られた。
「まったく。ターナー君は分かってない。これは集団戦なのに。」とジョージア君があきらめた顔で愚痴っていた。
「私の所為ですまない。」と申し訳なさそうな顔でシンシアさんが頭を下げてくる。
「なんで謝るの?馬の扱いなんて練習すれば良いだけだよ。」と僕が言って三人で別途練習する事が決まった。
三人での合同練習はとても楽しい。
放課後も練習する時間を作って毎日する事にした。
茶道部?
もちろん休む・・・事は許してもらえず、部活後にやる事になったのは仕方が無い事だろう。
騎馬戦。
三人で形成する馬に人が乗り、相手の帽子か鉢巻を取り合う競技。
面白かった競技の一つです。
色々、怪我をしたりするので徐々に小学校から姿を消し、今では中学校でもやっていないのでは?と思います。
まぁ、やっている所もあるかもしれませんが、減っているのは間違いないでしょう。
さてジャック君達の騎馬戦はどうなるのでしょうか?




