021 ある日。
こんにちわ。
ボンバイエです。
冬と夏どちらが好き?っていう質問されたら、皆さんはどう答えますか?
ある意味の究極の選択だと思うんですよ。
夏は暑いけど、冷たい食べ物や果物が美味しい。
冬は寒いけど、暖かい食べ物や鍋物が美味しい。
かなり迷うでしょ?
私は・・・選べませんね。( ̄▽ ̄)
「真っ赤に燃えたぁ~太陽だから~♪」
何処かで聞いたフレーズが聞える。
夕焼けを背にした者が歌っているようだ。
ズルズルと何かを引きずりながら血で汚れた服を気にする様子もなく上機嫌で歌っている。
白いつめ入りの制服を着こなしスカートをはいている女性の眼は青いが何処となく虚ろだ。
『キリヴェル。任務は完了したか?』
ショートボブにされた金色の髪からのぞく尖った耳につけた赤い色の石がついたピアスから音声が聞えた。
キリヴェルは素っ気無く「あぁ。」と答えるだけで特に変化は見せない。
『分かった。では合流地点で待つ。』
「へいへい。」とやはり素っ気無く答えるキリヴェル。
全く興味が無いといった様子でズルズルと何かを引きずりつつ進んで行く。
『キリヴェル。新しいターゲットが決まった。』
「へぇ~。どんな奴だよ。」とここで初めて目が動く。
「今度こそ骨がある奴なんだよなぁ~。」
『あぁ。たぶんそうだろう。アイツらがそのターゲットを囲ったからな。』
「あいつ等?本当かよ?」イヤリングに手を置き揺れを防ぐように止める。
キリヴェルの目がギラりと光り生気が浮かぶ。
『この戦闘狂め。まぁ良い。だからさっさと集合地点に戻って来い。』
「しゃあねぇな。」とキリヴェルは答えると持っていたモノを少し浮かすと「うっ。」という弱々しい呻き声が聞こえる。
それにかまわずキリヴェルは走り出す。
キリヴェルはニヤリと笑うと「ちょっとは楽しめるかな?」と独り言を呟く。
その眼には狂気の色が滲んでいた。
◇◇◇◆◇◇◇
「であるから、魔法と魔術は別なのです。」
髪の毛が薄くなってきている教師の声が教室に響き渡る。
学級崩壊などこの世界にはあり得ない。
それほどモノを教える先生の権威は保たれている。
中には馬鹿にされる先生もいるようだが、授業中に私語をするものや他の事に気を取られる者はいないらしい。
ただ、僕は少しだけ集中力を欠いている。
復習だと思えばいいのだろうが、ちょっと物足りない。
「ジャック君。もう少し集中した方が良い。」
隣から小声で注意された。
声のした方へ顔を向けるとそこには美女。
ではなく美少年が居た。
そう、あの入学式で隣にいたジョージア君だ。
「ありがとう。」
無難な返事を返しておく。
優しい奴だ。
真面目なんだろうな。
僕は改めて教科書に視線を落とし読み返す。
理解して授業を受ける事がこんなにも集中力を欠くものだと思わなかった。
前世で事前準備をしてから授業に臨むという事は無かった。
人は分かっている事を教えられると分かってるよと思うし、理解できない事を教えられると興味をなくす。
難しいな。
僕が前世において事前準備の重要性を痛感したのは社会人になってからだ。
事前準備の重要性を理解した後は、おろそかにした事は無い。
【段取り八分】を肝に銘じ仕事をしてきた記憶がある。
チャイムが学舎に鳴り響く。
「じゃあ。今日はここまで。しっかりと復習・予習をしておくように。」
そう言って先生は持っていた教科書を閉じて教室を出て行った。
一気に教室が騒がしくなる。
今日は茶道部の活動は無いからどうしようかな?
つうか、この世界に茶器や茶室という概念がある事が不思議だったのだが、リキュウ・サウザンという人が広めたらしい。
絶対あの人だよね?
つうか、そんな日本の偉人がこっちの世界に来ていた事が驚きなんだけど、あの人の晩年は打ち首にされたって聞いた事があるから、転生?転移?をしたのかも。
もしくは、あの偉人の名を語る別人の線もあるけど確認のしようがない。
数百年前に伝説の茶人としてこの世界記録されている人だから、あって確かめる事も出来ないし、そもそも偉人が知り合いではないから確認のしようがないけどね。
「・・・ジャック君。」とジョージア君に揺さぶられ呼ばれて意識を戻す。
「何?」とジャージア君の方へ顔を向けるとちょっと焦った顔をしている。
「君は何かしたのかい?」
「はぁ?」と僕は間抜けな声を出してしまう。
「ほぉ。お前がジャック・マカロッサか?」
先ほどまで先生が居た教壇には見知らぬ白い制服を着た人が立っていた。
その両サイドには白色や灰色の制服を着た先輩方が並んでいる。
「誰?」と僕は呟き周囲を見渡すとそこは驚きの表情を見せる同級生ばかりだった。
「ふん。我々を知らぬとは。我々はこのパルメア学園の風紀を守る風紀委員だ。私は三年のキリヴェル・ミルメアだ。ジャック・マカロッサ。お前に出頭命令が出ている。」
「はぁ?」と僕は再度間抜けな声を出してしまう。
意味わからん。
周囲がざわつく。
「キリヴェル・ミルメア様ってミルメア子爵家の?」
「あいつ何しでかしたの?」とか言っている気がする。
「ふん。奴を連行せよ。」
「「はっ!」」と並んでいた先輩方が僕の机の方へやってくる。
ちょっと意味が分からないのですが?
「いやいやいやいやいや。どういう事ですか?!」
「キサマは、女子生徒と公然と腕を組んで学園内を闊歩したであろうが!」
あれ?あれは不可抗力じゃん?!
と反論しようとした時には両サイドから先輩方の手が伸びてきていた。
えっ?これどうする?どうするのが正解?!
考えが事態に追いつかない。
「ふっ!避けるとはどういう了見か?!」
キリヴェルさんの目がスゥーっと細くなる。
あれ?笑ってない?一瞬口角が上がった気がするんだけど?
僕はとっさに動いていた。後ろへと飛びのいてしまったのだ。
「いや。不可抗力というかなんというか。」
僕の訓練は本当に厳しいモノだった。
今も自主練は欠かしていない。
体が敵意を感じると動いてしまう。
僕に手を伸ばしていた先輩方の目も先ほどより厳しいモノに変わっている。
あ~。これ本気になった感じですか?
「キリヴェル様。」
「なんだキサマは?」
「私はジョージア・タスティと申します。」
「ふん。タスティ伯爵家のご子息か。」
「はい。これはどういう事ですか?」
ジョージア君が声を上げると僕を追っていた先輩方の動きが止まる。
「何がだ?」
「先ほど、キリヴェル様は出頭命令とおっしゃったではありませんか?」
「・・・。」キリヴェルさんは黙ってジョージア君を射抜くように見る。
「出頭命令であるという事は捕縛されるという事ではないのでは?」
「・・・良いだろう。期限は明日18時までだ。ジャック・マカロッサ。必ず風紀委員室へ出頭せよ。」
ニヤリと笑ったキリヴェルさんはそのまま外へ出て行った。
そのあとを追うように先輩方も出ていく。
「ふぅ~。」と僕は息を吐く。
「ジャック君。君は何をしているんだい?女子生徒と腕組んで学園中を練り歩くなんて。」
周囲の視線が僕を射抜く。
ジョージア君の困った奴だという感じも痛い。
「いやいや。あれは無理矢理に。」
「何?!無理矢理女子生徒を連れまわしたのか?!」
どう勘違いしたらそうなる?
「違うよ。無理矢理引きずり回されただけだよ。」
「あっそれ見た。たしかに引きずられてた。」という同級生の一人が口にしたことで一気に終息したが今度は情けない奴という感じの視線が刺さりだす。
これ、どっちに転んでもろくな事ないやつじゃない?
「そうか。なら、ちゃんと説明したら良いだけだな。」
「そうだね。」
「なら、すぐにでも出頭した方が良いぞ。」
「うん?そうか。でもなんで風紀委員に出頭命令とかできるわけ?」
「しらないの?!」あっという感じで口を塞ぐジョージア君はバツの悪そうな顔になる。
「そえは、彼ら風紀委員がこの学園における捜査権などの権力行使機関だからだよ。」
「えっ?なにそれ警察?」
「ケイサツというのは知らないけど。」と前置きしながらジョージア君がこの学園の事を教えてくれた。
パルメア学園は学園自治会と呼ばれる組織があり、そのにより学園の運営がおこなわれている。
そしてその学園自治会の中に学生による組織がある。
それが生徒会だ。
生徒会と呼ばれるこの組織は学園内における生徒の活動を取り仕切る組織だ。
生徒会の組織には委員会と呼ばれる組織が複数存在する。
パルメア学園は生徒だけでも約一万人になる為、その中を学生自ら活動する事によって将来の予行練習に繋げる意味合いも持つらしい。
生徒会の組織の中に風紀委員会もあり、風紀委員会は学園内における風紀の乱れを取り締まりを担う委員会なのだそうだ。
現在では学園内の風紀だけではなく自衛も担う委員会だという。
その為、学園内での個人の生命、身体および財産の保護、犯罪の予防、鎮圧および捜査、被疑者の逮捕、公共の安全と秩序の維持を責務とする機関だという。
「まんま警察じゃん。」と僕は声に出してしまう。
「だから、そのケイサツがわからないけど。」と改めてジョージア君に指摘されてしまう。
「出頭命令が出ていてキリヴェル風紀委員がここに来た以上、出頭しないというのは止めた方が良い。次は実力行使されてしまうよ。」
「まじかよ。なんか出頭する以外に方法ないの?」
「無いよ。出頭して潔白を証明するしかない。」
「なんで俺ばっかり・・・。」
落胆する僕に同情的な視線は目の前のジョージア君だけで、他のクラスメイトは同情より侮蔑のこもった視線だな。
俺が何したって言うの?
普通に学園生活を大人しく過ごしたいだけなのに・・・。
「とにかく、出頭するんだよ。なんなら一緒に行こうか?」
「ああ。ありがとう。でも大丈夫。一人で行くよ。」
「そうか。頑張れよ。」とジョージア君は頷き僕の肩をポンポンと叩いてくれる。
何だかよく分からないけど、行くしかないようだ。
クラスメイトのヒソヒソ声が聞こえる。
何を言っているのかは分からないけど、良い事ではなさそうだ。
僕は「はぁ。」とため息をついてトボトボと教室を後にしたのだった。
ちょっと、ぶっこんでみました。
サウザン・リキュウ。
果たして、本物なんでしょうかかね?ニヒヒ( *´艸`)




