018 眩しい日。
こんにちは。ボンバイエです。
昨日の続報です。
【転生しました、サラナ・キンジェです。ごきげんよう。】の作者である【まゆらん】先生は他にも作品を出されており、コミカライズや書籍化している作品があります。
まだ、私はお勧めした作品しか読んでませんけど、面白かったよという人は下の☆に色を付けて教えてくださいね。
えっ?
それは違う?
そうですか。
違いましたか。
てへっ(≧▽≦)
「ジャック・マカロッサ君というのは君かね?」
「はい?」
突然、名前を呼ばれて驚き中途半端な返事をしてしまう。
呼ばれた方へと顔を向けるとそこには神経質そうな顔をした年配の方が立っていた。
着ているローブは光沢を放った紫色だ。
「うむ。少し私の後について来なさい。」
「わかりました。」
僕は名前を名乗らない、偉そうな爺さんの後について廊下を進む。
今日は入学二日目だ。
クラス発表が行われる日でもあり、同じクラスになる者達との初顔合わせの日でもある。
その一発目の緊張感のある初めてのホームルームは無事にこなせたはず。
変に目立たないようによ配慮した挨拶は無難なモノを選んだ。
つまり、名前と『よろしくお願いします。』という挨拶だ。
だというのに、この仕打ち。
変に目立ってしまったじゃないか。
はぁ。
僕は黙って偉そうな爺さんの後について歩く。
何個目かの階段を上がり、着いた場所はちょっと広い空間だった。
その空間の向こう側に豪華な扉があった。
その扉の前に偉そうな爺さんが立ち止まると、扉をノックする。
「校長。連れてまいりました。」
『どうぞ。』
と扉の中から返事が来て、偉そうな爺さんが僕を手招く。
「ジャック君。入りたまえ。」と慇懃な感じで僕に言うと、偉そうな爺さんはそそくさと階段を降りて行ってしまった。
僕は仕方なく扉を開けて中へと入る。
「なっ?!」
僕の眼前に広がる光景は草原?森の入口?もしくは森の中に有る空間。
現世の地球ではよく見かけたのが新興住宅地周辺の公園だろうか?
あぁ、そうだ植物園が近いかも知れない。
大きな建物の中に広がる自然がそこにあった。
「ふぉっふぉっふぉ。驚いたかの?」
野太い笑い声が部屋に響き渡る。
声のする方へ視線を向けると、少し先の中央に重厚そうな大きな机が置かれており、そこに白髪頭のお爺さんが座っていた。
そう、つまりあの大講堂で見たナルバート学園長その人だ。
「ジャック君。よく来たね。こちらに来て座りなさい。」
重厚そうな机の前にソファが用意されていた。
中央には透明な机があり、両サイドに向かい合う様にソファが対で置いてある。
丁度、重厚そうな机を中心とした会議時のコの字形式の並びの様になっている。
「はい。」
僕は進められるがままにソファへと進み座る。
「初めましてじゃの。儂はこの学園で校長をしておるナルバート・パルメアと申す。早速じゃが、ジャック君。君はアーダム大陸にあるバウエン公国のジャック・バウエン第一王子じゃの?」
直球も直球のド・ストレート。
シレっと話されたけど、確信を持って言っていると思う。
嘘をついても仕方がない。
「はい。そうです。死んだとされている身ですので、公表されたくはありませんが。」
ニカっとナルバート学園長は笑顔になる。
「かっかっか。素直は良い事じゃ。そうかそうか。さて、ジャック君。君がそう言うのなら、公表する事はせぬ様にしようかのぉ。ただし・・・。」
「はい。王族である様な振舞は致しません。」
「うむ。よかろう。そう誓ってくれるのであれば、儂も黙っておくと約束しよう。」
「ありがとうございます。」
「ただし、君は優秀であると聞いた。目立つと思うのじゃが、その辺はどうするつもりじゃ?」
「悪目立ちしない様に、気をつけます。」
「ふむ。悪目立ちはせぬが、優秀である事は隠さないと?」
「はい。隠し事がある分、それ以外は正直にと思っているのです。最善を尽くして生きていきたいとも思っています。」
「ふむふむ。良い心掛けじゃ。もう一つ聞きたいのじゃが、君は復讐を考えていたりするのかね?」
先ほどまでとは違い、ナルバート学園長は朗らかな印象の視線から鋭い視線へと変化した。
本題はこっちだったのかな?
「いえ。考えていません。」
「ほぉ。酷い仕打ちをされておるのに、復讐せぬと?何故じゃ?」
「復讐するという行為は何も産まない。そう思っています。」
「ふむ。しかし復讐とは人間誰しも考えるモノじゃと思うのじゃが?とくに其方は、第一王子という立場。未来の公王じゃ。それでも本当にそう思うのかの?」
信じきれない。
そういう事だろうか?
僕は思う。
復讐するという思いは行動力に繋がり易いほど強い想いだ。
とても強い想いは厳しい環境に置いてとてつもない力となる。
けど、復讐という行為自体には生産性がないと僕は考える。
未来に向けての行動ではなく、自分が立ち止まってしまった現象を解消する行為であり、自己満足に浸る為の行為であって、その先が無いと僕は思うのだ。
もちろん、これが身内を殺されているという意味での復讐だったりするのなら、止まってしまった自分の時間を取り戻す為に復讐を選ぶ方が良いのかもしれない。
その方が心の平和を得れるのかもしれないし、自然なのかもしれない。
けど、今回の僕の場合は身内が殺された訳でもなければ、ただ単純に僕が貶されただけだ。
そうであるなら、僕が貶された事を時間が止まってしまう程に感じているのか?という事が重要だろうと思う。
「そうですね。僕はさほど公王になりたいと思っていなかった様です。それよりも自由にこの世界を楽しみたいと思っています。」
「ふむふむ。」
「それに、生憎と大切な者が少なくその者が死んでも居ませんし、その者が幸せになってくれるのであれば、それで良いかとも思います。」
「なるほどのう。」
「あっ。それも内緒にしておいて頂けますか?」
「うん?おぉ、もちろんじゃとも。約束しよう。」
「ありがとうございます。」
「他には何かあるかの?儂からは特に無いのじゃが。」
「いえ。無いと思います。」
「ふむ。ではちと待ってくれるかのぉ?」
ナルバート学園長は紙を引出しから出してサラサラと何やら書き出す。
「こんなもんじゃろう。」とホイっと僕に紙を差し出すので僕は受け取る。
そこには、ここで話した内容について黙秘する事と約束を違えない趣旨の誓約が書かれていた。
「これは精霊誓約書と言っての、精霊の力を借りる誓約をしようと思っての。」
ザバルティさんから教わった精霊誓約か!
まさかここで実践する事になるとは・・・。
「どちらか一方が破れば、もう一方が分かる様になる程度のモノにしてある。だから罰を与える内容にしておらんから、安心じゃろ?」
と、ニコニコ笑顔で言うナルバート学園長。
そのニコニコが怖いんですが・・・とは言えず、頷く。
「ふぉっふぉっふぉ。まぁ、そう怖がるでない。君が素直に話してくれたからこそ、持ち出してきただけじゃ。」
ナルバート学園長が魔力を高めると不意に周辺の空気が変わる。
魔方陣が浮かびあがると、その中心からスゥーっと人影が現れる。
「我の名は誓約の精霊ホウズ。我らを呼び出したのはお主か?」
「うむ。儂はナルバート・パルメラ。この子はジャック・バウエンじゃ。」
精霊ホウズは誓約書に目を通した後にジロりと僕を見る。
「この誓約書にはジャック・マカロッサとあるが。」
「それは、僕が生きている事を隠したいが為です。」
「認められんじゃろうかの?」
精霊ホウズは目を閉じた。
閉じたと言っても閉じたように見えるだけかもしれないが。
というのも人型ではあるが、ローブに包まれた姿をしておりそれも精霊特有の半透明であるから分かりずらいというのもある。
前世の記憶から精霊と名乗らねば、死神と呼ばれる存在の特徴と一致しているなと思う。
「確認が取れた。問題ないと判断する。」
「ありがとう。」
「煩わせてすまぬな。では、いつも通り精霊誓約を頼む。」
「よかろう。」と精霊ホウズが返事をすると誓約書が青い光に包まれる。
いや蒼い炎だろうか?
なんていうのかな?スキャン?複合機の読み取り?の様に蒼い炎が動く。
すると、動いた先から文字が赤く輝きだす。
「いつ見ても、綺麗じゃのぉ。」
ナルバート学園長がボソッと言った言葉が聞えた。
この人、よく精霊誓約をしてるだろうか?
蒼い光が誓約書全体を覆うと一瞬強い光が放たれた。
「精霊誓約はここに結ばれた。」
ホウズが宣誓すると大きい魔法陣が空中に浮かびあがり、僕たち三人?を包む様に魔法陣から放たれる光が降り注ぐ。
「ジャック・バウエンよ。お主の未来が輝く事を我らは願っている。」
そう言い残し、精霊ホウズは魔法陣の中に消えていった。
「ほぉ。珍しい事があるものじゃな。」
驚くような様子でナルバート学園長は僕を見る。
「精霊が個人に向けて言葉を残すのは珍しい。ジャック君。君は精霊と縁があるのかね?」
「まさか?気まぐれでは?」
「そうかの?」とナルバート学園長は不思議がっている。
僕は相手にしないように天井を見上げた。
雲が一つもない晴天。
日本晴れと呼ばれるその空には太陽が力強く存在しており、放たれる光がとても眩しかった。
いかがでしたでしょうか?
学校で悪目立ちするとその後が怖いですよね?
えっ?経験ありません?
そうですか~。ないですか~。
呼び出しって、何か怖いですし、色々噂されませんか?
・・・もしかして私だけ?
が~ん( ;∀;)




