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002 刺される者。

どうも、ボンバイエです。

昨日、初詣に行きました!

と言っても、近くの小さな社です。

昔は海の孤島に建立された開運祈願のこもった社だそうです。

皆さんはどんな所に行かれましたか?

行かなかった人も行った人も、読んでくださいね~('◇')ゞ


僕の想像通り、眼を瞑ってから少しして馬車が停止した。

馬車の外から複数人の気配を感じる。


「殿下。待ち合わせ場所に着きました。」


「わかった。」


御者のバルトスが外から声を掛けてきたので返事を返し、アーニャの先導に任せて馬車から降りた。

目の前には十数騎の鎧を着た騎馬隊がおりその中央には煌びやかな鎧を纏ったロネクト伯爵が居た。


「ジャック殿下。お待ちしておりました。」


「ロネクト伯爵。出迎えご苦労。」


下馬もしないでロネクト伯爵は僕に挨拶をしてきた。

僕は、数歩ロネクト伯爵へと歩を進めた。


「これから、どうする?」


僕は辺りの地形を確認しながらロネクト伯爵に問いかけた。

ロネクト伯爵はニヤリとして僕を馬上から見下げた。


「ふふふ。そうですね。どう致しましょうか?何処を向いても殿下を庇う者がおりませんので、私も困り果ててしまいましたよ。」


「どういう意味だ?」


僕の疑問を聞いて更に笑顔を深めるロネクト伯爵は両手を上げ、首を横に振る。


「やれやれ、本当に何もわからないのですね~。愚かな事です。」


「なに?!」


僕は怒号と共に足を一歩前に出した。

その瞬間に背中に鋭い痛みを感じるとその痛みは背中から腹部へと到達した。


「なっ?!」


「・・・殿下。・・・すいません。本当にすみません。こうするしか・・・こうするしか・・・。」


どうやら、私の痛みの元はアーニャによる刺突のようである。

僕は後ろを振り向きざまに強くアーニャを押す。

僕自身もその反動で飛ばされ崖の傍へと倒れる。


「ぶっはははは!」


下品な笑い声が響き渡る。

それに追随した笑い声も広がる。

嘲笑。

僕を嘲笑う音が辺りを支配した。

まぁ、そうだろう。

自身の専属メイドに刺されるという第一王子。

さぞかし見物だろうな。

こんな時は煙草でも吸えば恰好がつくかもな。

あぁ、一本喫いたくなってきた。


「ぐっ!」


僕は何とか立ち上がり、専属メイドのアーニャと馬上のロネクト伯爵を見る。


「おのれ!こんな事をして!許されると思うのか?!」


びくりと肩を揺らすアーニャ。

益々笑顔を深くして嘲笑するロネクト伯爵。

僕の腹から突き出た刃から血が滴るのを確認しながらよろよろと後ろへとふらつく。


「良い顔ですよ~。殿下。誠に良い。ではここで更にその顔を良くしてあげましょう。」


「なに!」


「今回の事は、公王様からの指示です。」


「父上が?!そんな馬鹿な?!」


僕は頭を抱え、首を横に振る。

そして絶望の顔を晒す。


「ぐはははは。良い顔です。本当に良い顔です。」


ロネクト伯爵はアーニャの傍へ近づくと、アーニャの肩を押す。


「さぁ。アーニャ。始末してしまいなさい。アナタの主人を。ぐふふふふ。」


醜く笑うロネクト伯爵。

品位が分かるというモノだ。

まぁ、こんな奴が伯爵という立場なのだから、この公国は終わりなのだろうな。

下を向き、何事かをブツブツと言っている姿のアーニャは一歩一歩と僕に向かって来る。

だいぶ、精神的にキテイルみたいだ。


これは僕の所為なのだろうか?

まぁ、そうだな。

全くついてない奴だな。

自然と僕の眼に涙が溜まってきている。


このまま僕が殺されるとしても、アーニャも無事では済まないだろうな。

どうしたモノか。


「ほれ。これを使え。」


ロネクト伯爵はアーニャの前にナイフを投げた。

アーニャの目の前に投げ出されたナイフはギラリと光る。


もう一度、刺されるのか。

困ったな。


「早くしろ。」


ナイフを前に立ち止まっていたアーニャにロネクト伯爵の部下らしき者が声を掛けた。

その向こうには御者をしていたバルトスが立っているのが見える。

バルトスの顔にも嘲笑が伺える。


僕はそんなに傲慢な態度をとった覚えは無いのだが、この状況が面白いのだろうか?

人が落ちぶれていく様は面白いのかもな。


アーニャがナイフを持った。

そして両手で握りしめている。

下向きだったアーニャの顔が僕を向く。

アーニャの顔は涙でぐちょぐちょになっていた。

あ~あ、整っている顔が台無しだ。


アーニャは僕の実母について来た従者だという。

実母付きの従者は複数いたらしいのだが、実母の死と共にアーニャ以外は国に返された。

アーニャだけが僕の専属メイドとして残された。

どうやら、国に帰っても戻る場所が無いという話を聞いた事がある。

その辺の事情は10歳になるばかりの僕は聞いた事は無い。

ちなみに、彼女は僕が産まれた時は10歳だったらしいので、現在は20歳のはずだ。

女性なので、その辺を聞いた事は無い。

器量は良いので、貰い手はいると思うのだが、アーニャの口から度々『ハーフエルフなので。』というセリフが出ていたので、差別を受けていたのかもしれない。

城の中でも浮いてしまう存在だったのかもしれないし、僕付きの専属メイドという立場も苦しい立場だったのかもしれない。

まぁ、色々と確認したかったのだが、それをする間もなくこの状況だからな。


「さぁ、早くしろ!」


ロネクト伯爵の部下の声にアーニャは肩をびくりと揺らす。

そして、ようやく決心したのかアーニャは僕を見た。


「・・・ごめんなさい。」


そう言うとアーニャは僕を目掛けて勢いよく走ってきた。

なかなか良い勢いだ。

この勢いだと飛ばされてしまうな。


僕はよろよろと後ろへ下がる。

僕の後ろは断崖絶壁でその下には滝の終着点が待っている。

有名な滝で名前を死竜(デスドラゴン)の滝という。

昔、この滝つぼにドラゴンがハマり死滅したという伝説がある滝で、この滝壺にハマるとドラゴンですら逃げ出せないという事らしい。

まぁ、正直その伝説が本当なのかはわからないが、実際に普通の人間が滝壺にハマると逃げ出せずに死ぬのは間違いないだろう。

絶体絶命の大ピンチだな。


僕は仕方がなく、自身の身体に刺さっているナイフを抜き取り前へ放り投げた。


「ぐっ!」


ナイフを抜いた傍から血がボタボタと地面に落ちる。


「おっ?!殿下が自棄になったか?」


ギャラリーの声が聞えた。

どうやら僕の死を確信しているみたいだ。

どうせ、今迫っているアーニャの攻撃を避けた所で、ロネクト伯爵が見逃すわけはないのだから、間違いでは無いな。


目の前に迫ってきているアーニャの顔が絶望感を持っている。

本当にアーニャは最後まで僕にお供するつもりの様だ。

アーニャは僕に目掛けてナイフを向けたまま飛び込んできた。

僕は少し体制をずらしながら、アーニャの勢いに身を任せた。


僕はアーニャに押されるがまま空中へ投げ出される。

アーニャも僕にナイフを刺したままの形で僕と同じ様に空中へ投げ出した。

そのまま僕とアーニャは崖から死竜の滝へ吸い込まれる様に落ちていく。


「アーニャ。すまない。巻き込んでしまった。赦してくれ。」


僕はアーニャに謝罪した。

アーニャは一瞬驚いた様子を見せるが、直ぐに顔を横に振る。


「殿下。申し訳ありません。」


やむを得ない事情があるのだろう。

たぶんハーフである事が最大の問題なのだろうが、僕専属のメイドである事が彼女をこの様な状況に追い込んだのだと思うとやるせない。

ギュッと腕に力を込めてアーニャを抱きよせた。


こうして崖からの落ちているとアーニャと過ごした10年間が頭の中を過る。

アーニャは育ての親とも言える。

今の僕の年齢で赤ちゃんの面倒を見るのはとても大変だっただろう。

もちろん食事に関するモノは別の人が用意してくれていたし、教育係は他に居たが常に僕の傍に仕えており、交代する素振りもなかった。

仕事であるのに休み無しという状況が続いていた。

随分と苦労を掛けているのに報われていない。

本当ならここで『来世では良い人生を。』とか願って滝壺へと落ちて行く所なのだろうな。

実際の僕も同じ様に思う。

ある意味でアーニャのこの現状は僕の責任だと思う。

僕が高熱を出し意識不明の状態が長く続か無ければ、渋々でもあの王城でまだ暮らしていただろう。

それが良い事か悪い事かは別にして。

そもそも誕生しなければ、実母が死ななければ、IFではあるがどちらかが選択されていれば、アーニャにとってここまで苦しい顔をさせる事は無かっただろう。

そう思うと胸の奥が痛くなる。


そのまま水面へと進むにつれて意識が飛びそうになる。

アーニャはどうやら意識を手放したらしい。

ここが地球と同じ物理法則が有効であるならば、水面はコンクリートの様に固く感じる事になる筈だ。

つまり、僕の全身の骨が悲鳴を上げ骨折する事になるだろうな。


『風の精霊よ。水の精霊よ。力を貸してくれ!』


僕はそう祈り、目を瞑った・・・。



私は小説や漫画にアニメを読んだり観たりする事が大好きです。

ゲームもよくやるので、同じくボンバイエという名前です。

もしかすると知り合いかもしれませんね~。

気になる方は、声かけてくださいね~( ̄▽ ̄)

では、また明日(@^^)/~~~


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