9話
引き返す途中で銀髪の悪魔であるエルルゥと出会った。礼拝堂の近くで初めて会った時と同じ姿をしており戦った後には見えない。最悪の結果が、頭に浮かび、心臓が信じられないぐらい早く動き大きな音を立てているが、今から死ぬ自分の体の事など知ったことではない。
「エルルゥ、礼拝堂の人達を地獄に送ってのか。」
「そんなことしたらあいつに何されるか分からないのにしないわよ!」
「なら最初の契約の通り、僕だけを地獄に連れて行ってリリアは見逃してくれ。」
その言葉を聞くとエルルゥは凄く残念そうな顔をして「2人分…したのに」と小さな声で呟いた。小さな声で全て聞き取れなかったが、2人分の何かを準備しているようだ。リリアの言う通り契約に縛られているせいで自分しか連れて行けないのではないか、リリアの地獄行を回避できるかもしれないと希望が見えてきたため畳掛けた。
「本来契約したのは僕だけだ。リリアの分も僕が引き受ける。」
その言葉を聞き、焦った顔や難しい顔をなどコロコロと表情が変わる。もう死ぬと分かり落ち着いてきたせいか、余裕ができその変化を見ていると自分たちと同じように感情があるんだなと思い笑ってしまった。笑われたことに気づいたエルルゥは自分のことを不思議そうに見ていたが、何か納得したようで笑みを浮かべ了承してくれた。
「分かったわ。最初の契約通りあなたを私の地獄に送るわ。」
そう言うと彼女はまた指を鳴らし、地獄の門を作り出した。前に自分が逃げだしたせいか、手を差し出してきたので握り返すと彼女はキョトンとした顔をした後に、何かをごまかすように勢いよく自分を引っ張って行き炎の中にありながら先の見えない暗闇に覆われた門を潜った。
門を潜った先には見たことも無いような料理がたくさん並んでおり、フィンは状況が全く理解できずその場から動けずにいたところ何かを察したエルルゥが告げる。
「望んでいた料理よ。あなたが逃げ回ったせいで冷めちゃった。魔法で温め直すからそこの椅子に座って少し待ってて。」
そう告げ指を鳴らすと料理から湯気が出始め、先ほどからしていた良い匂いがさらに強くなった。思いもよらないことを言われたからか、それとも彼女の笑顔に少し安心してしまったからなのか、緊張の糸が切れ自分がろくに食事を食べていないことを思い出す。
そのせいか周りの人にも聞こえるほど大きな音がお腹から鳴り、それを聞いたエルルゥは満足そうにしていた。