4話
ヴァンから退屈しのぎで聞かされた話は小さな子供が好みそうな噂話であった。
何でも町の外れに魔法陣があり、そこに血を捧げ対価を払えば、願いを叶えてくれるというありきたりな話だが、当然こんな子供騙しの話で先ほどの悪戯のお詫びに釣り合うはずもなく、交渉の末にパンを分けてもらうこととなった。不満ではあるが、お腹を膨らませた状態で教会に帰れば気の毒に思った誰かに食べ物を貰ったことがバレてしまうのでで小さなパンで空腹を紛らわすことにした。
「パンをくれたことは感謝するけど、こんな悪戯は二度としないでくれよ。」
「しつこいの、本当に悪かったといっているじゃろう。」
刺激の強い悪戯であったがヴァンのお陰でお腹が多少膨れたこともあり、終了の時刻までに来る怪我人への対応を無難にこなし続けていると、ギルドの職員から上がって良いと言われ通常より早めに奉仕活動の終了のサインを貰った。帰宅しようとしたがヴァンの言っていた噂話のことを思い出したせいで悩み始めてしまった。
本来なら寄り道などせずに協会に真っすぐ帰るが、夕食抜きで夜のお祈りまで時間がありかつ、早めに終わり時間があったということが重なったため、余裕ができ面倒よりも好奇心が勝ってしまい噂話を確かめに行くこととした。
ヴァンが言っていた場所へ訪れると、ツタが生い茂り誰も住んでいないであろう家がぽつんと建っており中をを覗き込むと、確かに子供の落書きと評すような魔法陣が壁に書かれていた。
こんなものに血を与えて願いが叶うなら苦労しないだろうと思ながらも、どうせ来たのだからと聞いた通りにナイフで指先を少しだけ切り、血を垂らした後に両手を合わせ願い事と対価を口にする。
「豪華な料理をお腹一杯に食べれたら何でもするからお願いします。」
十数秒と時間が立つがスープの一つすら目の前に現れるどころか、冷たい風が吹いて来たせいで体が冷え思わずくしゃみをした。
「こんな魔法陣で願って料理が出るわけないか。」
これ以上待っても無駄と判断したフィンが離れた後、少しだけ時間を置いて魔法陣が赤く光を放つと歪な陣が円や多角形、線が複雑に組み合わさった複雑な魔法陣へと変わり壁が崩れ落ちた。
壁が崩れた後、銀色の髪の少女がキョロキョロと周りを確認して立ち尽くしていたが、フィンはそんなことを知ることもなく教会に帰宅しリリアと談笑していた。