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2話

ようやく水の入替を終え、朝のお祈りをしようと急いで礼拝堂へ向かったが神父様しかおらず、不思議に思っていたところ、その場でいたスエイプ神父が不機嫌な表情を隠さずに訪ねてきた。


「フィン。何故朝のお祈りの時間に来なかったかのかね。」


いつものように水の入替をしていたつもりだったが、想像していたよりも随分時間が掛かっていたようだ。正直一人でやるには重労働だといつも内心思っていたので不満だったが顔に出さないように、出来るだけ申し訳なさそうな顔で言い訳をする。


「神父様、申し訳ございません。いつもより水の入替に手間どったせいで時間が掛かり、間に合いませんでした。」


「いつもは間に合っているではないか。何故今日だけそんなに時間が掛かったのかね。」


「最初に服を濡らしてしまい、体が冷えたせいでいつもみたいに作業ができませんでした。」


下手に取り繕って嘘をつくよりも正直に言ったほうが良いだろうと思い、思わず慌てて濡れていたところを持ちあげたて見せてしまったせいで、濡れている服を見せようとしている風に見えたスエイプ神父の追及が入る。


「たいして濡れていないではないか。嘘を付いてまでさぼるとは、フィン君に罰を与えねばならないな」


必死に弁明したが嘘の言い訳をしているようにしか見なされず、今日一日の食事抜きと外での奉仕活動で心を入れ替えるようにと罰則が決まってしまった。

せめて奉仕先でこの成り行きを話せば、同情でスープぐらい貰えたら良いなと思いながらもこれ以上面倒ごとを言われないよう急いで奉仕先に向かうこととした。




「そいつは災難だったが、服が濡れたぐらいですっぽかしたお前が悪い。」


奉仕先の冒険者ギルドに着き、一日の食事抜きはたまらないと思いギルドの職員に話をしたが先ほどと同じようなことを言われ続けた為、諦めて教会の担当の席に着いた。


今回の奉仕活動は見習いが担当する為、軽いケガをした人の回復や応急処置をすることなっている。

フィンは見習であるため効果の弱い回復を使うことは出来るが、多様出来ないため基本的には応急処置で対応することにしている。

さすがに朝早くまだ怪我をした人は誰も来ていないが、今日一日はご飯抜きだと考えるとまだ始まってもいないというのに気が滅入りそうになってきた。


「フィン聞いたぞ。お前見習いのくせに朝のお祈りをサボって今日飯抜きらしいな。」


ボサボサの茶色い髪をしただらしそうな職員が笑いながら声を掛けてきた。彼はロイと言いギルドの職員でありながら魔法を使い戦うことができ、時折冒険者のサポートもするなど事務職であるにも関わらず何でも屋のような扱いを受け信頼されている。


「うるさい。サボろうとしてサボったんじゃない。水の入替で思っていた以上に時間が掛かって時間が過ぎてただけだ。」


いつもより力なく返事をしたが、ロイに指摘され何も食べていないことをまた思い出したせいで、腹の音がなった。何も食べていないことに対して体が不満上げているが目の前に食べるものが無い以上我慢するしかないのだ。


その姿を見てロイがカバンを漁りだしたので、思わずカバンの中から何か食べるものが出てこないか期待し自分が思っていた以上に凝視していたためロイから苦笑気味に声を掛けられた。


「おいおい。そんなに見られても大したものは出てこないぞ。ただそんな調子で教会の仕事をされて、迷惑かけたら他のみんなに悪いからな。俺の昼のスープぐらいやるよ。誰か来る前に早く飲め。」


カバンから出てきた水筒を手渡された。この友人に今日一番になるであろう感謝のお祈りをしたのちに手早くスープを飲み干した。


「ありがと。生き返ったよ。これなら今日一日ぐらいなら持ちそうだ。」


「おう。次から時間にも気を付けろよ。」


この後せめて水筒を洗ってから返そうとしたが、それだと不自然だからとすぐに取返されてしまい彼は担当の部署に行ってしまった。


今日に限って言えば神への祈りよりも、ロイへの感謝の祈りを捧げることになりそうだ。

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