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1話

「あたなを必ず私の地獄に送ってやる。」


軽く指を鳴らしただけで、目の前に人の背丈を優に超す燃え盛る火柱を作り出す。燃え盛る炎の中から誰もが地獄への入り口と思ってしまうような漆黒の禍々しい扉が現れ、その恐ろしい光景を背に美しい銀髪を靡かせ(なび)かせながら少女から宣言された。

こんなことになるのなら噂話になんて耳を貸さずにお腹を空かせてさっさと教会に帰っておけば良かったと、黒髪の少年フィンは夕方の出来事を思い出し後悔した。



教会の見習いとして働くフィンの朝は早く、まず水瓶の中の水を入れ替えることから始まる。顔洗うために一度組み上げるだけなら面倒なだけだが、決められた時間内に何度も井戸から水を組み上げるのは重労働で、必死に縄を引っ張っていたが朝の眠気から欠伸をしたさいに、思っていた以上に縄を引っ張っり上げたせいで桶が井戸に勢いよくぶつかり水を被ってしまった。


「こんな朝の寒い時間から水なんか代えなくてのに。神父様も神様も我儘だよ。」


「へえ、フィンはいつもそんなこと考えてんだ。」


ニコニコしならがら金髪の長い髪を揺らして少女が後ろから声を掛けてきた。彼女はリリアと言いフィンと同じ見習いであるが既に複数の奇跡を使えることや肖像画のモデルを頼まれる容姿をもっており将来を有望視されている。昔からの幼馴染でなければ縁がないような相手であり、先の発言を誤魔化さなければいけない相手でもある。


「リリアだってしなくていいのなら、朝の水の入替なんてしたくないだろう。」


「聖女様だって見習いの時は1人で同じことをしていたのよ。だから教会の本部で続けるべきだと決められ誰もが通って来た道よ。」


とても厳しいことを言っているがリリアの口元は悪戯をする前の子供のように少し吊り上がっており、笑みを消し切れていないまま近づいてきて、顔の近くで小さな声で話した。


「気を付けてよね。私が聞いていたから良いけど、厳しい神父様ならお叱りを受けるわよ。」


「分かってるよ。ただ今日は桶が飛び跳ねたせいで、ずぶ濡れなんだ。幼馴染の前でちょっとした愚痴ぐらい許してくれよ。」


その言葉を聞くと先ほどより機嫌が良さそうに見えるリリアが再度軽い注意をしながらも軽い足取りで立ち去って行った。その後も彼女の注意を心に留めながら、言葉に出さないよう心のなかで愚痴を吐き続け朝の仕事を終えた。

しかし、濡れた服を乾かすことに気を取られたことや、いつもより体が冷え効率が落ちていたせいで時間が掛かっていたことに気付かなかったことで早朝のお祈りの時間が過ぎてしまっていた。

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[一言] 地獄つながりで応援させていただきます( ´∀`)bグッ!
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