届け! この思い
インターフォンが鳴る。
よくあるアパートの一室。外にいるのは荷物を持った宅急便。
「はーい」と勢いよく出てきたのはこれまたよくいる元気な女の子、後藤ゆち。
縄巻さんのお宅ですか?家はそうです。え、本人は?私の彼はいないみたいで、でも、すぐに戻るみたいですよ、さあ中へ。
宅急便は戸惑ったがなぜか少しならいいかと思ったのだ。ドアが閉まる。
中で待っていたのは大家と新聞屋、二人とも目的は部屋の主だ。大家は家賃の滞納を知らせに、新聞屋は契約の更新を聞きに。初め新聞屋が訪ねて留守のため帰ろうとしたとき、彼女が現れた。たまたま鍵が開いていた部屋に入ったのだった。
部屋には置き手紙。
「すぐ帰ります。待っていて下さい。」
事情を把握した宅急便はやはり仕事に戻ることにした。後できますと言い残し。
さて、どうしたことか。玄関のドアが開かない。外から鍵がかかっているかのようにびくともしない。
焦りが怒号に変わる。
家族が待っているんだ。会社に叱られる。藤巻君が来るのを待つか。ふざけるな。
警察を呼ぼうとしたときに異変に気がついた、ゆち。
カチカチカチカチ。音がする。
何の音?配達物からだわ。まさか。開けてみましょう。いや、でも。そうだな。
宅急便は箱を恐る恐る開ける。
7うわあああ。
6爆弾!
5逃げろ!
4ドアを蹴破れ
3ガンッ
2くそ!
1しゃがんで!
0
ピピピピという音が部屋に鳴り響く。
事態を飲み込めず困惑する人々、ただ一人を除いて。ゆちは立ち上がり迷いなく歩いた。
そして、隠しカメラを持ち上げた。
はーい、爆弾びっくり大成功でしたー!
おい!ふざけるな。いい加減にしろ!騙したのか!どういうことだ?
は?先にふざけたのはそっちだろ!あんたらは一週間前にも同じ理由でこの部屋に来た。縄巻君はその日、首をつっていたの。ドアに鍵はかかってなかった。夕方、私が来て少しドアを開けたら倒れてる縄巻君が見えた。あなたたちが来た時間ならまだ息はあった。
気持ちは分かるが、どうにもできなかっ…
自分の家族が亡くなっても同じことが言えるの?どうにかできた。少なくともあんたたちならどうにかできるチャンスがあった!少しでもドアを開けていたら……彼は生きてた。だから、全世界に知ってもらうの。無関心でいた、罪を犯したあなたたちを私が裁いたの。
ゆちは押し入れに手を当て座り込む。
終わったよ、ごめんね。ずっと見てるから一緒だからね。