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昼飯で長らく待たせた牛丼店

作者: きつねあるき

 このお話は、1998年(平成10年)の春頃の事になります。


 昼飯に牛丼屋に行って手早く()まそうと思ったら、前のお客さんが大量に弁当を注文していて、自分を含めて店内にいたお客さん全てのオーダーがストップしていました。


 状況としては、厨房(ちゅうぼう)(おく)で店員が必死に弁当を()めているものの、なかなか弁当の提供(ていきょう)が追い付かないようでした。


 何かを作り始めたと思っても、その全てが弁当の容器に(おさ)められ、一向に店内のオーダーが来る気配がありませんでした。


 やっと出来上がった持ち帰り弁当は、量にしてビニール袋(大)で4個分あったので、30分以上は時間が掛かりました。


 その後、40分後にやっと自分の牛丼が来たと思ったら、並みを(たの)んだのにどういう訳か大盛が来たのです。


「すいません、大盛じゃなくて並を頼んだんですけど…」


 と、言ったら、若い男性の店員が、


「えっ、そうですか…、すいません」


 と、言うと、大盛の牛丼を前の方に()き出しながら、


「お客様で大盛頼まれた方いますか~」


 と言って、その大盛を流用しようとしたのです。


 しかし、店内のお客さんで手を上げた人は誰もいませんでした。


 そこで、自分は40分前の事を思い出しました。


 (たし)か…、自分の真向(まむ)かいにいたおじさんは、大盛を頼んでいたよな。


 でも、そのおじさんはどう見ても並みを食べていて、自分に大盛がきた…。


「40分前の店員の間違(まちが)いじゃん!」


 と、思いました。


 ただ、この牛丼店は食券での提供だったので、店員が気付いていなければ(だま)って大盛を食べてしまっても分からないのでしょうが、並の食券を前にしてそれは出来ませんでした。


 まあ、牛丼ならすぐに作り直してくれるだろうと思っていたら、その店員が、


「店長!この大盛間違ってましたよっ!」


 と、不貞腐(ふてく)れた感じで不満をぶちまけたら、厨房の奥から30代と思われる店長の男性が、


「食券の通りに作ってるんだからそんな訳ねーだろうが~、お前が間違ったんだろ!」


 と、言って、その店員にキレた為、そこで喧嘩(けんか)になりました。


「てめえ、上等だ!調子に乗ってんじゃねえ!」


「バーカ、ガキみたいな事言ってんじゃねえ!さっさと仕事をしろよ!」


 若い男性の店員はみるみるうちに赤ら顔になり、完全にぶちキレてしまいました。


 そして、無言で(いきお)いよく店長の(むな)ぐらを(つか)みました。


 そのまま、店長の顔面を思いっきりぶん(なぐ)ったのです。


 その衝撃(しょうげき)で、店長の調理用使い捨て帽子(ぼうし)がすっ飛んで、左(ほほ)を痛そうに押さえていました。


 店長は口を(ぬぐ)いながら怒鳴(どな)りつけました。


「この野郎!ただで済むと思うなよ!」


「クソが!こんな所すぐにでも()めてやるよ!」


 店内には、長々と待っているお客さん大勢(おおぜい)がいるのに、喧嘩がヒートアップしていました。


 そこで、厨房寄りのカウンターに座っていたサラリーマンの方が、


「あの、すいません…カレーの並まだですか?」


 と、(たず)ねると、若い男性の店員が、


「ああっー?」


 と、(さけ)びながら、(するど)い目つきで(にら)み付けました。


「あ、あの…、私のカレーなんですけど…」


 と、おどおどしながら言うと、


「ああっー、聞こえねえなぁ!全く聞こえねえから叫んでみろよ!」


 と、ドスを()かせて言いました。


 すると、サラリーマンの方は、食券をカウンターに置いたまま逃げる様に帰って行きました。


 その時点で、自分が牛丼店に入ってから50分以上()っていました。


 自分は、カウンターに置かれたままの食券を(にぎ)りしめ、(あきら)めて帰るかどうか(まよ)いました。


 そこで、ふと思いました。


「悪いのは客側じゃなくてどう考えたって店側だ!このまま引き下がっては()められるだけだ!」


 自分は、玉砕覚悟(ぎょくさいかくご)でぶちキレました。


「何でもいいから早く牛丼の並を持って来いよ!いつまで待たせるんだよ!」


 若い男性の店員は、おっかない顔をしてこちらを睨み付けてきましたが、そこで休憩所(きゅうけいじょ)から1人の店員が出て来ました。


 如何(いか)にも体育会系の方で、眉毛(まゆげ)はつるつるに()り込まれていて、かなりの迫力(はくりょく)がありました。


「あ、キャプテン、今戻りですか?」


「てめえら何やってんだよ!店内全く回ってねえだろうがぁー!」


「それが、こいつに言い掛かりつけられて…」


「今そんな事言ってる場合じゃないだろ!早く注文を(さば)けよ!」


「店長も何で俺を呼ばないんだよ!店を閉めるつもりかよ」


 キャプテンが入れた(かつ)のおかげで、やっと店内の食事が提供され始めました。


 自分がキレのもあったのですが、結局牛丼の並の提供は入店からちょうど1時間後でした。


 大盛を頼んだ真向かいにいたおじさんは、大盛料金で並みを食べていたし、喧嘩の八つ当たりでお客が因縁を付けられて3人も帰って行ったし最悪の展開でした。


 自分は、牛丼の提供に1時間も待たされたのに、店員から一言も無しでしたよ。


 まあ、キレたのもあったんでしょうけど…。


 牛丼店で、大量の弁当の注文が入ると、店内の提供が(とどこお)るのはよくある事ですが、店内の注文を全てストップするのはどうかと思いますね。


 それと、店内のオーダーを無視して、厨房内で店員同士が喧嘩しているなんて(もっ)ての(ほか)でしょう。


 自分が1時間もバカ面して待っていられたのは、満席だった店内のお客さんが、皆黙って待っていたというのもありました。


 その誰かがキレてくれれば、自分の出る(まく)はなかったのですが、そう甘くはないですね。


 何か、この店イラッとしませんか?


 それからは、この牛丼店には2度と行く事はありませんでした。


 今回のお話は以上になります。


 最後までご拝読頂き誠にありがとうございました。

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