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WB LIE Ⅳ-Ⅳ

 WB LIEが島へと戻り数日が経っていた。所長は奥様の所へ初めて戻る当日こそ緊張していたが、今は本当に幸せそうだ。


 昼食にはいつも奥様が作ってくれているお弁当を持参している。所長が言うには、奥様としては体調管理の甲斐もなく中年太りしている所長に対して昼食での自由を奪う側面もあるのだという。


 そういった幸せそうな所長を見ていると、後悔のウソを解消できて本当に良かったと思う。まだ自由に過去へ行き来するようなタイムマシーンが完成されていない今、本人のこれまでの努力や様々な偶然が複雑に絡み合い今回のウソの回収となった。


 このWB LIEの根幹にある『ウソ』とはどんなものなのだろうか?

 

「そもそもウソをつくのって何故なんでしょうか?」

「そうですね……。ウソをつく事は自我の成長とも考えられます。成長過程において、自分の意志が養われている証という事です。正直に思った事を何でもかんでも口にするのではなく、自分の判断でこう言った方がいいだろうと考える事が出来てくると、それが現実にはなっていない時ウソは発生するのだと思います」

「自我がない状態ではウソをつかないという事ですか?」

「自我がない状態では損得勘定は出来ませんしね。まだ幼い幼児が悪い事をした時にやってないとウソをつくでしょう? あれは怒られたくないという自我が成長しているという事だと思います」


 そういえば自分にも子供の時にそういった覚えはあった。


「つまり、ウソをつく事は人が成長する一つの過程であると言えるのでないでしょうか。そしてウソをつく事だけではなく、ウソをついた後にも成長の機会はあると思います。ウソをついた結果で後悔し、また成長していく。子供から大人まであらゆる年代の方がウソをつきます。人はどの年代になっても学びはあるといったところでしょう」


 そうなのだ、僕自身も希美の件では多くを学んだし、その後の依頼者を見ていてもそうだ。成長する事に年齢は関係ないのである。大切なのはこうしたい、こうなりたいと思う気持ちだと思う。


「そして、いいウソや悪いウソ、ウソにもいろいろな種類があります。この事務所の名前である『WB LIE』のWBは『WHITE LIE=いいウソ』と『BLACK LIE=悪いウソ』の頭文字からきています。いいウソも悪いウソも全ては成長につながる。そう考えていいでしょう。出来れば悪いウソはついて欲しくはないですけどね……」


 ウソと言っても相手の事を慮ってつくウソや、相手を陥れようとする欺瞞のウソもある。そういった種類や背景が様々なわけで、簡単に一括りにウソはダメだとは言い難いところはある。


 以前僕はタイムマシーンの是非について考えていた事がある。タイムマシーンがあれば後悔をしても何度でもやり直す事が出来てしまう。結果、一つ一つの決断が安易になり、人は考える事をしなくなってしまうのでないだろうかと。それが成長を止めてしまうのではないかと。


 しかし、人はウソをついてしまう生き物である。その過程や結果において後悔や、考える行為が伴うのであれば成長は止まらないのではないか?


 何度も何度も人生をやり直す事が出来たとしても、その都度考え、行動をとならなければ何も変える事は出来ないし、満足のいく結果を得る事も出来ない。いつか必ず本気で問題と向き合うようになるのではないだろうか。


 そうであればタイムマシーンがあっても人は成長を止める事はない。僕のタイムマシーンに対する懸念も少しは消える事であろう。


 僕はこのWB LIEを通じて人の成長する姿を見てきたし、自分自身もそう感じていた。


 人は後悔のウソにより、必死で現状を変えようと努力する。それまで気付けなかった本心や考え方、後悔のウソはそれらを気付かせてくれるきっかけになっているのだろう。


 つまり『ウソ』とは気付きへのきっかけなのだ。


 後悔のウソを通じて、人が成長していく姿を間近でみる事が出来るのがこの仕事の醍醐味だ。


 この仕事を通じて、僕はこれからも多くの人のサポートをしていきたいと思っている。




                    (了)

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