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赤ずきん

ある所に赤ずきんを着た女の子がいました。大層赤ずきんが似合うその女の子は皆から赤ずきんちゃんと呼ばれていました。ある日、お母さんから森の中にあるおばあちゃん家にお使いを頼まれます。赤ずきんちゃんは喜んでおばあちゃんの元に向かいますが、お母さんからあることを言いつけられます。絶対に寄り道をしてはならないと。そして見知らぬ人にはついていかないこと。しかし、途中で狼と出会い、道草をしてしまいます。しかも、これからおばあちゃん家に行くのだと狼に言ってしまったのです。それを知った狼は赤ずきんよりも先回りし、家にいたおばあちゃんを食べてしまいました。

そして、おばあちゃんに成り代わり、赤ずきんを待ちます。おばあちゃんの家についた赤ずきんは少し違和感を覚えますが、狼だと気付かず、食べられてしまいます。

満腹になった狼が寝ていたところを通りがかった猟師が気付き、狼のお腹の中から二人を助け出し、赤ずきんは言いつけを守らなかった自分を悔い、反省していい子になると誓いました。おしまい。


「これが、大まかなお話の流れだよ」


赤ずきんの家を目指している途中、ロアがこの本の世界の物語について説明してくれた。


「へぇー」


全然知らないのに、何故かとてつもない既視感を感じる。ロアが病気になった本は人から忘れ去られるという、ということはこの本を私は読んだことがあるのだろうか。

だからこんなにも懐かしく感じるのだろうか。


「で、このお話のどこが変わってしまったの?」


「それが実際に見てみないと分からないんだ」


まじか。それじゃあ、一から情報収集をしなくてはならないのか。


「ついたよ」


森の中に佇む小さな家があった。


「へー、赤ずきんちゃん家って森の中にあるんだね」


「うん。この本の中ではそうらしいね」


この本のなかでは?

私の疑問を感じ取ったか、ロアがすぐにそれについて説明してくれた。


「赤ずきんという物語はね、多種多様に存在しているんだ。これはどの本にも言えることだけど、人に伝えやすくしたりするには、ある程度形を変えなくちゃならない。だから、赤ずきんという本も時代や人によって変容しているんだ。」


「えーと、全然分からないのだが…」


「うー、僕説明苦手かも。大まかな内容は変わらないけど、書く人が変われば赤ずきんの家の場所が町中だったり、森の中だったりするってこと。お姉ちゃんも童話見たことあるでしょ?嫌いじゃないんだから。」


あまりピンとはこなかったが、言いたいことは伝わった気がした。

つまり、書き手によって、時代よって、はたまた読み手によって大小なり物語は変容するということだろう。漫画版では悪い奴が映画版ではそこそこ良い奴になっていたみたいな感じだろうか。


「行ってきまーす。」


そうこう考えている内に家から一人の女の子が出てきた。真っ赤なずきんを被り、歳は12~13歳くらいに見え、腕にはランチバッグのような物を持っている。その姿はまさしく、


「赤ずきんちゃん」


「そうだよ。あの子が赤ずきんちゃんだよ。」


「あの子が…」


「多分だけどこれから祖母の家におつかいに行くシーンじゃないかな」


序盤のシーンか。このおつかいによって赤ずきんは様々なトラブルにあうハメになる。

赤ずきんはこれから起こる事件など想像もしていないのだろう。鼻歌交じりに森の小道を通っていく。二人は赤ずきんにバレないように、こっそりと後をつけていく。


「これが序盤のシーンならもうすぐ狼が出てくるのよね」


「そうだよ。そして狼に寄り道をするようそそのかされてしまうんだ」


それから、数十分後、何事もなく赤ずきんは祖母の家にたどり着いた。


「「え」」


想像以上にお話の根底ともいえる部分が抜け落ちていることに、二人は驚きを隠せなかった。狼がいない。それでは、当たり前に物語として成立しない。


「えーと、狼って祖母の家に行ってから現れるんだっけ…?」


「ううん、これは無数に存在する赤ずきんでも全てに共通して、祖母の家にたどり着く前に狼が現れているよ」


「ということは、狼が出てこないのが今回の欠けてしまっている部分ね」


ロアはこくりと頷く。


赤ずきんを構成する要素の一つの狼が欠けてしまった世界。これを元に戻すためには、狼というピースを見つけ出さなくてはいけない。そのためにまずは、狼がいない原因を探る必要がある。


「情報収集の基本は聞き込みよね」


そういうと、白木は祖母の家に行き、扉をノックする。


「お姉ちゃん??」


「すいませーん。少し道に迷ちゃったんですけどー誰かいますかー」


ガチャ


扉が開く。そこにいたのは先ほどの真っ赤なずきんを被った少女と奥には祖母らしき人が立っていた。



「どなた?」


赤ずきんが少し怪訝そうに尋ねた。


「実は弟と散歩をしていたら道に迷ってしまってご迷惑でなければ、こちらで少し休んでもいいでしょうか」


「まぁまぁ、それは大変でしたね。どうぞ上がってくださいな。赤ずきん、水を持ってきておあげ」


祖母に言われ、赤ずきんは二人にコップ一杯の水を渡す。


「ありがとう」


赤ずきんはお礼を言われると少し顔を赤らめ、おばあちゃんの後ろに隠れてしまう。

その行動一つ一つにあどけなさが残る。

こんな子が狼に食べられなきゃいけない物語って…


「雪お姉ちゃん、いきなり家に押しかけてどうするつもりなの?」


ロアが私の耳元でコソコソと二人に聞こえないように話す。


「事件を解決するにはまずは聞き込みが大事だって、テレビかなんかでみたわ。だからまず当事者である赤ずきんに聞かないとね。」


ロアは少し納得のいってない顔をしていたが、私の考えに賛同してくれた。


「あの!ここって狼とかでません?」


「「え??」」


あ、やばい。単刀直入に聞きすぎた。

いきなり何を言い出すんだ、この子は?みたいな目を向けられている…


「こほん!実はお姉ちゃんとここら辺に散歩に行くとき、親切な人が教えてくれたんだ。ここら辺は狼がでるよって。だから僕たち怖くなっちゃっておばさんたちの家にお邪魔しようと思ったの。」


二人の怪訝そうな雰囲気を察してかロアが私の言葉にすかさずフォローを入れる。

その言葉に二人は納得した様子をみせる。


「ナイスフォロー!ロア」


耳元でロアにつぶやく。


「お姉ちゃん、物事は考えてから発言してよね。そんなんじゃどんな事件も迷宮入りだよ…」


ロアが少し呆れつつ私にささやく。

よし、反省反省…


「どこの誰に聞いたかはわからないけど、狼が出るなんて話一度も聞いたことがないわ。」


おばあちゃんの言葉に赤ずきんも頷く。


「そんな危ない森だったら、この子を一人で私のところになんか行かせませんよ。」


その言葉に確かに一理あると心の中で頷く。

だが実際は狼に出会ってしまうし、騙されもする。

噂がないだけで、本当はこの森の近くにいるのだろうか?

それとも病気のせいでもう狼自体がここにいない世界になっているのだろうか。

その場合はどう正しく元の物語に戻せばよいのだろうか。

色々な考えが頭をよぎる。

ともかく情報が少なすぎる。もっと根本的な情報が欲しい。


「あの、今日はここに泊ってもいいでしょうか?私たち歩くのに疲れてしまって、今日はもう動けないなーなんて」


「まあ、それは大変でしたね。何もない所ですが構いませんよ。ああでも、お布団は一組しかないの。赤ずきんは私と寝るので、そちらのお二人で一つのお布団を使ってもらうしかないのだけれど…」


「ぜーんぜん構いません!むしろ快く泊めてもらえてありがとうございます。私は弟と寝ますので問題なしです!」


「そう?なら良かったわ」


ひとまずの寝床を確保し、その夜はロアと今後どうするのか話し合った。


―朝―


赤ずきんとおばあさんには朝食までご馳走になり、ここから町までの行き方も教えてもらった。赤ずきんやおばあさんが案内してくれると言ってくれたが、昨日ロアと話し合った事でやるべきことがあったので、遠慮した。

おばあさんは少し申し訳なさそうにしていたが、こちらとしては急に押しかけてここまでしてもらっては有難みしかない。童話の世界だからこんなに人に優しいのか?

赤ずきんはまだ帰らず、もう少しおばあさん家にいるらしい。

私たちは二人にお礼をいい、家を後にした。


「さて、ロア。昨日決まったことの確認をしますか。」


「まずは、狼探しだね。」


昨日決まったことは、まずは狼がいることを想定して、狼を探し、ここに連れてくること。

次に探した結果狼がいなかった場合。これはまだ考えていない…

私達がするべき事は狼がいると信じ、この広いか狭いか分からない世界で狼を見つけ出すことだ。


「狼、どこにいるのかなぁ」


「この森にいればいいけど…」


望みは正直薄いが探してみるか…


―2日後―


「全然、見つからないんだが」


この2日間それはもう必死に探した。

最初は森を探索してみたが、いかんせん想像以上に範囲は狭かった。

やはり童話の世界だからなのだろうか、広い森みえてもある一定の範囲から見えない壁みたいなのがあり先に進めなくなるのだ。これは町をそうだった。町自体そこまで大きくなく、町というより村?に近い。この町と森の範囲でしか行動できないのだ。

一応、町の人にも聞き込みはしてみたが、みながみな狼なんて見たことも聞いたこともないと答えるだけだった。


「これはもう狼なんていなんじゃないの」


「そうかもしれないね」


ロアが私の言葉に同意する。

どうやらこの2日の調査で狼はいないと判断したらしい。


「雪お姉ちゃん、ここからは狼がいない前提で話をしよう」


「狼がいない場合ねぇ…詰んでないそれ。もうどうしようもなくない?狼自体いないのよ?どうにもできなくない??詰んでるよね?」


最悪の事態だ。狼がいないなんて。想定はしていたが、実際核心に近い物があると焦ってきた。何しろ治療しなければ家に帰れないのだから。急に不安が大きくなる。


「大丈夫だよ!お姉ちゃん何とかなるよ」


焦りと不安のせいかロアの無責任な発言に少しイラつく。


「何が大丈夫なの?」


そのせいか少し物言いが強くなってしまう。


「ごめん…お姉ちゃん」


ロアそんな私の雰囲気を察してか謝ってくる。

私はハッと我に返り、八つ当たりしてしまったと反省する。


「ごめん、ロア。いまのはなかった。まじでなかった。」


「ううん、お姉ちゃんは悪くないよ。こんなことになっているのは僕のせいだし、お姉ちゃんが怒るのは無理ないよ」


ロアが申し訳なさそうに言った。

この子だって不安だろうに私を気遣ってくれる。そんな姿を見て何やってるんだ自分と恥ずかしくなってくる。こんな小さな子に気を遣わせてしまうなど、年上として言語道断。

自分に発破をかけ、立ち上がる。


「ロア、ここにいるのはロアが連れてきたからだけど、だからといってロアせいにする女じゃないよ。私はね。狼がいないごときでくよくよしてちゃ私が廃る。一緒に考えよ?そして一緒に本を元に戻しましょ?」


「お姉ちゃん…」


ロアが私の言葉に笑顔で頷く。


「でも、実際どうするの」


「うーん、そこなんだよなぁ」


赤ずきんの話は大まかに分けると

赤ずきんが祖母の家に行く→森で狼に出会い、言葉巧みに乗せられ道草をする→その隙に狼が祖母の家に行き、祖母を食べる→赤ずきん祖母の家に行く→祖母に化けた狼に食べられる→満足し寝ている狼の近くに猟師が通る→猟師に祖母と赤ずきんが助けられる


といった流れだ。ということは、狼はどうあがいても必要不可欠なファクターである。


「あの、」


二人で悩んでいると見慣れた女の子が話しかけてきた。


「君は赤ずきん!どうしてここにいるんだい?」


ロアが少し驚いた表情をみせる。


「みんなから聞いたの。二人が狼さんを探してるって。どうしてなの?」


この2日間色んな人に聞きすぎて、噂が立っていた。

奇妙な姉弟がなぜか狼を探してることに。それが気になったらしい赤ずきんはわざわざ私達に聞きに来たらしい。


「えーっと、ここに来るとき噂で聞いたの。狼がでるよーって、だから気になっちゃって!」


「でも、私お姉さん達とおばあちゃんの家で泊った時、言ったよね。狼なんていないって」


「そうだけど…」


あれ、赤ずきんってこんな感じの子だったっけ?前にあった時は大人しく、こんな風にはっきりと物事を話すような子ではなかった気がする。何を言うにも初対面ということもあってかたどたどしかった記憶がある。


「狼がいないなんて一言も言ってないよ。そんな噂聞いたことがないって言っただけさ。」


今度はロアがはっきりとそれでいて何か圧を感じるように否定してきた。


「ああ、そうだっけ。じゃあ、これ以上無駄な労力を使わせないよう教えてあげるね。」


赤ずきんはそう言うと、笑顔ではっきりと私達に告げてきた。


「狼さんは死んでしまいました。ので、この世界に現れることはもう二度とありません。」


私はその言葉をすぐに理解することが出来なかった。


「どうしてそんなことが分かるの?」


ロアは赤ずきんの話をある程度理解しているようだった。

それと同時になにか嫌な予感もしていた。ロアの頬に嫌な汗が伝う。


「ふふ、いぢわるなおおかみさんはりょうしさんといっしょにたべてしまったの。

 こーいうの、いんがおうほうっていうんだよね?」


「なるほどね。この物語のジョーカーは君なんだね」


「ふふ、なにいってるかわからないよ?」


「分かったよ。赤ずきん。もう僕達は狼を探さないよ。これでいい?」


「うん!もうこれいじょうへんなことしてみんなをこわがらせないでね。

 ここはみんながたのしくくらすせかいなんだから」


そう言うと赤ずきんはどこかへ行ってしまった。

途中からまるで別人のようになっていった赤ずきんに私は理解が追いつかない。

ロアは何かを知っているのか、赤ずきんの話を理解していたようだ。


「お姉ちゃん、ちょっと厄介な事になっちゃったみたい。」


「そう、みたいだね。うん。まさか赤ずきんがジョーカーとはね…」


「え、お姉ちゃん、まさかジョーカーの意味が分かるの?」


「いや、まったく全然。」


正直事態についていけなさすぎて、頭に入ってきたワードを繰り返してそれっぽく言ってしまった。というか、二人して私の事完全に空気扱いしてなかった?二人の世界で話してたよね⁉


「一応、相棒の私に説明求む。さっき一体どんな状況だったのか分からなくて、ただただ立ってだけなのだが。」


「ああ、ごめんねお姉ちゃん。僕もまさかここまで進行してるなんて思わなくて。

最初に教えておけば良かったね。僕、反省。」


ジョーカー、それは意思を持った本が登場人物にまで影響を与え、改変された物語を認識し、それを維持や手伝ったりする者。ここまで進行してしまうと正しい物語にするのはかなり難しくなってくる。



「まじか。そんなのいるんだ。じゃあ、私達が治そうとすると赤ずきんが妨害とかしてくるわけ?」


「うん。その可能性は高いよ。さっきもああやって牽制してきたし。これ以上怪しい行動をしたらどんな行動にでるのやら…」


「因みに参考程度に聞きたいんだけど、ロアって今まで本の治療してきたことあるんでしょう?」


「うん。あるよ。そう多くはないけど…」


「こういった状況に陥ったのって何回くらい?」


「うーん、今回ので4回かなぁ」


4回…一体どのくらいの数を治療してきたかによってこの数字の重さが変わる。

聞きたくない気持ちでいっぱいの中、恐る恐るロアに聞く。


「因みに何回中なの…」


ロアは少しバツが悪そうに答える。


「20回くらいかな」


20回。つまり5分の1の確率でこの現象が起きている。

正直、多いのか少ないのかよく分からない。案外多い気もするし、少ない気もする。

何とも微妙な数字だ。


「え、その3回のジョーカー達はどんなことをしてきたの?」


「うーんとね、その登場人物の性格とかにもよるんだけど、話の流れを滅茶苦茶にしてきたり、僕達の邪魔をしてきたり、一番やばかったのは僕達を排除しようとしてきたりしたかな」


排除。嫌なワードだ。一体どんな事をされたのだろうか。様々な想像が浮かぶ。



「よく治療できたね…」


「あー、管理人さんは治すためなら結構手段を選ばないというか何というか…」


ロアが少し言葉を濁しながら、呆れたように言う。

なるほど。管理人って人はろくな人じゃないのか。


「それでも治すことが出来たんだから、凄い人なんだね」


「うーん、確かに治せてはいたけど、凄くはないと思う…」


「?」


「管理人さんは結果良ければ全てよしみたいな考えだったから、読み手側が解釈一致すればどういった状況でも良いみたいな人だったから適当ともいえるような…」


ロアが目を泳がせながら言う。多分正しい治し方をしていないのだろうか。

少し問題があるっぽい言い方である。それはそれとしてロアの発言に少し気になる部分があった。読み手側が解釈一致していれば…これはどういった意味なのであろうか。


「読み手側が解釈一致していればってどういうこと?」


ロアはちょっと言いたくないなみたいな顔をしたが、すぐに答えてくれた。


「えーとね、例えばの話だけど、実際にあった話とじゃないよ!例えばの話ね」


実際にあった話か。と心のなかで思った。


「毒りんごを食べたお姫様が王子様のキスで目を覚ますっていう素敵なシーンがあるとします。しかし、病気のせいで毒リンゴが作られず、王子様の助けが必要ないことになってしまいました。」


うんうん。どこかで聞いたことある話だな…。

この場合、毒リンゴを作ってお姫様に食べさせたとかそんなかな。



「管理人さんが普通のリンゴを渡して食べさせた後、無理矢理眠らせて(物理)、毒リンゴを食べたから死んでしまったと囃し立てるんだ。で、すぐに起こせるよう事前に王子様をスタンバイさせといて、王子様にキスさせたの。でも、ただのキスじゃ起きないから管理人さんがまたも(物理)起こして、王子様のキスで起きたって囃し立てるの。」


えーっと、どこからつっこめばいいのかな?というかそんなのありなのか?


「結局、普通のリンゴでも毒リンゴだと周りに認識させれば勝ちなんだって。

 情緒とかそんなもの必要ないんだって。子供向けの絵本の童話はそんな起こった事象しかほとんど書いてないから、雰囲気とかは重要じゃないらしいよ。」


ロアが少しすねた感じに話してくれた。おもうに管理人さんは結果重視なのだろう。

でもロアは結果だけでなく、過程も大事にしたいといった気持ちが話し方から伝わってきた。


「あ、これは例えばの話だからね!本当にあった事とかじゃないから真似しないでね!」


いやいや、すっごい感情こめて話してたし、管理人さんとか言っちゃってるし、その前提は無理があるって。ほとんど真実だと話しているようなものだが、私はロアの気持ちを汲み、ただ頷いた。


「確かに結構ツッコミどころ満載だけど、解決の糸口にはなりそうかも」


「え⁉」


ロアが嘘だよね?まさか参考にしないよね?的な目でこちらを見てきたが、あえて気付かなかったふりをして話しを続ける。


「だって、読み手側にそう解釈させればこっちの勝ちなんだよね。だったらやり様はいくらでもありそう。狼も実際にいなくても狼だと読み手側に認識させれば良いんでしょう?」


「そ、それはそうだけど…あんまり雰囲気ぶち壊しなのは僕はみたくないな…」


「それは私もだよ!舞台がどんなに素敵でも舞台裏が酷かったら嫌だもんね。舞台裏を見ることが出来るのが私達二人だけだったとしてもロアがそのせいで赤ずきんという舞台を素敵って思えなくなっちゃうの私は嫌だもん。基本、相棒のことは尊重する女だよ私は」


「雪お姉ちゃん…ありがとう!」


ロアが感動したのか、こちらに抱き着いてくる。

ちょっといい事言ったかな~と思ってはいたがここまで感動するとは。よほどその管理人さんは雰囲気ぶち壊しの解決策ばかり取ってきたのだろうか。

 

その後はこれからどうするべきかを話し合い、3度目の野宿をして夜を過ごすのであった。



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