テリトリー
久々に家に帰ってきた。
慣れ親しんだ我が家。ここに来るのも久しぶりだ。
それもそのはず、俺はついさっきまで入院していたのだから。
でも俺は、未だに入院の理由が釈然としていない。
実際、俺はどこも悪くない。
ただ自分の好きな様に楽しんでいたら子供に泣かれ、そのたびに病院とかに連れてかれた。ただそれだけなんだ。
今回で何度目だ?俺への嫌みか?ひどすぎる。何がいけなかったと言うんだ?
まぁいいさ。またここに戻って来れたのだから。文句も言うまい。
ここは俺が初めてここに来てから今まで、遊び回っている場所。
病院の様な知らない場所だとどうしても居心地が悪く、無茶な事はしなかったがここではそんな必要はない。
さぁ、思いっきり走り回るぞ!俺の元気な姿を見せてやる。道なんて関係ない!俺らしい姿を是非、認めてくれ!
俺は勢いよく第一歩を踏み出した。
「ママ〜!」
子供の泣き声が部屋中に響きわたる。
「どうしたの?」
「また・・・。また〜!」
子供が線路から外れても走り続ける電車の模型を指さして、泣きじゃくっている。
「おもちゃやさんは直ったって言ったのに・・・。どうしてなのかしら・・・」
何度修理に出しても、レールの上を走らない電車。新しいのを買うよりはマシと思っていたが、もう限界のようだ。このままじゃあ意味がない。
母親は諦めた表情で、電車を持ち上げた。
「仕方ないわね・・・」
小さく呟いた後、子供に向かって母親は話しかけた。
「新しいの買ったあげるから。泣きやんで。ねっ?」
「ほん・・・と?」
子供は服のそでで涙をふき取り、泣き止み、母親のエプロンを付かんで、見上げる。
「ホントよ。今から買いに行こっか?」
「うん♪」
母親はまだ車輪が回り続ける電車を、ゴミ箱に放り込んだ。