四人仲良く
携帯のアラームが部屋に鳴り響く。
いつもならこの音で目が覚めるのだが……。
寝過ごした。
「やっば……。 どうしよう」
気がつけば1限終わり、今から行けば学校に着くのは2限終わりくらいだろう。
もう休んでしまおうかなんて思ってしまうが、流石にこんな序盤から休んで何かいられない。
怠く感じる身体を起き上がらせ学校の準備を始める。
朝食は駅に行く道中にあるコンビニでいくつかパンを買って済ませることにした。
時間を確認しようとスマホを開けると優衣からメッセージが来ていた。
寝坊?
今日もお弁当作って来てるからもし来てるなら連絡ちょうだいね。
昼食の時に持って行くから。
多分ギリギリまで待ってくれてたんだろうな。
そう思うと、なんだか申し訳なくなる。
何て返事したらいいかな。
寝坊してた。
待って貰ってたよね。 ごめん。
昼食は俺が取りに行くよ何組?
これで多分大丈夫。
大丈夫だよな……?
なんかちょっと不安だけど多分大丈夫。
2限目の授業ってなんだったかな……。
携帯で時間割を確認すると英語と書いていた。
げっ……、担任やん。
これはめっちゃ怒られるやつだわ。
行きたくないなぁ……。
そんな事を考えていると気がつけば学校の最寄り駅に着いてしまっていた。
下駄箱に靴を入れ、階段を上がり教室に向かう。
恐る恐る扉を開け入るとクラスの皆が俺を見ていた。
「遅かったな山神。 何かあったのか?」
「あ、いや……。 寝てました……」
「そうか、この後職員室に来るように」
「わかりました」
担任あれ絶対怒ってるよな。
反省文とか書かされそうで怖い。
荷物を置いて職員室に向かう。
職員室の扉を開けようとすると職員室から優衣が出てきた。
「優衣、おはよう」
「あ、九十九おはよう。 寝坊したの?」
「う、うん……」
「やっぱり。 どうりでいつもの時間になっても出てこなかったんだね」
「やっぱ、待ってたんだ。 ごめんな、俺が寝坊したばっかりに……」
「全然いいのよ。 私も待たずに直ぐに行っちゃったからね」
え、待たずに行っちゃったのかよ。
悪いのはこっちだしいいけどさ。
俺の罪悪感返せよって言いたくなる。
ま、まぁ。 これは置いとくとして優衣は職員室で何してたんだろう。
「そー言えば、職員室で何かしてたのか?」
「うん。 ちょっとね」
「そか」
「おい、山神。 職員室の前で悠々とお喋りなんていい身分だな」
「せ、先生……」
「早く来なさい」
「わ、わかりました。 あ、優衣。 弁当俺取りに行くから来なくていいぞ」
「私が持っていくもん」
「何言って……。 せ、先生引っ張らんといてください」
「早く済ませないと次の授業始まってしまうだろ」
先生に若干引っ張られながら職員室に引き込まれてしまった。
内容は簡単で遅刻カードを書かされるだけだった。
ただ、遅刻が続くと反省文を書かされたり課題を課せられたりするらしい。
嫌なら遅刻なんてするなとのことだ。
遅刻なんてそうそうしないから関係は無いと思ったが、聞けば毎年一定数はいるらしい。
「ところで山神」
「何ですか?」
「神崎とはどういう関係なんだ?」
「はい?」
「さっきも仲よさそうに会話してたし、噂では付き合ってるなんて話しも出ているそうじゃないか」
「先生までそんなこと言うんですか。 俺たちはそんな関係じゃ無いですよ」
「そうか。 別に、深くは聞かんがほどほどにな」
この人、真面目な顔で一体なにを言ってるの。
まぁ、なにも言わないでいたほうが安全そうだ。
先生と話していたのもあって、書き終わる頃に授業の予鈴が鳴ってしまった。
「よし、もう行っていいぞ。 次は遅刻しないようにな」
「はい」
駆け足で教室に戻り3限目の授業を受ける。
退屈な授業なのは変わらないが、昨日の今日だから真面目に受けていた。
3限と4限の授業を真面目に受けたせいか昼食の時間の頃には身体が凄く怠く感じた。
優衣から弁当を貰いに行こうと席を立つと鋼が声をかけてきた。
「九十九、今日は災難だったな」
「そうでもないよ。 ちょっと大変だったけどな」
「そうなのか。 今日は弁当じゃないっぽいな」
「いや、今から貰いに行くんだよ」
「へぇー」
「なんでそんな、羨ましそうな目で見るんだよ」
「羨ましいからな」
はっきり言いやがった。
とりあえず早めに取りに行かないと優衣の事だから持って来そうだな。
勝手についてくる鋼は放っておいて優衣の教室に向かおうと扉を開ける。
そこにはもう既に優衣が立っていた。
「お、おい。 俺が取りに行くって言ったやん」
「持って行くって言ったよ?」
「言ったよ?じゃないわ」
「それに、今日は九十九とご飯一緒に食べようと思って」
「え、なにそれ聞いてないんだけど」
「だって言う暇無かったし、九十九寝坊したし」
「うっ……。 わかったよ」
「やったぁ。 美琴ちゃんいいよね?」
「私は構いませんよ」
え、美琴ちゃん?誰それ。
後ろから声がしたから振り向いて見ると柊さんが立っていた。
てか、俺の事めっちゃ見てる。
というか、いいんだ。
「楽しそうだな俺も混ぜてよ」
「君誰?」
「俺は八代鋼。 九十九の友達で、美琴とは幼馴染み」
「ちょっと鋼、その紹介辞めてって何度も言ってるじゃない」
「いいじゃんかわかりやすくて」
「そっか、てことは中学は私と一応一緒なのかな。 私生徒会長やってたんだけど覚えてない?」
「あーなんかちっこい人が生徒会長になったってのは知ってる。 え、てか先輩?」
「そうだよ」
「あ、タメ語で話してすいません」
「別にいいのよ。 それじゃ皆で食べましょ」
「「そうですね」」
柊さんと鋼はなんだかノリノリだった。
俺は半ば強制だったけど、案外楽しかった。
意外と柊さんが良く喋るのに驚いた。
もっと物静かな人だと思っていたからイメージと違ったんだと思う。
それから俺たちは毎日昼食を集まって食べるようになっていた。
「あ、鋼。 俺の卵焼き食うなよ」
「よそ見してる奴が悪いのさ」
「だったらお前の肉食ってやる」
「あ、お前」
「取られる奴が悪いんだよ」
「こら、二人とも辞めなさいって、目立ってる目立ってる」
「全くです。 先輩のように静かに食べれないの?」
「美琴ちゃんはなんでいつも私を引き合いに出すの?」
少し悪目立ちしている所はあるものの毎日が楽しく過ごせていた。
「そー言えば優衣」
「なに?」
「初めて弁当を交換した日あっただろ? あのとき自分の弁当はどうしたんだ?」
「あ、あのときは九十九のお弁当作るのに夢中で自分のを作るの忘れてたの」
「え、あ、そうだったのか。 俺はてっきり、弁当二つとも食ったと思ってた」
「私そんなに沢山食べれないよ」
「そ、そうか」
下校時はいつも学校の最寄り駅で別々になるから俺と優衣の二人きりだ。
こんな風に楽しく毎日が過ごせているのもきっと優衣が俺の姉だったからなんだろうな。
そんな風に思えるくらい毎日が楽しい。
毎日の楽しい日々が永遠に続いて欲しい。
俺はそう思っていた。
はい、恋夢です。
今回は投稿をだいぶサボりました。
今回はやっと四人が仲良く過ごす回です。
それではまた次の作品でお会いしましょー!