15フレーム目 『渡りに橋』
「今日は霧が出ているから、橋は通行止めだよ」
私たちの間には、あの大きな吊り橋がある。
こっちの町とあっちの町は、ほぼ同じ構造をしている。
1日のうち、昼間の3時間だけ通行可能になるのだが、今日は悪天候のため
渡れない。
明日になれば会えると思う。しかし、それが遠い。
橋さえ渡れば、ほぼ毎日会える。しかし、渡れなければ会えないのだ。
橋が明後日通れる保証はない。彼に会える保証も、ない。
確かに濃霧だった。
あっちの町は、シルエットも見えない。灰色の水蒸気が、重く横たわっている。
こちら側の岸には、真新しいデッキが整備されており、まだ13時だというのに
街灯が点いていた。数メートル先の街灯のライトも、霧にさえぎられて
わずかに光が灯っている様子だった。
再びあっちの町を見る。遠くからは、巨大なタービンがうごめく音が、何重にもなって、
鈍く聞こえてくる。その音でもいいのだ。彼はあっちの町の第23石炭採掘所が職場だ。
いつもなら、昼休みの時間を抜けて、こっち側に来てくれている頃だ。
そんなわけで、私は大きく湿った空気を吸い込んだ。
「明日、待ってるからね!!」
声が聞こえた気がした。