13フレーム目 『夕焼けと雪と』
「図書館、臨時で休館日だったと思う」
コノミから連絡が来るまで、ユウはすっかり忘れていた。今日、彼女に勉強を教える予定だったのだ。
「じゃあシマダで」
ユウはひとまずレスすると、急いで着替えて、一通りの参考書をバッグに放り込んだ。
なんとか予定の時間に駅前のロータリーまでたどり着いたが、
「おそいねーおそいねー」
バッグをかけてバス停のベンチに座っていたコノミ、立ち上がると、わざとねちっこい声色でユウに近づく。
「嘘、間に合わなかった?」
「レスがないぞ~」
と、彼女はスマートフォンの画面を見せた。ユウはずっと走っていたので、画面を開く暇がなかったのだ。
「悪い、先店に入ろう」
『シマダ』とは駅の西口にある喫茶店だ。最近全面禁煙になったので、最近はここで集合することが増えた。雑居ビルの三階を階段で上がる。
木の扉を開け、店内に入ると、広い窓から光が差し込む。
窓際の席からは、町の西が一望できる。そして、今日は運よく窓際に座れた。すでに西日が眩しい。
「竹代君、また寝ぐせ」
「急いだんだ」
「ははーん。でもいいよ、来てくれたし」
「あっ」
ユウは少し声を上げる。夕暮れと呼ぶには早いが、すでに空は黄色がかっている。
そこにちらちらと舞うもの。
「おー、ラッキーだったね」
このみが嬉しそうに窓の外を見る。
「狐の嫁入りの雪バージョン。久しぶりに見たよ」
ユウたちはしばし窓の景色に見とれる。
コノミ、自分のバッグの中を一瞥した。すると眉をハの字にさせる。
「あっ」
「ごめん、竹代君」
神妙なコノミだ。
「ノート忘れちゃった」
コノミはなんとも情けないような申し訳ないような表情をする。
ユウは、仕方ない、という雰囲気で、
「ひとまず落ち着いて、コーヒーを頼もうよ」