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革命戦争〜ゼロの英雄〜  作者: 神谷 誠
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残酷な世界

「おーい、ユキ早くこっちに来いよ」


「遅ーいユキ」

 俺と同じくらいの歳の少年と少女が大声で叫んでいる。


「ごめんごめん」

 俺はカタルとクレアを待たせてしまったらしいので謝るはめになった。


「もぉ、ユキ遅すぎ」


「どうせ、バカなこと考えて眠れなかったんだろ」


「バカなこととはなんだ。俺はこの腐った人生から抜け出すために色々考えてんだよ」


「お前、そんなことレイドどもに聞かれたら死刑だぞ。そもそも、あいつらに俺らクリムが勝てるわけないのに」

 呆れた顔でカタルが言ってくる。

 これで何回同じことを言われたんだ……いや、そもそもこれが当然の結果なのだろう。

 

 クリムはレイドに従うのが普通という考えが一般化されてからクリムの中から抗おうとする者がいなくなった。

 故に、クリムの中でこんな革命主義を貫いているのは俺ぐらいだ。

 まあ、俺には思想はあっても行動力や財力があるわけでもないから何もすることができないのが現実で、たとえ、将来革命軍らしきものが設立できたとしてもレイドの上位の連中にアリのように潰されるのが目に見えてる。


 「けど、俺は——————クリムの自由のためにそして戦争のない平和な未来のために自分の人生を使えたらいいと思ってる」

 ……これ二人に何回同じこと言ったのか分からないな。

 うん、気にしない気にしない。


「お前もまた同じこと言ってんな。笑っちゃいそうだ」

 いや、もうすでに笑ってるだろお前。


「私はぁ、ユキの意見に賛成だし、ユキには死んでもらいたくないからカタルの意見にも賛成かな。だから、私は二人の中間っていうことで」

 安定の中間か……クレアらしいいつものセリフだな。

 ま、クレアは毎回俺とカタルの仲介役だから頼りになると言えば頼りになる方だと思う。


「クレア、そろそろ俺かカタルどっちの肩を持つかはっきりさせたらどうなんだよ」


「んー……どうしようかなぁ」

 ニコニコ笑ってるよ。

 絶対決める気ないだろ……。


「二人ともそんな話今はどうだっていいだろ。これから仕事をやりに行くんだから気引き締めろよな」


「うん、カタルの言う通り、気持ち切り替えなきゃダメだね」


「はぁ……またあのゴミ溜めあさらなきゃならないんだな。他にいい仕事はないものかねぇ……」


「文句を言わないの。出兵を命じられないだけまだ命があると思わないと」

 

 そう、俺たちの仕事いや命じられた使命はまだ命の保障がされていると言っていいほどだ。

 基本クリムに課せられる命令はレイドの益になることだけで、命を懸けるようなものがほとんど。

 

 

 もちろん殺人もだ——————。

 

 

 辛うじて、俺たちは命拾いしてるということになる。

 が、血で血を洗うこの世の中だ、現状を維持するのは非常に難しいだろう。

 だから、せめて——————平和であって平和でない今をもう少しの間だけ過ごしたいと思ってる……。

 

 歩きながらそんなことを考えているとクレアが心配そうに話しかけてきた。

「ユキ、どうしたの? 考え事?」


「いや、なんでもないよ……」


「……ならいいんだけど」

 

 クレアは意外に心配性で、俺が少し悩んでいたりするとすぐ駆け寄ってきて悩みを聞き出そうとするからな。

 ま、そこがクレアのいい所なんだろうし悪く言うつもりはない。

 すると、今度はカタルが耳打ちで話しかけてきた。


「ユキが考えてたこと当ててやろうか? ズバリ——————クレアのことだろ?」


「はっ⁉︎ お、お前急になんだよ⁉︎」

 思いがけない言葉に戸惑う。


「おい、図星だろ? お前の考えてることなんて全てお見通しなんだよ」


「そ、そんなこと微塵も考えてないし!」

 

 本当のことを言うと、クレアのことは考えてた……。

 けど、それはカタルも入れて三人でこれからもずっと仲良くやっていけたらという願望であって、決してクレアだけを特別視してるわけではない……たぶん。

 時々クレアだけを見てる時があり、なぜかこうモヤモヤするんだよなぁ。

 さっきのカタルの発言にもそうだが、顔を赤らめて恥じる所じゃないはずなのに……この感情は一体なんだ……。


「まあ、さっきのは冗談としといてだ。二人とも仕事場に着いたぞ」

 

 カタルにそう言われ気がつくともうゴミ溜め場に着いていた。

 着くと同時に、ひどい悪臭が鼻を突いた。

 何回ここに来てもこの臭いだけは慣れない。

 いや、慣れるなんてごめんだね……なぜならこのゴミ溜め場は——————人間の死体が捨てられてるんだから。

 戦争や実験体、死刑などで出た死体がここに集められる。

 俺たちは積まれてる死体の山から売れそうな装飾品や使えそうな武器をかき集めて、レイドの商人に食べ物と引き換えに売り渡すことで腹を満たしている。

 死体の中には俺たちと同じくらいの子供もおり、解剖された後や体の半分が無くなっている死体がほとんどだ。

 とても能力の有無だけが異なる同じ人間がやることとは思えない。


「んじゃ、さっさと終わらせますか」

 

 相変わらずやる気だけはあるなこいつ……。

 でも、カタルもおそらく心の底からはこんなことやりたいとは思ってないんだろうな。

 クレアなら尚更そうだろう……。

 そんなことを思いながらクレアを見る。

 だが、彼女もやはり表面上には出さないようで、顔色一つ変えない。

 ……まあ、三人とも最初にここへ来た時はあまりの衝撃に仕事に取り掛かることすらままならなかったからなぁ……今はそこまでじゃないが、さすがに死体を見て触ることには違和感だけ覚える。

 

 作業しながら辺りを見回すと、子供だけが黙々と手を動かしているのが分かる。

 彼らの服装は俺たちと同じボロボロの服で、この場の作業着とは思えない格好だ。

 レイドにとって俺たちの存在価値なんて家畜以下なんだろう。


「どうしたらこんな酷いことができるんだよ……」

 

 俺は誰の手か分からないが傷だらけのその手を手に取りながら誰にも聞こえないような声で呟いた。

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