序章「エンター」
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本作は、賞応募に際し削除させて頂いた同作品の再投稿となっております(作品の削除は極力行わないべきであることは存じておりますが、賞応募の際はWEBデータは消すのがマナーであること、そして削除する以外に方法が見つからなかったので、やむなく削除させていただきました。申し訳ありません)。結構加筆修正はなされておりますが、お話としては変わりはありません。
>前回コメントを頂いた皆様
削除に際し、コメントまで削除されてしまい申し訳ありませんでした。頂いたコメントはこちらで大切に保管させていただいております。
また、加筆修正の際、それらのコメントが大変参考になりました。心より感謝申し上げます。
「『全寮制』ってのは、一体何のための制度なんだ?」
僕がこの疑問について改めて考えたのは、『那頭奈学園高等部』の入学式の前日のことである。
制度の意義なんて高校によってまちまちで、遠方に住んでいる学生を通いやすくするためとか、親元から離して自立心を養うためとか、はたまたただ単にその学校にそういう歴史があるからとか、その辺りがセキズイ反射的に思い浮かぶ。細かいことを考えれば、それこそ時と場合と人と物によるものであり、際限なんてありゃしないが、一般的な建前としてはそんなところだ。
そしてこの『那頭奈学園』だって、大同小異に過ぎないだろう。
仮にも県内有数の進学校で、進路指導の際に中学教師がちらつかせる高校リストの上位にちょくちょく名を連ねるくらいには知られてる学園なんだ。そんな一般性とかけ離れてるとも思えない。違えてるはずもない。僕もせいぜい、これからの三年間でその恩恵にあずかれるだけあずかればいい。
そんな風な結論を出して、僕はその時考えるのを止めた。これ以上考える必要もないと思ったからだ。
だがしかし、僕がこれから通い始めるこの学園に関しては違ったのだ。
生徒を閉じ込めるためだったのである。
生活のほとんどを学園の中でまかなわせることによって、常に生徒を学園の監視下に置いておくことが目的なんだそうだ。わざわざそのためだけに、数年前、結構な予算をつぎ込んで生徒全員分の寮を敷地内に建設したらしい。何とも豪気な話だ。
僕がこのことを知ったのは、入学直後――――入学式の一時間半後のことである。
緊張半ば、退屈半ば、驚き少々と言ったところの式やホームルームを終えた後の小休憩。新しい仲間との世間話もそぞろに目新しい校舎内を見て回っていた最中に、廊下ですれ違い様に声をかけてきた親切な先輩におどろおどろしくもそんな話を聞いたわけだが、僕はたいして深刻に考えなかった。
監視されて困るのは、監視されて困るようなことをしてるからであって、そういうことをしなければいいだけの話だ。年相応の自制心は持ち合わせていると自負している僕にとって、別段無理難題というわけでもない。いくら何でも教育機関が、知る権利と犯罪の境界を飛び越えてまでプライバシーに踏み込んでくるなんて考えられないし、僕には何ら不都合はない。そう考えていた。
しかし結局のところ、『閉じ込められた』ことにより一番右往左往したのは、何だかんだ言って僕だったのかもしれない。
――そしてその『閉鎖』に最も抗ったのも、他でもない、僕だったのかもしれない。




