決戦と接戦
「そもそもどうしてヴィルはクエネの意識を乗っ取ったのだろう?」
俺は城の階段を登りながら考えていた
「それはわからない...本人に直接聞いてみたらどう...?」
考えながら歩いていたので気づかなかったがどうやら目的地に付いたようだ
「ぼーっとしてたらやられるぞ?気を引き締めろ」
ドランに注意される
「わかってます、すいません」
「作戦を確認するね...私が魔法を唱えている間ドランには邪魔をしてくる人を倒して...レオはクエネの意識に入ってもらう....いい?」
「「任せろ」」
各々のやることを決め目の前に立ちはだかる扉を両手で開けた
「!?」
扉を開けると鋭利な刃物のようなものが飛んできた
「いまのはウィンドという魔法...森精霊が得意としている魔法...」
森精霊と言うことはこの部屋にエルがいるのか...目をあげるとそこには生気の感じられない目をしたエルと玉座に座るクエネの姿があったしかしクエネは俺たちが部屋に入ってきたのにも関わらず平然と椅子に座っている
「ドラン気をつけてください、この魔法はエルによるものです今のところクエネに動きはありませんが何かあったら俺が行きます」
「ああ、任せておけこんな鼻息ぐらいで俺はやられないぞ、クエネ様に動きがあったらお前に任せる」
エルのウインドを鼻息呼ばわりとは、流石ドランだ
「二人とも準備はいい...?それじゃあ魔法を展開する...」
ミラが魔法を唱えている間はドランはエルによる魔法の妨害を妨げなくてはならない
一つ...二つ...次々と風の刃がとんでくる
しかしドランはそれをいとも簡単に弾く、風の刃は次第に増えていき、今ではもう目で判断するのは不可能だ。流石はドラン、俺の師匠だ。
「おい、あとどれくらいかかるんだ、流石にきつくなってきたぞ」
ドランの顔にも汗が滲んできている
「もう少し.......ん....できた...」
どうやらミラは魔法の展開に成功したらしい
「あとは頼んだよレオ...''フィール''」
ミラが魔法を唱えた瞬間、俺の意識が途絶えた
次に目が覚めたのはどこかの暗い部屋だった
「ここのどこかにクエネがいるのか...?」
周りを見渡すが人影のようなものは見えない
「おーい!クエネ!どこにいるんだ!」
精一杯の大声をだすがやはりクエネからの返事はない、そのときポケットの物が光っていることに気がついた
「これは、クエネの髪飾り?」
その光と同調するかのように遠くの方で同じような光が見える、俺は辺りに注意しながら一歩ずつ進み出した────
「おかしいぞ...」
どれくらい歩いたのだろうか
光まであと少しなのだがなかなかたどり着くことができない
「お前はお呼びじゃねぇんだよ」
ふいに前方から声が聞こえた、しかし周りが暗いため顔を確認することが出来ない
「お前は誰だ...」
「俺様か?俺様は''アモン''」
―――アモンその名は聞いたことがある
「悪魔か、どうしてクエネにこんなことをする!」
「そうだ!俺様はベリアル様を殺したキラのクソ野郎に復讐しようと思ったんだが、どうやらとっくに死んでたみたいなんでなぁ、代わりに娘のこいつで遊んでやろうと思った分けさぁ」
ご丁寧にぺらぺら話してくる
―――そうか、だからこいつ(アモン)はクエネの身体を乗っ取り、父親が救ったキルンの街を滅ぼそうとしていたのか
しかし、そのクエネの姿が一切見えないことに不安を感じる
「ああ、分かる、分かるぞぉ、お前の考えている事がぁぁ、あの餓鬼の元に行きたければなぁ、俺様を倒さないと行けないぜぇ?」
そう言ってニタニタしながら俺に近づいてきたのは、ヴィルだった
「やっぱりお前だったのか、ヴィル」
「だぁぁからぁぁ俺様はアモンだって言ってんだろうがぁ」
そういって肩に担いだ鎌を俺の脳天目掛けて振り下ろしてくる
「くっ」
簡単に殺られるわけにはいかない、俺も背中の鞘からクラウフィングを取り出し応戦する
「落ち着け、相手の動きをよく見るんだ」
自分に言い聞かせるように呟く
「さぁこいよぉ、俺様を倒してみろぉぉ」
そういって四方八方に鎌を振り回してくる
―――たとえ一瞬でも気を抜けば殺られる
緊張のなか、俺は紙一重でアモンの鎌を受け流していく
「そらそらそらぁぁぁあ」
カチン、カチン、剣と鎌の当たる音が響く、お互いに至近距離に近づき
「なかなかやるねぇ、人間」
「人間舐めてると痛い目見るぞ悪魔」
そう言うと剣と鎌の反発を利用してお互い後ろに飛びのけた
「秘策を使うか...?」
だが''あれ''はまだ成功するか五分五分の状態だ、そうしている間にもニタニタしながらアモンがゆっくり近づいてくる
「秘策ってなんだぁい?俺様にも教えてくれよおぉ」
こいつは他人の考えている事が読める、心を無にしないとあの技は成功しないだろう
鎌による攻撃を右へ左へ受け流しながら俺は一瞬の隙を狙っていた
「へぇ、やるじゃないかぁ心を無にしたのかよぉぉ」
―――〇〇〇〇〇〇〇〇〇。
「お前を倒す!!」
「あぁ?やってみろよぉぉお!」
「くらえ''ファントムブレード''」
剣と鎌がぶつかるその刹那、俺はアモンの心臓を背後から貫いていた
「がはっ...何故...何故だぁぁぁぁあ」
「お前の鎌とぶつかる瞬間に俺は秘技を使ったんだよ...」
目の前で倒れゆく悪魔に止めの一撃をさす
「ファントムブレードは空間を超える...」
「.........」
既に息絶えた悪魔の前で俺は自分の秘技を明かしていた
「クエネの元に急がなきゃ...」
◇
「レ...レオ?」
「クエネ!!」
―――やっと見つけた
そこには涙で顔がぐしゃぐしゃのクエネの姿があった
「遅くなって悪かったな...」
「本当に遅かったぞ...だけど...来てくれてありがとう!!」
そう言ってニコッと笑うクエネを見ているとこっちまで幸せな気持ちになる
「さぁ、帰るぞ」
「帰るって...どうやって?」
「え、えーと...」
―――どうすればいいのか俺もにわからない
「肝心なところでいつもこうなんだから...」
「し、仕方ないだろ!お前を助けることで頭がいっぱいだったんだから...」
「な、なら許す...」
―――な、なんなんだこの状況は
真っ暗な世界で二人きりの状況で少しおかしくなっている...
「お取り込み中のところすいません...」
「「え?」」
レオのポケットにあるクエネの髪飾りから声がする
「聞こえますか...ミラですよ...」
「み、ミラなのか!?い、いつから聞いていた!?」
「ここのどこかにクエネはいるのか...から聞いていました...」
「それって最初から聞いていたんじゃねーか!!」
「え?え?何の話?」
クエネは何の話だか分からずあたふたしている
「ま、まぁ、その話は置いといて、どうやったら戻れるんだ?」
「私の魔法を使えば...すぐに帰って来れますよ...」
「そうか!なら今すぐにでも頼む!」
「やっと帰れる!」
こんな世界とはすぐさまおさらばしたい
「行きますよ...''フィール''」
俺がここに来た時と同じ魔法で無事、元の世界に帰ることが出来た────
「久しぶりの魔王城だぁ!!」
まるでクリスマスプレゼントを貰った子供のようにクエネは喜んでいる
「クエネ様!!」
そう叫ぶドランの横にはエルが倒れていた
「ドランもありがとね!」
「ああ、もったいなきお言葉」
クエネがいるだけでこの城は賑やかになる―――この空間俺は好きだな...
「お疲れ様...」
ふいに声が聞こえてきた
「ミラ!?何処にいるんだ」
「下を見てください....」
足元を見てみるとピンク色をした猫の様な生き物がいる
「み、ミラなのか...?」
「今はまだクエネと会う時じゃない...しばらくこの姿で居るとします...」
「そ、そうですか...」
―――このまま城に居座られたらどうしよう...
◇
「おーいレオー!」
クエネが俺の方に向かって走ってきた
「ん?なんだ?」
「また私に何かあったら助けてくれるか...?」
―――こいつに限って同じようなヘマは二度としないだろう
だが答えは決まっている────
「もちろんだ────」
これにて第一章完結となります!!
第二章からは東西南北の街、全てが登場するかもしれません!!第一章で、クエネとレオの仲は深まりいい感じになりました、このまま行くといいんですが...
まだ二部を制作してはいないのですができるだけ早く投稿できるように頑張りたいと思います!!
年内最後の投稿となります。
皆様よいお年を!
来年もよろしくお願い致しますm(_ _)m