幻影と回想
城の門番二人を倒し、無事城内に潜入することができた、今は城の最上階にあるクエネの部屋へ向かい歩いている最中である。
◇
「いいか?俺が前に来た時にエルの様子もおかしかった、つまり城の内部に居た者たちは皆悪魔の手に落ちていると考えて良いだろう」
「ん....分かった...」
「了解した」
「注意点は敵に見つからない事だ、そこでミラに魔法をかけてもらうとしよう」
「ハイドは十秒しかもたないよ...?」
「もしかしてものを見えなくする魔法はハイドしかないのか!?」
「もっと上位魔法があるけれど...その魔法を使ってしまうとクエネの意識に入る時の''エネ''が足りなくなってしまう..」
ここで知ったことだが魔法を使うのにはエネというものが必要らしい、エネは個人によって持っている量が違い、ドランのような戦士にはエネがものすごく少ないらしい
「なっ、それってやばくなったときに回復とかできるのか?」
「それなら大丈夫...」
本当に大丈夫なのだろうか...?
「あれが侵入者か...クスッ」
「''イリュージョン''」
背後から謎の人物が魔法を唱えたがレオたちには聞こえなかった────
◇
俺はあることに気がついたさっきまで一緒に歩いていたドランの姿が見えないのだ
「あれ....ドランはどこへ行った?」
「魔法を感知したわ...解析を始める...」
魔法を感知...?それに解析って...どうやらミラは補助魔法と魔法解析が得意なようだミラがいれば大体の魔法は怖くないだろう
「解析完了...''イリュージョン''を感知したわ」
「イリュージョン?要するに幻影ってことか?」
「そういうこと...私達は今幻を見ている...」
周りを確認してみる、よく見るとさっき歩いている時に見たものと同じような壁画を見つけた、どうやら同じところをぐるぐるまわっていたようだ
「今頃ドランは焦っているだろうな」
だが一人でもドランは強い、並大抵の事ではやられないだろう
「イリュージョンを止めるには術者本人を見つけなくてはいけない...」
「ってことはここのどこかに術者がいる訳だな、行くぞ!」
「まって...むやみに動かない方がいい...」
「そう言われてもなぁ...何も出来ないのか?」
早くクエネの元へ行きたい気持ちとドランの行方が分からないのでだんだん焦りがでてくる
「ちょっと黙ってて...」
ミラに怒られたので我に返り、言われた通りに大人しくしていることにした
それから少しの時間が経ち────
「術者が分かった...レオ...あの壁画を貫いてくれる....?」
そう言ってミラが指を指すのは何回か見たあの壁画だ
「本当にいいのか?」
「いいから...」
ミラの機嫌が悪くなってきたような気がするのでこれ以上聞くのは辞めておいた、俺は愛剣のクラウフィングに手を掛け壁画に向かって一振した、するとどうだろう壁画がまるで豆腐の様に斬れたのだ
「これは壁...じゃない??」
斬ったところから光が溢れ出している次第にその光が大きくなり包まれると....
「あれ?何か変わったか...?」
周りを見渡すが先ほどと何一つ変わっていない、だが斬ったはずの壁画が元に戻っている
「無事に戻れた...はやく行くよ...」
そういってミラは歩き出す、結局術者の正体は分からないまま俺は疑問と共に城の上層へ向かい歩き出した────
◆
「こいつ起きないぞ?」
そう言ったドランの前には倒れたまま目を覚まさないレオの姿があった
「レオは魔法を掛けられている...」
「魔法?お前がやったんじゃないだろうな?」
「違う...私じゃない...」
「おい、どうすればいいんだ」
「今の私にはどうすることも出来ない...だけど恐らくこの魔法は相手を眠らせる魔法か幻を見せる魔法だと思う...」
「眠らせるか幻ってことはこいつをやったのは妖精種か?」
「多分そう...相手を惑わす魔法は妖精種が得意としてる...」
妖精種はあまり人前に姿を表さない...ってことは俺達が気づかないうちにレオに魔法をかけたのか?
「これからどうすればいい」
「レオが自分で起きるのを待つしかない...」
「クエネ様の元に早く行きたいのにこれでは行けないじゃないか」
このときミラは目に見えない何かを感じ取った、まるで何かがそこにいるようだ
「...?」
「どうした?魔法使い」
「いいやなんでもない」
再び気を集中させてみるが今度は何も感じ取ることが出来なかった
何かが消え去った瞬間レオの身体が動いた
「目を覚ましたか!」
「あれ?俺は無事に帰ってこれたのか...?今度こそは現実だよな...?」
「何を言っているんだレオ?」
「レオはずっと幻を見ていたの...安心して今度こそ現実よ...」
「そっか...なら良かった、幻の中でクエネの声が聞こえたんだ...あいつは今一人で寂しがっているはずだ、はやく行こう!」
そう言って俺たちは今度こそ城の上層目指して歩き出したのであった────
◇
「なぁミラ...」
「.....」
ミラに声をかけるが返事がない、先ほど壁を切り裂いて白い光に包まれた後からミラの様子がおかしいのだ
「ドランはどこに行ったんだろうな?」
「.......」
「ミラ...?」
俺は前を歩いているミラの肩に手を置いた
「!?」
ミラに触れた瞬間''それ''は崩れ落ちた
「今のは...?もしかして俺はまだ幻を見ているのか...?」
まだ幻から抜け出せていない、そう思うとだんだん落ち着きがなくなってきた、心做しか体が熱い、呼吸も荒くなってきた
「落ち着け...落ち着け...」
そう思えば思うほど焦りは増していく、
「....?」
今、背後で何か物音がした、音のした方へ進んでみたがそこには何も無かった
「おかしいな...聞き間違いだったのか...?」
その場を去ろうとしたその時
「レオ...こっち....て」
前方から声が聞こえてくる
「は..や....き..て」
俺は声のした方に向かって走り出したなぜ走り出したのかは分からないが身体が勝手に動くのだ
「どこにいるんだクエネ!!」
クエネ...?どうして俺はこの声がクエネだと思ったのだろう
「レ....オ...た...けて...」
その声が聞こえた途端に俺は真っ白な光に包まれた
「目を覚ましたか!」
目を開くとそこにはドランの姿があった、現実に戻ることが出来たのか...?俺はここは現実なのか確認をとるとミラがここは現実だと言ってくれた
「そっか...幻の中でクエネの声が聞こえたんだ...あいつは今一人で寂しがっているはずだ、はやく行こう!」
そう言って俺はクエネの元へ向かった────
◆
「思い出した...」
少女は真っ暗闇のなか一人呟いた
「私はクエネ...あの男の人はレオ...確かヴィルに何か囁かれて...その後が思い出せない...」
クエネはここにいる理由はまだ分からないようだ
「あれはなんだろう?」
目を細めるとそこには城内を歩くレオの姿があった
「レオ!」
しかし様子がおかしい、どこか焦った表情で顔を強ばらせている
「どうしたんだろう?」
クエネは目を閉じ囁いた
「レオこっちに来て」
するとレオの様子が変わった、周りを見渡し始めて急に走り出したのだ、もう一度クエネは囁きかける
「レオこっちに来て」
「早く来て」
レオが何か叫んでいるがこちらには聞こえない
「レオ...助けて」
次の瞬間クエネは再び暗闇の中に戻ったどうやら見える時間は限られているようだ
「どうしてこんなことになったんだろう?」
クエネはここにいる理由を考えていた────
今回は時系列が紛らわしいです...すいませんm(_ _)m
次回も早めに投稿できるように頑張ります!