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第三話

 聞き覚えのない名前を言ったその姿は見覚えがある。……というよりはこの学校で見たことない奴などいない筈の権力者、緋沢(あかざわ)終夜(しゅうや)だ。

「……どういう事ですかね…………これは…。」

「そんな怖い顔しないでよ。僕まだ何が起きてるのかもわかってないんだしさ。」

 もとより目付きの悪い俺がじとっと緋沢さんを見つめると、睨んだようにみえたのか、苦笑しながらそんなことを言ってくる。

 辺りのざわつきが多くなっているのに気付いて目だけ動かすと、此方を見ていた女と目が合い、その女がビクッと肩を揺らす。隣にいた女が先ほどの女の肩を抱いて恐れているような顔で此方を見返す。……俺は不良か何かに見られているのだろうか。

「で、(ひびき)。これはどういう事なの?」

 視線を戻すと、緋沢さんは優しげな表情で連絡係に向かって問いかける。どうやら連絡係が『響』という名前らしい。響は視線を泳がせてから、ポツリ、ポツリと事情を話す。

「あ、あのっ……せ…先輩……」

 それをぼんやり見ていると、不意に服の裾を、くい、と引かれる。

「……ん?」

 そちらを見ると、御坂が眉を下げて不安そうな顔で見てくる。

「ぼ、僕……もしかして凄い迷惑を……」

 この期に及んで涙を浮かべ、体を震わせて聞いてくる。……まぁ緋沢さんが出てきたのだから仕方のないことなのかもしれないが。

「……どうでもいい。」

「えぇ!?」

 そのやりとりを会話を終えたらしい緋沢さんが見て笑っていて、そちらをみつめなおす。

「あれ、もういいの?」

 クスクスと笑いながら問いかけてくる緋沢さんに目を細めると、「ごめんごめん」といって真剣な様子になる。……まあ相変わらず口角は上がっているが。

「この件に関しては此方に非がある。申し訳ないよ。」

「……その人は……不服そうですがね…。」

 響に一度視線を送ってまた戻し問いかけると、緋沢さんは苦笑する。

「忠義が強い子なんだ。許してあげて?」

 確かに先程の行動を考えればそれは分かる。

「…………まぁ……はい…。」

 そう答え、緋沢さんが満足そうに笑った所で、いきなり校舎が揺れる。

「う、わ!?」

 多くの生徒が揺れに耐えきれずその場に倒れたり壁に打ち付けられたりとする、大きな揺れだ。いまこの場で支え無しで立っているのは、俺、緋沢さん、響、御坂だけだ。

「終夜様、これは……!?」

 名門校というだけあってパニックにはなっていないものの動揺が広がる。それは俺たちも同じ事だ。

「わからない。けどこのままじゃ怪我人が出る。どうにか一般生徒だけでも…」

「あ、ぼ、僕、やってみます…!」

 緋沢さんが眉根を寄せながら言った言葉に御坂が反応し、懐から刀を取り出し、それを左の手首に当て、横に薙ぐ。

御坂式血術手ノ傷みさかしきけつじゅつしゅのきず(よく)六十度(ろくじゅうど)

 裂けた肌から出てきた血は御坂の白い手首を囲むように円盤状に広がってから指先でその姿を球体に変え、下へ落ちる。それが印となって床に張り付く

「……あれ、血術遣ってる」

 緋沢さんがそれを見て驚いたように言っている間にも、もう術は効き始めている。

 建物全体に術をかけ、揺れを小さくしたようだが……

「っ……っは……う……ぐ……」

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