プロローグ
初めまして。葦原千里です。
今回が初の投稿で至らぬ点もあると思いますので、指摘等もろもろで宜しくお願いします。
魔物が我が物顔で町の外を闊歩する時代。『魔物をこの世から排除する』という子供じみた目標を掲げている魔物討伐隊育成学校、紅学園。
...そんな学校に入学する俺も子どもじみているのだろうが。
「やぁ。君が霧島綾慈君だね。」
いきなり掛けられた声に振り向くと、珍しい真っ白な髪の左側を耳に掛けているニコニコと笑った男が俺に話しかけて来ている。
「............まぁ..はい...」
あからさまに面倒な雰囲気にポーカーフェイスなど忘れて(というよりはしないで)返事をするも、相手は微笑んだままだ。...正直苦手だ。
「僕は緋沢終夜。理事長が君を呼んでるんだ。」
怒られるんだろうか。自慢じゃないが俺は授業を毎回半分寝ながら受けている。
「...逃げても?」
「普通駄目だよね。」
緋沢さんがクスクスと笑うと、「行こっか?」と聞いてくる。心底嫌だったが結局逆らう事は出来ず、大人しくついていく。
連れられてやってきた場所は、無駄に威圧感のあるアンティークな扉の前。嫌な雰囲気だ。
「失礼します」
緋沢さんはまるで家に入るかのように言うと、中から少しくぐもった声が「ああ」と言う。
とうとう扉は開かれ、集会を欠席している俺にとって初めて見る理事長は、思ったよりも老人だった。白髪に白髭、眼帯を右目に着けた目付きの悪い老人。
「君か...」
威圧感に唾を呑み込み、緊張していると...
「よく来たね。まあ座りなさい。終夜。お茶を出してあげなさい。」
「はーい」
眼鏡を取り出してかけると柔らかく笑い「よいしょ」と言って立ち上がる。
.........なんと言うか..........緊張を返して欲しい。
「終夜は私の孫でな。よく遊びにくるんだ。君も気が向いたら来るといい。何せ校長にやらせてるから暇でなぁ」
「は、はぁ...」
あまりにも抜けた雰囲気に戸惑っていると理事長が「単刀直入に言おう」と切り出す。
「君には第三緋沢隊に入ってもらう。」
「............はい?」
第三緋沢隊。この学園の当主である緋沢家の子息が継ぐ緋沢隊の今の長男が隊長になっている。その隊には選りすぐりの忠臣しか選ばれないはずなのだが。
「…えと…何故、私を?」
俺は緋沢家の存在を殆ど今日知ったような忠誠も何もないようなやつであって、決して跡継ぎの側にいてはならないと思う。
「これから解る。では、頼んだよ」
………………丸め込まれてすらいないのに決定したぞ。どういう事だ。
……………これは俺…無気力な護衛の日誌である。