カーナディア・オスフェが悪役令嬢になった日
もふなでのキャラで悪役令嬢やってみた。
本編とは一切関係ないので、パロディーとしてお楽しみ下さい。
ガシェ王国の王立学院では卒業式が行われ、今は卒業生と在学生の最後の別れの時。
卒業式なのに、馬鹿馬鹿しいほど豪華なパーティが開かれていて、私は卒業生のお兄ちゃんと在学生のお姉ちゃんの身内という特権を使っての参加だ。
もちろん、パパンとママンもいれば、王様と王妃様もいる。
この国の王太子であるヴィルヘルト殿下も卒業されるからだ。
そんな中で事件は起こった。
「カーナディア・オスフェ、貴女との婚約を破棄させてもらう」
ヴィの一言に周りが騒然となる。
そりゃそうだ。
お姉ちゃんとの婚約は、国内外の色々な思惑とかバランスだとか、様々な影響を省みて決められたことだ。
ヴィの一存でどうこう出来るレベルの話ではない。
「へぇ。一応、理由をお伺いしておきますわ」
お姉ちゃんはどちらかと言うと、この状況を楽しんでいるっぽい。
「ルーデリア・バンス男爵令嬢に悪辣な行為を行っていただろう。公爵令嬢として、いや、人として許すわけにはいかない!」
いやー、絶対ウソだ。お姉ちゃんがそんなことして、何の得があるんだ?
ヴィに嫌がらせをするならまだしも…。
「はぁ。ルーデリアさんがどうやって殿下に取り入ったのかはこの際どうでもいいです。ただ、オスフェ家の名誉にかけて、悪辣な行為などは一切やっておりません。わたくしがやっていたのは説教でしてよ!」
説教って…。
てか、お姉ちゃんの見事な啖呵に、周りもシーンとしちゃったよ。
「わたくし共の間では、ルーデリアさんは大層な問題児なのです。殿下は最近ルーデリアさんを認識したのではなくて?」
「…あぁ。半巡前ほどか」
半巡とは、季節が二つ過ぎた期間のこと。つまりは半年。一年は一巡で、春から風の季、水の季、火の季、土の季となっている。
「ルーデリアさんは体が弱かったということで、三巡遅れで入学しております。なのに、バンス男爵が街長を勤めてられるタカエでの態度を変えようともしません。三巡たったいまでも、身分を理解していない、礼儀作法が出来ない、言葉遣いが直らないなど、改善しようと努力すらしない。そんな彼女に説教して、何がいけないのですか?わたくしの妹ですら出来ることが出来ていないのですよ?」
お姉ちゃんよ、これでも一応、公爵令嬢として恥ずかしくないレベルの礼儀作法は身につけてますよ。
でも、5歳児に出来て14歳が出来ていないのはおかしい。他のご令嬢方はしっかりと出来ているのにだ。
ちなみに、学院は8歳から15歳までで、16歳からはガシェ王国では準成人として職業に就くことが出来る。
もちろん、貴族の間だけで、市井では子供が働くのも珍しくない。
また、分野によってはさらに2年間、上学院で学ぶことも出来る。
魔術師などの研究分野や騎士は隊長などの士官を育てる学科がある。
「それに、わたくし、こう見えても忙しいので、殿下の仰る悪辣な行為などしている暇はございませんの。学院にいる間は魔法の研究がありますし、何より妹を可愛がるという使命がございますので」
はい。お姉ちゃんは大変忙しいです。
この歳ですでにママンの仕事を手伝っていたり、王妃教育で王宮に通ったりする合間に、私の遊び相手もこなしている。
だが、私のことは使命でないと断言する!
「それと、まさかとは思いますが、殿下はルーデリアさんのことを好いておられるのですか?」
「だとしたらどうだというのだ?」
「ルーデリアさんに犯罪の疑いが出てきますので、諜報部隊に調査を依頼します」
「私は悪いことなど…」
お姉ちゃんの迫力に圧されてか、ルーデリア嬢は涙を浮かべている。
「笑止ですわ。殿下はろりこんですもの」
おおお、おねぇぇぇちゃぁぁぁん!!!!
「ろりこん?」
「殿下のような、幼女愛好趣味の方を指す言葉らしいですわ」
「別に俺はろりこんでは…」
「あら。ネマの義兄になれるから、わたくしとの婚約を承諾したのではなくて?」
何か火の粉がこっちに飛んで来たー!!
私を巻き込むなー!
「ネマのことは…」
いやぁぁぁぁ。
聞きたくないぃぃぃ。
誰か!誰か助けてくれ!!
パパン!どこ行きやがった!!
ママン、何故笑顔なのですか!?
王様も王妃様もニコニコしてないで、この二人の暴走を止めてくれよ!!
ーグルルルルルゥ
はっ!
救世主がいた!!
「ラース君!!」
なり振り構わず、ラース君のもふもふに突っ込む。
君の主が怖いよぉぉ。
「まぁ、殿下の気持ちわからなくはないよな」
「ネフェルティマ様は癒しだしなぁ」
ヴィの護衛についてる近衛騎士!!
何てこと言うんだ!!
「特に聖獣様と一緒の時はやばいよな」
「そうそう。神聖な感じで、近付いてはいけないって思うよな」
そこ!
意気投合しなくていいからさ!!
「ネマにだけ特別な愛称で呼ばせているのも、そのためですわよねぇ」
あれは、私の滑舌が悪くて、ヴィルって言えなかったからで…。
お姉ちゃん、もはや私のHPはレッドゾーンです。
「そんな殿下が、ルーデリアさんのことを好きなどとありえませんわ。洗脳系の禁呪もしくは禁断の魔道具を使っていることを疑いますわね」
何か恐ろしい単語が出てきたが、ラース君という最強のお守りがいるのに、洗脳とか出来るのだろうか?
「ラース君、ヴィはせんのーされてるの?」
ーガウ!
えーっと。肯定に聴こえたのは気のせいだよね?
「どーして?ラース君がいるのに?」
ーグルゥ
主が馬鹿だからと。
ラース君、辛辣だねぇ。
「聖獣様も認められたようですわね。陛下、ご決断をお願いいたします」
「本当にオスフェ家は良き子供たちに恵まれておるな」
「ふふっ。お褒めいただき光栄です。三人ともわたくしたち自慢の子供たちですもの」
ママンの満面の笑みとか久しぶりに見たな。
約1名こんなんでごめんよ。
「ルーデリア・バンス嬢、禁忌法違反の疑いのため、身柄を拘束する」
禁忌法とは、倫理に反する魔法や魔道具の使用を禁じている法律だ。
洗脳や魅了、死霊魔法などがそうだ。
これらは偶然発見された魔法だが、歴史的大事件を起こした原因でもある。
死霊魔法は特に禁忌とされていて、精霊さんたちも黙ってはいない。
死霊魔術師はすぐに発見され、堕落者の烙印を押されるほどだ。
死の世界は神の領域。それを荒らすのは誰であろうと許されないのだ。
「止めて!離して!!私、そんなことしてない」
騎士たちに拘束されたルーデリアさんが叫ぶ。
「ヴィル!助けて!!」
「ルー!」
おぉ!絵面だけ見れば、運命に引き裂かれる恋人たちみたいだ!
ーガウッ!!
そんな悲劇のヒーローをやっていたヴィに、ラース君からの怒りの鉄槌が!!
って、尻尾で顔を叩いただけだが。
「…ラース…?」
ーガウ…ガルルルゥ
どうやら、ラース君が何か説明しているみたいだ。
「俺が魅了にかかっていただと?」
お。ヴィが正気に戻ったのかな?
「ヴィ、だいじょーぶ?」
「ネマッ」
ぎゃぁぁぁぁぁ!!!
抱きついてくるなぁぁ。
このロリコンがぁぁぁぁ!!!
「はい、そこまで」
私を助け出してくれたのはお兄ちゃんでした。
うぇぇぇん、怖かったよぉぉ。
お兄ちゃんに必死にしがみつく。
「よしよし。怖かったね。もう、大丈夫だよ」
「これでおわかりになったでしょう。殿下はろりこんで、ネマのことが好きなのですわ!」
あ、お姉ちゃんにとどめを刺された。
「ですが、例え殿下であろうと、わたくしは認めませんので、せいぜい足掻いて下さいな」
おほほと高笑いするお姉ちゃんは、正に悪役令嬢そのものだった。
夜勤の仕事の合間に、やってしまった。
本編のコボルトわんこが動いてくれないので、気分転換に大好きな悪役令嬢で妄想していたら、やってしまった。
でも、後悔はしていない!