第6話 話を聴くということは、
アタシ、女難の相でも出てるのかな? いや、女のアタシが使うのはおかしいけど、気持ち的にね。
本日は学園に付属している食堂で〜す!! 庶民派でお財布に優しい方と貴族用の高級な方があって、基本庶民派に来ている。貴族用ってかたっ苦しくて、アタシの家よりも上位貴族がゴロゴロしてて気が休まらないからね。それに安くて美味しいってお得感がある。
レギーナとかメルヒオールは、家格的に貴族用の方なんだよねー。まあ、安定安心のぼっちだよ。あは、は……目の前が潤むッス。なんつーか、引かれちゃうのか、アタシの周りだけ人がいないんだよ。いじめかな? 友達が切実に欲しい。
そんなお昼ご飯だけがオアシスのアタシは食堂入り口にて、最近見覚えがありすぎるピンクブランドががが……。あぁ、やっぱりリリト嬢ですか、はいはい。
彼女がすり寄っているのは、見覚えのない青年だ。
リーフグリーンの髪の線の細そうな青年はリリト嬢のターゲットになるだけあって、上の中クラスだ。緑色の髪って、よくよく考えるとすごい色だね。アーモンド型のぱっちりとした目や中性的な雰囲気で、性別不詳って感じ。めっちゃリリト嬢に絡まれるてるのに、あからさまに嫌そうな顔をしていないのはすごいと思う。
「ねぇ、イージドールぅ? 一緒にご飯、だめぇ?」
「お誘いして言うただいて申し訳ありませんが、遠慮いたしますね」
「一緒に食べるご飯って美味しいでしょ? だからイージドールと食べたいなぁ」
最近、強烈なリリト嬢への当たりを見てたからか。常識的な対応がすごく……新鮮だ。ただ、リリト嬢は空気? なにそれ美味しいの系女子。字面通り、遠慮してるって勘違いしてる。いや、そもそも人の話を聞かない系の人種かな。コミュニケーション大変そうだぁ。
婉曲表現系男子と直球系話聞かない女子に、総合理解は無理なんだよ。アタシだったらとっくに匙投げてる。イージドール氏は根気と丁寧な人柄なんだね。いい人すぎて、貧乏くじを引くタイプとみた。
そんな進展しないリリト嬢とイージドール氏に近づく人影が、って。心臓がダイヤモンド製かな? あっさりと話しかけた!
「ディルク? こっちは準備って……お邪魔だったかしら」
「いえ、彼女の用事は終わってますよ、エレミア。さぁ、デートと行きましょうか」
あっさりとの話を打ち切ったイージドール氏が、輝かしい笑顔で腕組んで出てったお。リリト嬢? 突然の展開に頭がついていかなかったみたい。目玉が飛び出るんじゃってくらい目をかっぴらいて、顔面崩壊とか、前世で顔芸って言われてる感じになってる。そういえば、乙女ゲームで彼女持ちってキャラクターは基本ないだろうしねぇ。予想外か。
さっきの女の子はイージドール氏の婚約者かな。のんびりとした動作も、やわらかい微笑みも、男性の理想的な和み系女子って感じだね。御霊名を呼び合ってるみたいだし。関係も良好。まあ、顔がよくて、性格もいい人間に恋人がいないって当然確率が低いよね。うん、お似合いの二人だ。
残されたリリト嬢はいつの間にかいなくなってた。まあ、赤っ恥案件だよねー。どこに自信があるのかわからないけど、人の集まりそうなところで狙ってやってるみたいだし。
さてはて。こっちも食べ終わったし、片付けて図書館に足を伸ばそうかな。
ーーー大事なことだと思うんだけど。