第4話 出会いとは、
新学年の新学期は何かと忙しい事が多い。いや、入学生よりかはまっしかな? 高等部は日本だったら大学の色が強いんじゃないかな。専門性が学科毎に高いし。
アタシとレギーナは召喚学科よ。すごく、ファンタジーだろう? この学科は召喚に応じてくれる魔物や妖精・幻獣の知識を主に学ぶんだ。今年からは実際に上級生や先生の召喚獣とも触れ合える! 自分で召喚実践するのは三年になってかららしいんで、まだまだ先だよなぁ。
メルヒオール? あいつは所謂、進学科在籍している天才児って奴。レギーナの婚約者で幼馴染じゃなかったら、絶対関わり合いが無かったって断言できるね!
本日はレギーナはメルヒオール独り占めの日なんで、ボッチっすよ。あはは……。レギーナ以外友達がいないんだから……ぐすん。友達ってどうやって作るんだけ???
こんな日はボッチの行動らしく、早めに次の教室に行く。専門性が高いって言っても基礎授業に相当するもんはあるから、学科校舎と共通校舎を行き来することは割とある。召喚学科とか、最大で大貴族の豪邸くらいのサイズの子もいるからか、授業の関係上、結構端なのが難点なんだよねー。まあ、そもそも学校として規模が大きいから仕方がないかー。
ここの学校の創りは前世の写真集で見たヨーロッパの宮殿に似ているかな。基本は石造りで、外観はこの世界の神話__女神とその七人の使徒だったかな__をモチーフにした彫刻で華やかに飾られている。内装は学校として使う事を考えているからかな。外観に比べればシンプルだ。明かり取りに大きいフィックス窓があって、材質と作った人の腕がいいのか、ほぼ歪み無く中庭の風景を賺した。
「…………あ」
窓の向こうに特徴的なピンクブロンドの髪の少女がいた。あー…………この世界じゃ珍しい、ギャルっぽいリリト・ユゲット・ナディーヌ・ジョクス嬢だ! リリト嬢でいっか。ピンク色の髪のキャラクターって割と主人公イメージがあるんだよね。偏見かな? 少なくともこの国じゃあんまり見かけない色だよねぇ。
にしても……何してるんだろう? 彼女って少なくとも召喚科じゃなかった気がするけど。………………………………とても、気になるよね。お昼休みは後半分以上残っている。やる事は特にない。レギーナはいない。近日中にやらなきゃいけない課題も終わっている。神は言っている! アタシに出歯亀をしなさい、とーー。
そうとなれば、まずはリリト嬢から死角になる位置取りだよね。と、言うわけで、アタシ今木の上にいるの。これぞレギーナとのかくれんぼで磨いた秘技! え? 良い年した淑女の行動ではない? こ、かまかいことは気にしちゃ、め!
勿論、樹上だって言ってもリリト嬢の近くじゃないからね? さすがにそこでいきなり木に登るのは不審者すぎるんで、彼女の姿が視認できるそこそこ離れた所でっす。
そして取り入出しますは、じゃっじゃ〜ん! 金平糖もどき! 前世で見た金平糖に似てるから勝手にアタシはそう呼んでる。結晶糖にスーラの蜜を混ぜて作られる、妖精さん用のお菓子だよ。召喚魔術は契約するには仲良くなったり、実力を認められたりするのが必要なわけだ。
「《風と戯れ草花と踊る狭間の子供、どうか力を貸してください》」
謳うように、祈るように、乞うように。ゆっくりと手の平にのせた金平糖もどきに魔力を入れていく。間を置かずに、ティンカーベルのような小妖精が手の平の上に納まってたいた。契約をしてないから妖精さん
と直接言葉を交わすことはないけど、意外とボディーランゲージで伝わるからすごいよねぇ。人間の友達はレギーナしかいないけど、人外系とは割と仲良くなれるよ!
閑話休題。妖精さんに音声を実況してもらうんだ!! さてはて、何をしてるのやら。うぉ! 中庭に行ける出入り口の一つに、姿勢を低くしながらダッシュした! その動きって、エリマキトカゲとかグリーンバジリスクに似てる。全速力で足を振り上げて進む感じが。あ、扉が開くっぽい。
当然、ゴンとかガンとか、だいぶ痛そうな音が拾われた。…………頭、凹んでない? 大丈夫? と、思ったが、か弱そうに地面に突然倒れるリリト嬢。おや、これは____。
「いったーい! もう、酷〜い!」
「あ゛? …………ダイジョーブですか」
べ、ベタな出会いのシーンだーーーー!! 古典系少女漫画だったら一応ありそうな、出会い頭のゴッツンコ☆ でも出て来た人物ーー通称・風の君のゼップ・イヴァン・ヘルツル氏だーーめっちゃ怪訝そうな顔さいてる。あれって、何つーか……態とらしいよねぇ。
リリト嬢自身は肝が座ってんのか、考え無しなのか……。『我、美少女ぞ? こんなに痛がっている、可愛い美少女ぞ? 男なら傅くとこだろ? だろ?』って、目が言ってる。ゼップ氏の目がチベットスナギツネだー!! 一応、助け起こす所はゼップ氏は、良い奴だな。
そんな親切を踏みにじるスタイルなリリト嬢は、そのまま撓垂れ掛かった。傍目からだと、リリト嬢とゼップ氏が恋人関係に見えちゃうよねぇ。ゼップ氏が生ゴミをみるように嫌そうにしてなければ。顔見えてないんだろうなぁ。リリト嬢は肉食系女子なのかな?
「……すまないが、エルセル先生に呼ばれているので、失礼する」
「ねぇ、また会える?」
「……………………女神が手折られれば」
なんとかリリト嬢を振り切ってゼップ氏逃走。見事な撤退っぷりだ! 断られているのに、リリト嬢は余裕の表情。…………お断りの文言なのは知ってるよね?
ちなみに『女神が手折られれば』というのは、この世界を創ったと言われている女神は聖典によると万物を等しく愛しているらしい。博愛主義者ってことだね。そんな女神が手折られる事があれば、たちまち世界から祝福が消えるとかなんとか。つまりは、貴女を恋人や妻にできませんっていう、婉曲的お断りなんだよ!
閑話休題。急に一人で笑いだした。こわっ。
『これで、ゼップとのイベ終了ね! 次からバルタザールに本格的にアプローチしなくちゃ』
???? 良く分からないけど____キチガイって奴かな? 電波系美少女かぁ……。まったくいないわけじゃなかったかな? もう前世の芸能人なんてなんとなくしか思い出せないけど。
あぁ、そろそろ午後の授業が始まっちゃう。妖精さん、ありがとー!! 遅れずに行かなくちゃね。
感想はただ一つ。
ーーーー少なくとも、捏造するのは、ないわー。
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