第3話 幼馴染とは、
異世界転生した、アタシことテルマには、二人の幼馴染がいる。全話で話した学園の有名人なレギーナ・リーン・プライスラー辺境伯令嬢とメルヒオール・テオドリヒ・ヤルナッハ伯爵子息だ。
うちの家__シュティフター子爵家は、プライスラー辺境伯と同じ派閥なんだよね。一応領地あっても、小領土で経済を確立させていくのって、よっぽどの特産物ないと難しいよ。ほら、前世のモナコやリヒテンシュタインが、フランスやスイスに色々と頼っているの同じ感じかな? あるいは小規模な小売店を経営するよりも、でっかい企業傘下に入ったほうが、大体のリスクを避けられるって言ったら伝わるかな?
閑話休題。プライスター辺境伯には、息子さんが既に四人いて、レギーナは辺境伯様待望の娘さんなわけです。目に入れても痛くない程、可愛がるのは当然だよね。そんなレギーナに女の子の! 友達を!! で、アタシに白羽の矢が立った。
当時のアタシは、正直戦々恐々だ。オラ知ってる。こういうエラいひとに、ふきょうを、かうと、うちが、つぶれるんだよね? 責任重大な仕事を五歳児に任せるって、鬼かな??
結論、アタシの幼馴染レギーナは、天使だ。異論は認めない! いいね?
アタシの想像を裏切って、大天使だった。レギエルだよ……! 口下手なアタシが喋るのを待っていてくれたり、理不尽なこと言わないし、我が侭なんてないし。それでいて、ちょっとお茶目で、笑うとこっちまで、心がほわほわするんじゃー。ぶっちゃけ、レギーナがいなきゃ、アタシ確実にぼっち人生だったよ……。
ほら、アタシって異世界に転生した、わけじゃん。異世界の言語イコール日本語なんて、ご都合主義なんてね、無かったの!! 赤ん坊のやわらかい頭なら、単語がスルスル入ってね(略)なんて、嘘だからねッ!!
典型的な日本人に、外国語は敷居が高かったよ……。ほら、英語→日本語→英語で、聞き取りと読み取りと書き取りしてるんやで? 慣れるかよ!!? 前世と違って、英日なり日英辞典もないし、英語よりも、フランス語とかだっけ? こう、男と女で単語が変化するだよ? お・ぼ・え・き・れ・る・か!!!!
それでも何とか、読み書きと聞き取りはマスターした。レギーナと一緒だったし、レギーナ教えるのが上手かった。同い年の幼女に教えてもらう自分ェ……。いや、レギーナ以上の語学の先生はいないね! お姉さんっぷり可愛かったなぁ。
聞き取り頑張ってると、喋るのついつい忘れちゃうんだよねぇ。気がついたら、無口キャラを確立してた。いや、でも喋らないの許容されるならいいかなぁ? レギーナとは目と目でツーカーだから、問題ないよね!!
そんなレギーナ独り占め人生の終りは早かった。アタシとレギーナが八歳を過ぎた時、レギーナに婚約者が決まった。貴族の婚約ってめっちゃ早いね!? レギーナは伯爵家だから、嫁ぐにしても同一の家格がないとー、とか色々限られるからかな?
コイツがもう一人の幼馴染メルヒオール・テオドリヒ・ヤルナッハ伯爵子息である。プライスラー辺境伯とヤルナッハ伯爵は学園時代からの友人で、その縁もあっての婚約らしい。
しかし、このメルヒオール、正論をぶちかまして侍女さんを泣かせ、質問攻めにして家庭教師のプライドをへし折り、その美貌はそこらの女の子よりも美しい。相手が悔しそうにしていると、笑みが深まってるから、前世的に言えば『ド』がついちゃう『S』だ。
容赦のYの字も無いような冷血漢だけど、悪い奴じゃないんだよねー。レギーナにはデレデレに惚れ込んでいるし、メッチャクッチャ嫌み言われるけど、勉強レギーナと一緒に見てくれたりするし。
そんなメルヒオールにも、弱点がある。それはべた惚れしている婚約者ことレギーナだ! 見る目あるよね!! そしてレギーナに恋心を抱いた野郎どもの心をベッキベキの複雑骨折になるほどフラグを破壊していく魔王でもある!!!
抱いただけで、敵なんだぜ? 信じられるかい? あわ〜い恋心から、ガチ婚約者ポジを奪い取ろうとする奴まで、千切っては投げて、千切っては投げて、暗躍して、弱味握って………………なーんて噂あるけど、どこまで本当なんだろうね? 知らない方がいい気がする。
まあ、アタシにとって掛け替えのない、親友兼幼馴染なのだ。
____ゲームだと、“フラグの塊”とも言える。
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