ハクジツ その五
部屋に残されたのは俺とティルト、何かを知っているであろうティルトに何か聞こうかとも思ったが、ニーズが説明をすると言っていた以上はこいつから先に何かを聞くのは申し訳ないだろう。
ティルトを無視し、とりあえず着替えでもしようかと思ったところで。
やっぱりかと思ったがティルトが声をかけてきた。
「
「恋をしてるな、サムライガール!」
「はっ?」
声をかけてくるのではと予想していたが、あまりにもあまりなないようだったので自分でも情けないくらい素っ頓狂な声をあげてしまった。
そんな俺の反応を見て、ティルトは再び絞まりの無いにやけた顔を見せる。
「いやいや、隠す事はない。恋をするっていうのは生きていると実感できるてっとり早い感情だ。日本の言葉にもあるだろう? 命短し恋せよ乙女って。俺としてはオールオッケー。むしろ推奨。相手は敦也君だろ?」
「……はぁ」
いったい今日はどういう日なのか、そもそも色恋沙汰って奴は疑ってかからなければならないというマナーでも俺の知らないところであるのだろうか。
「同じような事をさっき聞かれたよ、俺と敦也はそんなんじゃない。どうしてそう関連付けたがる?」
「んー、無自覚か。それとも変に悟ったか。駄目駄目駄目駄目駄目ぇッ! 恋ってのはシンプルに愛ってのは単純に。人間っていうのは所詮はヒト化のホモサピエンスですしかないんだ。感情、本能、大いに結構。さらにその気持ちに全力でベットできるのは若い頃の特権だ。今からそんなに難しく考えてどうする? どうして多くのミュージシャンが数多あるテーマの中でそれを選んでいるか考えてみてごらん。心に文字通り響かせる。それはLOVEが一番、旋律に乗って響くからなんだよ、わかるだろう?」
「わからんし、お前の無駄によく回る舌に旋律どころか戦慄してるよ」
頬をかきながらばつが悪そうな顔をするるティルトはさっきの無駄話はどうしたのか、そして不意に真剣な表情を見せると、静かに、それでいて重い一言付け足した。
「その感情はいつか君を傷つけるだろう。その分じゃ戦力になる子って思ったけど当てが外れたかな。……君の剣はきっと軽い」
「なんだと、どういう事だ!?」
「おっと、恐い怖い。もっとシンプルに生きてごらんよサムライガール。俺がアドバイスしてあげられるのはこれくらいだよ」
以前にトールにも言われた言葉、それを初見のティルトが言ったのだ。
ティルトのまくしたてるような言い回しにイライラが募っていたが、その言葉に呆気にとられて言葉を失い、どこか物悲しそうなティルトの背中を俺は見送った。




