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現の責任  作者: 面沢銀
奇妙な共闘編 ~傀儡学園~
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マモナク その八


「長瀬さん!」


「長瀬君!」


 華舞雅城さんと相澤が紫電の背後から迫るも紫電は意にも介さず、振り向く事もなく二人の攻撃を避ける。

 二人の攻撃は足止めにもならず。

 僕は身構えるも、そんな紫電に魅入られたのか何もできない。


 突くべきか、蹴るべきか、逃げるべきか、それとも他にすべきなのか。

 蛇に睨まれた蛙とはこの事をいうのだろう、僕は結局のところ何もできずに紫電の接近を許した。

 紫電は手にした凶器を振るうわけでもなく、そっと片手を僕の首筋に添えると、ゆっくりと背伸びをして僕へと顔を近づけてくる。

 ここまでされてなお、僕は何もできないでいた。


 紫電が行おうとしているのは攻撃でも何でもない。

 目尻に垂れた艶やかな輝きを持つ魔眼に魅入られる。

 そっと、静かに、それでいて力強く僕の顔を引き寄せる。

 僕に否定させるという行為すらさせずに、その艶やかな唇を紫電は僕に重ねようとした。


「ハイ! ハイ! ハイ! そこまでー! 真昼間っから神聖な学び舎で君達は何をしておるのかね、少し羨ましいじゃないかまったく!」


 突然、耳元で聞こえてくる豪快で聞きなれない声。

 ハッとした僕が見たのは歩み寄って来る前に立っていた位置に足を組んで座る紫電の姿だった。


「あれ?」


「……これは?」


 階段の上では僕と同じように目をパチクリさせながら、何が起こったのかといわんばかりに周囲を確認する相澤と華舞雅城さんがいた。

 紫電はつまらなそうにほっぺたを膨らませると、大きく背伸びをして立ちあがる。


「オジさん、空気読めなすぎ。もうちょっと女心ってものを理解してくれないと」


「そいつは悪かったな、見ての通りやさぐれ者でね女心なんて気にもした事ねぇよ。それに学園ラブコメはいい所で邪魔が入るもんだぜ」


「あら、そんな事を言うわりにはわかってるじゃないの。あなた何者、私の呪いの世界に入ってくるなんて」


「ただのしがない用務員だよ、お前さんのおかげで裏門の蝶番を治す作業は中断だ」


 紫電の存在をまるで脅威に思ってもいない様子で突然表れた声の主は僕の前に立つ。

 ツナギの広い背中、それは後姿だけでも自身に満ち溢れているとわかる。


 やぼったく伸びた髪、僕と同じくらいの背格好。

 その突然表れた存在は首だけで僕の方を見ると。


「ともかく、二人とも良い夢は見れたか? 全く全く、秋の陽気にやられちまったのかい。」


 そう優しく笑うのは、つい先ほど僕と正宗のために校門を開けてくれた用務員さんだった。


「げひゃひゃひゃひゃ! にしてもちーちゃん自慢の和陰式結界術、仲間どころか自分も守れないんじゃ、まだまだってところ?」


「……敵の手法があまりにも特殊だったからです! これ以上の遅れはとりません!!」


 用務員さんの言葉に意地を張るように華舞雅城さんが声を張り上げる。

 用務員さんは「おーこわ」なんておどけながら肩をすくめると再び顔だけ僕の方を向いて答える。


「まったく、女のヒステリーは恐いよな敦也君。正宗ちゃんもあんな感じなのかい?」


 僕だけでなく正宗の事も知っているらしいこの用務員さん。

 おどけた顔を改め、眉をキリリと釣り上げると再び紫電を見据えた。


「ま、ここまでの相手じゃ本職の俺でも解呪が大変だからな。少しお灸をすえるつもりが逆効果になっちゃったな」


 その言葉を聞いてか紫電は華舞雅城さんを見ると僕に見せた笑みを再び見せる。

 まるで品定めをするような、吐き気がする笑み。


「あなたもルーキーだったの? ふーん、味付け次第では面白くなりそうね」


「さてさて、お嬢ちゃん。女子高生に手を出したら犯罪だけど、嬢ちゃんはコスプレだから構わないよな。おじちゃんも気持ちよくしてくれるんだろ?」


「あら、火遊びがお好みかしら? でも、年甲斐って言葉は知っておいたほうがいいわよ」


「げひゃひゃひゃ、美人と遊ぶのに命くらい賭けられないで、男に産まれた意味がないだろ」


「あらら、これは激しそう。うーん、相手も悪いし今日はここまでかな。また今度って事でいいかしら用務員さん?」


「どうぞ、出口は一階に降りたら右に真っ直ぐだ」


「どうも~」


 紫電は何事もなかったような足取りで階段を降りると、用務員さんの前を素通りする。

 用務員さんも言葉の通り、何もする様子もなく紫電を通す。

 紫電は帰り際に僕にウインクを投げると、混乱さめやらぬ階下に消えていった。


「志村さん、どういう事ですか!?」


 この状況に声をあげたのは華舞雅城さんだった。

 激昂の華舞雅城さんだったけど、用務員さんは意にも介さない様子だった。


「だって準備無しじゃ俺でも辛いぜあれ、それにアイツと戦うくらいだったらこの先の相手が先だろ。この混乱も落ちつかせなきゃならんしな」


 言って用務員さんは正宗が走りぬけて行った四階へ視線を投げた。


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