オイノリ その参
「正宗! 正宗!! まさむねーーーーっ!!!」
僕の手に抱かれた正宗はどこか笑った、今にも喋り出しそうな表情で。
息を引き取った。
いつかニーズから僕に向けて告げられた忠告が頭を過ぎる。
『死んだ人間は生き返らない』
僕の蠢く感情を逆なでするように、けたたましいサイレンが鳴り響く。
音の正体は意識の外にあった爆弾であり、目にしたタイマーは三分となっていた。
「そんな……正宗がここまで頑張ったのに……今からじゃ……間に合わない……」
「それは違う」
腹に響く重い声。
それは忘れようにもない声。
「葵藤寂漣!」
「その者の復活を望むのならば私がその望みを叶えよう、だが主にはその身に宿した力で自らに自身の力で傷つく呪いを受ける事になる」
「あの時も、同じ事を聞いたのか?」
「いかにも。もし、違う点があるとするなれば。今、貴様は純粋な願いで彼女を蘇らせる事は叶わぬ」
「……何だって?」
「先に告げよう、魔力を断つその少女の力ならばその爆弾の中身を殺せる故。この街を救えよう」
「それなら早く!」
「そう、貴様はこれで純粋なる願いではなく不純なる願いでその者を蘇らせる事になる」
「違う、皆が助かるならそれでいいじゃないか!」
魔術師の口もとが邪悪に歪む。
「よかろう、覚醒したその身ならば復活は容易い!」
魔術師は僕達に手をかざすと、僕のからだから一気に力が抜けていく感覚が襲い。
やがて直ぐにそれはなくなった。
「これまでと同じと思うなかれ、始まりの清算を終え。貴様自身の決断はこれより始まる! 不死鳥は『不死の呪い』は灰の中より蘇る」
思わせぶりな言葉を残して、すぐに葵藤寂漣の姿は消えた。
さらにそれを追うように正宗の心臓の鼓動が戻り、意識を取り戻した。
「あ、敦也……? なんだ……ここがあの世か?」
「ああ、良かった! 目を覚ました! 正宗、立てる?」
「なんだかよくわからん……ガーブにやられて……いや、傷がない!? 手にも! 足にも!」
「葵藤が現れて、僕の能力を渡して助けてもらったんだ」
状況を掴めない正宗だったけど、そこでアラームの音が次第に大きくなっている事に気がついた。
「話はあとだよ正宗、正宗の力だったらこの爆弾を止められるらしいんだ」
「意味がわからないが……待て、俺が止めるといったのか?」
「ああ、葵藤がそう言ったんだ」
正宗は少し視線を落とした後。
「そうか……やっと俺とお前の関係が理解できたよ。あの日の夜もそういう事だったんだな。これでお前を殺すのは二度目だ。俺はお前を背負って生くよ。最後だから言わせてくれ……敦也、お前を愛してる」
正宗の言葉の意味が理解できないまま、僕の心臓に正宗の刀が滑り込む。
さっきとは違った、まるで粘りのある温水プールに頭がつかった感覚。
今度こそ間違いなく死の感覚で。
こんなに優しい死はきっとこの先は無いだろう。
僕の意識はここで途切れた。