オイノリ その弐
最後のつもりだった。
だから最初から決着はどうなってもよかったんだと思う。
そんな気持ちだったからか、身体は自分でも怪我をしているとは思えないほどによく動いた。
今まで縋り寄り添わせてもらった彼にいい所を見せたかったのだと思うけど、自分でもそれが本当かどうかよくわからない。
だけど自分はそうであってほしいと思う、その方が自分は結局のところ普通の女の子だったのだと感じられるから。
伊達政宗とか姫野美幸とか、そんな名前に左右されないでただ一人の女性として。
それだけで満足だった、これを感じられたのだから刀を振ってきたこれまでは十分価値があったのだろう、迫るガーブの顔を見て思い、そんな決死の思いが込められた一撃だから避けられなかった。
自分を含めてここにいる全員が、きっと人がきいたらくだらないと笑ってしまう理由で戦って、思ったよりも小さくて、考えてるよりも大きな世界に関っていたのだろう。
戻りたい、帰りたいっていう気持ちはある。
無いはずがない。
それでも、よく言うだろう。
命短し、恋せよ乙女って。
その結末がこうなるかもっていう事なら、恋に喰い殺されたって事なのかもしれない。
それもいい。
心の中に巣くう怪物が愛や恋と呼ぶものならば、こんなにロマンチックな事は無い。
だから、泣くなよ敦也。
お前の腕の中で逝けるのだから、こんなに嬉しい事はな……い……
怪物と戦う者は、
その過程で自分自身も怪物になる事のないように気をつけなければならない
深淵を覗く時、
深淵もまたこちらを覗いているのだ。
現の責任 最終話 トガビト