オイノリ その零
「なんじゃだらいないのう、まさか負けおったか?」
「勝ったよ!……まぁ、内容としては引き分けかな」
「馬鹿じゃのう、それを負けというのじゃ」
「不死子いつになく厳しい」
「かっかっか、そりゃお主がこうもメコメコなのはところはそうはお目にかかれんからの、さすがに一機やられた時に辛辣に言うほど鬼でもないのでな。さて、からかうのは終わりじゃ、皆の所へ帰ろう」
未寝不死子は左腕が無くなっている事をはじめ、肉体の損傷が激しいニーズの肩を抱いて起こすと、ゆっくりと足場の悪い瓦礫を歩み出した。
魔術の塊であるニーズはこの状態でも命に問題はないが、肉体の損傷を防ぐために周囲の砕けた水道管から残っていた水をかき集め、身体の形に合わせた滅菌室のようなものをまとっていた。
それで身を守る事しかできないニーズは自分の肩を抱く不死子の袖を見てつい言ってしまった。
「不死子、濡れるよ?」
「水遊びが好きなんじゃよ、わしはの」
先程の口調とは裏腹に、自身を本気で心配しているであろう表情と慎重ながらも急いでいる足取りを受けて。
そんな不死子の顔を照れくさくて直視できずニーズは顔をそらした。