トガビト その終
「大丈夫よ正宗、出血は酷いし普通なら致命傷だけどあの娘の心臓強く動いてたから」
エルは並みの病院ならば集中治療室なみの器具をそろえた特別な救急車にタマを乗せて送り出すと俺にそう告げた。
「そうか……トールは?」
「まぁ、大丈夫。正直なところ心配だけどあの子の方が重症だし……それに命が繋がってるだけでもありがたいと思わないと」
言いながらエルは江橋の方へ視線だけ投げた。
江橋は突っ伏したまま、もう物言わぬ鷹の身体を抱きしめ涙を流していた。
「畜生……畜生……お前まで……」
今の私には何も声がかけられない。
私ができる事といったら一つしかなく、私は太ももの傷口を貰った包帯でキツク縛りつけ。右手も無理やり刀を置いて包帯で無理やり握りこませる。
「やっぱり行くの?」
「行かなきゃ爆発するんだろ、それにここまで私がボロボロなのにアイツが助けに来なかったっていう事はアイツはきっと私よりもボロボロだ」
「敦也もとんだ幸せものね、ある意味不幸せなのかしら?」
そう無理して茶化すエルだった。
だから私もちゃんと答えた。
「ああ、あの日代わりをさせたから今度は俺が代わるんだ。それでアイコさ、それで俺と敦也の関係は終わり」
いつの間にか自分の事を俺と呼ぶように戻っていた。
それでいい、理解しても俺は結局のところ伊達政宗だ。
『どういう事?』というエルの言葉を無視して俺は脚を引きずり敦也を目指した。
あの夜、敦也を殺したように。
私の目が私を敦也の下へ導いていた。
それは殺意なんかじゃなく、確信できる一つの感情。
でも、その感情を俺は答えない。