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 救急隊員に付き添いを依頼され、手を失くした男が搬送された病院に二人は同行する。

 他にも急患が何人もいる様で、病院内は文字通り野戦病院のような有様。

 車椅子、人工呼吸器、心電図、ストレッチャーが車輪の音もけたたましく走り回り、患者の状態や新しい急患の搬入を告げる医師や看護師の叫びでかまびすしい。

 ストレッチャーの上の男は本格的な止血や感染症予防の抗生物質投与、それに縫合を待っているのだが、順番が込んでいる様で中々処置してもらえない。

 意識は取り戻しており、耐えがたい痛みに喚き散らし、周囲の看護師に日本語や中国語で当たり散らす。

 そして、たまたま目に入ったリュドミラに向かって。


「このクソアマァ!ムショから出たら真っ先にお前の所に行ってやる!マ〇コがグチャグチャになるまで突っ込んでからぶち殺してやる!」


 リュドミラは涼しい顔で中指を立て。


「おう、待っててやるぜ、ムショでお前が男の味を覚えて、女に成って無きゃな」


 一方実紅も冷笑を浮かべ。


「ヤク決め過ぎて麻酔が効かへんのやね。自業自得や」


 ふと視線を感じてその方向を向くと、車椅子に載せられた少女が一人、目についた。

 パーカーにスエット、ピンク色のEVAサンダル。

 ドラッグストアーで保護した少女だ。

 彼女のは実紅ではなく、その背後のストレッチャーに注がれている。

 実紅は胸中で『しまった!』と舌打ち。

 流石のリュドミラも『あちゃぁ』とばかりに自分の頭を平手て叩く。

 少女は一瞬、視線を傍らの女性看護師の胸元向ける。その先には何本かのペン。

 車椅子から立ちあ上がり、看護師の胸元からペンを一本奪うと、此方に向かって駆けだして来た。

 手には逆手に持ったペン。鋭い筆先が前を向いている。

 看護師は止めようと手を伸ばしたがもう遅い、少女はストレッチャーまであと数歩の距離に迫っていた。

 その前を塞いだのはリュドミラだった。

 少女の体を胸で受け止め、両腕でしっかりと抱きしめる。

 耳元で彼女が甲高く泣きわめき、止めどもなくあふれ出る涙でその美しい金髪や白い頬が濡れるのも構わず。


「手癖が悪いなぁ、オマワリの目の前で物を盗むなよ」


 それから両腕の力を少し強めて。


「大丈夫、もう大丈夫だよ」

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