表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化け猫ミッケと黒い天使 〜エピソード0〜  作者: ひろみ透夏
第1章 萌の部屋にいたものは

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/61

第1章 06

 

「ちがう! ポルターガイストなんかじゃない! やっぱりこの部屋、なにかいる!」


 窓の外はどす黒い雨雲が広がり、まだ昼過ぎだというのに、室内はすっかり暗くなっていた。遠くの空で稲光(いなびかり)が光っている。



「ぼぼぼ、ぼくには何も、みみみ、見えないですけど?」



「よく目を()らして。学習机の本棚よ……」



 美玲(みれい)ちゃんに言われた通り、ぼくは恐る恐る学習机に目を向けた。

 言われてみれば、学習机の本棚の辺りで、何かがうごめいた気がする。


 さらに目を()らしたとき、ぼくはついに見つけてしまった。

 並んだ本と本のすきまから(にら)みつけている、ぎょろりと血走った目玉を……!


 ぼくの頭の中は真っ白になってしまって、そこから先はぼんやりとしか覚えていないけど、うっすらとした記憶の中で、美玲(みれい)ちゃんはこう怒鳴っていた。



「年頃の女の子の部屋をのぞくなんて、なんて変態オバケなの! そんなところにかくれていないで、出てらっしゃいっ!」



 美玲(みれい)ちゃんが怒鳴ると、学習机とうしろの壁のわずかなすきまから、ずるりずるりと黒く大きな影が現れ、(ちゅう)に浮かび上がった。


 それは、異様(いよう)なほどに大きな、人間の頭――。


 激しくふり乱したような髪の毛に、お肌の手入れがされているとは思えない、脂ぎった男の顔。

 天井の半分を埋めつくさんばかりの、巨大な中年男性の頭の下には、不釣(ふつ)り合いなほど小さな体がぶら下がっていて、ぎょろりとむき出した大きなふたつの目玉は、左右ばらばらに、せわしなく辺りを見回していた。



(だん)ジテ……(だん)ジテ変態ナノデハナイ……。心配ナノダ……。

 オレノカワイイ(もえ)ニ、変ナ虫ガヨッテコナイヨウ、見守ッテイルダケダ……』



 目玉お化けが、地響きのような低い声でそう(つぶや)いたとたん、部屋中にタバコの煙の匂いが立ちこめた。


 目まいがしそうな匂いにむせつつも、美玲(みれい)ちゃんが怒鳴る。


「嘘つかないで! あんたは(もえ)に振り向いてもらいたいだけでしょ!

 だから物音を立てたり、家の物を動かしたりして、(もえ)にふり向いてもらおうと必死なんじゃない!

 そんなことしたって、(もえ)に嫌われるだけよっ!」



『ウ……ウウ…ウ……』


 目玉お化けの脂ぎった顔が、みるみるうちに真っ赤に染まっていく。

 次の瞬間、部屋の窓ガラスがびりびりと震えるほどの大きな声で叫んだ。



『……ウ・ル・サ・アァァァァァァイッ!!!』




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ