第3章 13
萌ちゃんの魂を取りもどせるタイムリミットは夜明け。
もう、一時間を切っている。
シショウは、美玲ちゃんたち三人と手をつないで輪になると、ぐるりとみんなの顔を見回して言った。
「いまさらだが、これから行く世界から簡単に帰れると思うなよ。本来なら迷い込んでしまったら最後、もどることの出来ない、無間地獄だ」
シショウの言葉に、恐怖で顔がこわばる三人。
無情にも、そんな三人の恐怖を無視して、シショウは続けた。
「きみらの覚悟は聞いているから、もう心の準備は確認しない。行くぞ!」
そのとたん、みんなの体が、激しく燃え上がる青い炎に包まれた。
すかさずぼくも、青い炎の中に飛び込む。
気が付くと、ぼくは今までと同じ、深夜の交差点に立っていた。
美玲ちゃんや優斗くん、チャーシューも、辺りをきょろきょろと見回している。
「なんや、おどかしよって……。地獄ゆうから、どんな怖ろしい世界かと思ったら、ワイらの世界と変わりあらへん。あのおっさん、失敗したんとちゃうか?」
油ぎったメガネをずり上げながら、チャーシューがいぶかしがる。
「でもなんか、すっごく寒くない? まるで冬みたい」
二の腕をさすりながら言った美玲ちゃんの口から、白い息が出ている。
確かに、ここは見慣れた交差点だったが、真冬のように寒くて、足もとには濃い霧が、川のように流れていた。
「ここはきみたちの住む現実世界じゃない。現実世界に重なって存在する、いわば裏世界だ」
と、とつぜん、頭の中にシショウの声が響いてきた。
「現実世界のバグのいくつかは、この裏世界が原因とされている。
ある一定の周期で現実世界と重なる時期があり、そのときに、裏世界の住人が現実世界に現れてしまうんだ。もちろん、その逆もありえる。つまり、ぼくらが迷い込んでしまうパターンだ。萌さんのようにね……。
一説では、現実世界が構築されるまえに試作され、廃棄されたロストワールドとも言われているが、裏世界の存在理由は謎だ」
「そんな大昔につくられた世界なのに、なんでぼくらの世界とそっくりなんですか?」
優斗くんが、弱々しい灯りをともす、街灯の柱を触りながら聞いた。
「鏡のように現実世界の影響を受けながら、日々変化している。きみらの世界以上に不安定だから、気をつけないと迷子になって、帰れなくなるぞ」
優斗くんが触っていた街灯が、どさりと崩れた。
「まるで砂だ……。みんな、シショウの言う通り、裏世界はもろいから気をつけて」
「せやな。よく見ると別ものや……。っていうか、ヒゲのおっさんはどこから語りかけてんねん! 姿を現せや!」
チャーシューが、どこへともなく怒鳴り声を上げた。
「さっさきも言ったが、裏世界はとっても危険なんだ。ぼくは帰れなくなると嫌だから、現実世界からきみたちを見守っているよ。温かいまなざしでね」




