表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化け猫ミッケと黒い天使 〜エピソード0〜  作者: ひろみ透夏
第1章 萌の部屋にいたものは

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/61

第1章 01 萌の部屋にいたものは

 

 港に(めん)した工場地帯が取り壊されて、ウォーターフロントなんて、おしゃれな肩書きで新しく生まれ変わったのは、となり街、豊海(とよみ)町のこと。


 雨後のタケノコのように、にょきにょきと建設される高層マンションを横目で眺めながら、下町情緒あふれる街並を大切に守っているのが、美玲(みれい)ちゃんの住む(かみ)(もり)町だ。


 そんな、街の再開発からも、時代の流れからも、ぽつんと取り残された(かみ)(もり)町の逢生橋(あいおいばし)の上で、ぼくと美玲(みれい)ちゃんが出会ってから、もう一ヶ月になる。

 いまでは、美玲(みれい)ちゃんの部屋に居候(いそうろう)させてもらえるほど仲良しになっているんだ。



「ミッケ、またいつものお願いね! 八時からどうしても観たい番組があるの~」


 言うなり美玲(みれい)ちゃんが、部屋を飛び出していく。

 まあ、居候(いそうろう)させてくれる理由のひとつに、ぼくに宿題をさせるためってことも、あるんだろうけど……。



 ぼくは机に飛び乗ると、いつものように空欄(くうらん)だらけの一枚のテキスト用紙と向き合った。

 器用に鉛筆を抱え込んで、ことわざの問題を解き始める。


「わずかな出費で大きな利益を得ること? エビで鯛を釣る……っと」


 美玲(みれい)ちゃん()で生活するようになって、色々とわかったことがある。


 まず美玲(みれい)ちゃんは、美砂(みすな)小学校に通う、とっても元気な小学六年生の女の子。

 しょっちゅう遊びにくるクラスメイトの七海(ななみ)(もえ)ちゃんと、同級生の男の子やアイドルの話で盛り上がったりしている。

 黒い服が大好きなこと、お化けが見えること以外は、いたってフツーな、どこにでもいる女の子だ。


 パパさんは、それに輪をかけてフツーな人。

 いつもやさしそうなまなざしで家族を見ているだけで、みんなの話に加わろうとすることはない。わりと……というか、存在感はかなり薄い。


 驚いたのはママさんだ。


 美玲(みれい)ちゃんにそっくりで、とっても元気で明るい人だけど、どうやらママさんには、ぼくの姿が見えているらしい。だけど、そんなそぶりを一切(いっさい)見せないし、美玲(みれい)ちゃんでさえ、ママさんがお化けが見えることは知らない。


 このまえママさんにこっそり話しかけてみたけれど、いっさい聞く耳を持ちません! という感じで無視されてしまった。


 でも追い出そうとするわけでも(けむ)たがるわけでもなく、ぼくの存在を許している感じ。


 とにかく不思議な人だ。




 そんなぼくらの日常に事件が舞い込んできたのは、さらに一ヶ月ほどたった、ある雨の日の午後だった。

 美玲(みれい)ちゃんの親友である(もえ)ちゃんが、とつぜん訪ねてきたのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ