第2章 01 ライオン☆ハート
「もう、萌ったら、あれほど内緒にしておいてって言ったのに!」
学校から帰ってきたとたん、美玲ちゃんは吐き捨てるようにそう言うと、自分のベッドにいきおいよくダイブした。
その反動で、ベッドの上でくつろいでいたぼくは、床に転げ落ちて腰を打つ始末。
「あの子は言うよ。言いふらすよ。ぼくには予想できたね」
痛めた腰をさすりながら、床の上で丸くなる。
それが美玲ちゃんのお化け退治の件だってことぐらい、聞かなくたってわかった。
自分の感情にとっても素直な萌ちゃんが、あれほど怖がっていた怪奇現象と、それを見事に解決した美玲ちゃんの力を、みんなに黙っているはずがない。
「まったく、おかげで毎日みんなに囲まれちゃって大変よ。今日なんか休み時間に、となりの二組の男子まで押しかけてきちゃってさぁ……」
「モテモテだね。本当は嬉しいんじゃないの?」
「嬉しかないわよ! その男子って、絵に描いたような怪奇オタクなの。
相撲取りかってくらいに体が大きくて、なんか油の浮いた汚れたメガネをかけてるし、とにかくオカルトへの熱量がハンパなくて、暑苦しいのよ。例えるならチャーシューね。かたい焼き豚じゃなくて、ラーメンに入っているトロトロに茹でられたチャーシュー。男の子だから、チャーシュー男。なんちって」
「ひどい言いよう。でも、そんなに注目の的なら、優斗くんだって、ちょっとは美玲ちゃんのこと、気にしているんじゃないの?」
すると美玲ちゃんは、とつぜん体を起こして、だらしなくゆるみきった顔をこちらに向けた。
「聞くう? それ聞くう? そんなに知りたいなら、教えてあげてもいいけど」
面倒くさいなぁ……。
と思いながらも、ぼくは知りたいとうなづいてみせた。
「確かに男子に囲まれているときのわたしを、チラチラ見ている気もするのよね。ジェラシーってやつかしら? わたしよりうしろの席に座っているから、ちゃんと確認できないんだけど……。
そうだ! あしたミッケも一緒に学校へ行きなさい。それで優斗くんがわたしのこと、どんな視線で見つめているか、確認しなさい!」




