表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化け猫ミッケと黒い天使 〜エピソード0〜  作者: ひろみ透夏
第1章 萌の部屋にいたものは

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/61

第1章 10

 

 (もえ)ちゃん()のお化けと戦った、次の日の放課後。

 ぼくは美玲(みれい)ちゃんと一緒に電車に乗って、内陸側のとなり街、古譚(こたん)町に向かっていた。


 相変わらず、美玲(みれい)ちゃんの着る服は黒がメインのワンピース。

 昨晩、この服装が、世間(せけん)では『ゴスロリ』と呼ばれていることを、美玲(みれい)ちゃんの部屋に転がっている少女向けファッション雑誌で学んだ。だけど、雑誌で見たようなゴテゴテした印象と違って、美玲(みれい)ちゃんの格好は、もうちょっとシンプルなシルエット。


(もえ)ちゃんが着ているような、明るくてふわふわした『甘ロリ』も、似合うと思うんだけどな……」


 ぼくのひとり言に、美玲(みれい)ちゃんは何もこたえなかった。

 今日の美玲(みれい)ちゃんは、朝からずっと張りつめている。


 ぼくだって、かくしてはいるけど緊張している。なんたって、昨日、(もえ)ちゃんの部屋で戦ったお化けと、再び対決しようってんだから……。





 古譚(こたん)町の駅からのびる商店街は、夕飯の買い物をする人たちでにぎわい始めていた。

 わき道に入り、細い裏路地を歩く。すると、あるアパートの前で美玲(みれい)ちゃんの足が止まった。

 かなり古めかしい、くたびれたワンルームのアパート。


 サビだらけで所々に穴まで空いた、鉄製の外階段を上がる。

 美玲(みれい)ちゃんは、二階の一番奥にあるドアの前に立ち、すうっとひと呼吸してから呼びかけた。



「ごめんください」



 ぼくも美玲(みれい)ちゃんの頭の上から飛び降りて、いまにも外れてしまいそうな壊れかけのドアを見上げた。


「誰もいないんじゃない? だいたい、人が住めそうにないよ、このボロアパート」


 ちょっぴり留守を願っている、ぼくの問いかけにもこたえず、美玲(みれい)ちゃんはドアをノックし、なおも呼びかける。



「ごめんください。わたし、(もえ)ちゃんの友だちです」



 すると、ようやく中からごそごそと音が聞こえてきた。

 お化けとの対決を覚悟して、ぼくは壊れかけのドアを見つめる。


 きしんだ音を響かせつつドアから顔をのぞかせたのは、しかし、お化けではなく人間の男だった。

 髪は寝ぐせで乱れ、脂ぎった顔の目には眼帯をしている。

 もう片方の目は、ぎょろぎょろと落ち着きなく辺りを見回していた。



「ごめん、借金取りかと思ったんだ……。きみが、(もえ)の友だちだって?」


 不気味な雰囲気の中年男性に、ぼくは一瞬ひるんでしまったけど、美玲(みれい)ちゃんは動じることなく、まっすぐに男を見つめて言った。


「はい。(もえ)ちゃんのことでお話があります」


 男はドアを大きく開いて、部屋の中に入るよううながしたが、美玲(みれい)ちゃんはきっぱりと断った。



「ここで結構です。知らない人の部屋には、入らないように言われてますから」


「知らない人って、おれは(もえ)の……」そこまで言って、男は言葉を切った。

「まあ、いいか。きみもそこでいいんだね」


 一瞬、男がぼくのことを見たような気がしたけど、きっと気のせいだよね。



 男はひとり薄暗い部屋の中にもどり、座卓の前に腰を下ろしてタバコを手に取った。


「タバコは遠慮してください」


 美玲(みれい)ちゃんに言われて、男が苦笑しながらタバコを座卓の上に放り投げる。


「きみは子どものくせに、はっきりとものを言うんだな」


 部屋に染み付いてるタバコの煙の匂いで、ようやくぼくは気が付いた。

 この匂いは、(もえ)ちゃん()でお化けが現れたときに嗅いだ匂いだ。



 ってことは、こいつがお化けの正体? 生きているように見えるけど……?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ