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メガネの探偵、二階堂  作者: 大隅スミヲ
九十九

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九十九(6)

 そこにあるのは闇だった。

 本当であれば屋上へと出るはずの扉。その扉の向こう側に待っていたのは、闇だったのだ。

 異界。それは現世とは違う場所、常世とこよ

 それは、永久不変や不老不死、若返りなどと結びつけられ、古事記や日本書紀、万葉集、風土記などにも記述が見られる世界。しかし、その一方で常世は、死者の国だともされている。

「待っていたよ」

 闇の中から声が聞こえてくる。それは女の声だった。

 微かに匂う柑橘類のような甘酸っぱい香り。

 闇の中にふわっと白い何かが浮かび上がり、それが次第に近づいてくる。

 ある程度まで近づいてきたところで、その白いものが人であるということがわかった。

 髪が長く、背の高い女だった。年齢はわからない。若いようにも見えるが、ある程度の歳のようにも見える。

「二階堂と桂川だね」

「あんたは誰だい」

 桂川は近づいて来た女に言った。女と桂川の身長はさほど変わらない。桂川は小さいというわけではないので、女の背が高いのだ。

 女は桂川の目をじっと見つめながら、口に笑みを浮かべて言った。 

九十九つくも

「なるほど。鬼門晴明の教祖様の登場ってわけか」

 女の名前を聞いた桂川は納得したような顔で女のことを見た。

「どういうことなんだ。俺たちはあんたの団体である鬼門晴明から依頼を受けて、悪霊祓いに来たんだぞ」

 二階堂は、率直な疑問を九十九にぶつける。

 この空間のどこにも魑魅魍魎などの気配はなかった。ただ、闇が広がっており、その空間に二階堂と桂川、そして九十九がいるだけだった。

「わたしがあんたたちに会いたかったから頼んだのさ。方法はウチの人間に任せたけれど」

「ちょっと待て、じゃあ十六人が犠牲になったって話は?」

「知らないわよ。全部、ウチの人間に任せたのよ」

「じゃあ、エレベーターホールに居た怨霊は?」

「だから、わたしは何も知らないって」

 その言葉に二階堂と桂川は顔を見合わせた。

 鬼門晴明。やはり、この団体はどこかおかしい。匿名掲示板に四つ辻を使った異界への扉の召喚方法を書き込んでみたり、妙な仕事をこちらに回してきたり、どこか制御が出来ていないのではないかと思える部分がある。

「こんな手の込んだことをしなくても、普通に会いに来ればいいじゃないか」

「わたしはここから出られないんだよ……。だから、来てもらったんだ」

「どういうことなんだ?」

「そのままだよ。わたしは、この異界でしか生きることができないのさ」

「呪いか?」

「まあ、そんなところかな……。あんたほどのものじゃないけれどね、二階堂」

 二階堂はじっと九十九のことを見た。この女は二階堂家に伝わる呪いのことを知っている。警戒すべき相手なのだろうか。それがわからなかった。

「俺の呪いが怖くてヒナコと引き離したのか、九十九」

「面白いことを言うね、二階堂……。そんなんじゃないよ。ヒナコはこの空間には入れない。それだけだよ。この空間はわたしが作り出した異界なんだ。生者しか入れない異界。亡者はもちろんのこと、呪いもここには入れない」

「そうなのか」

 二階堂の言葉に九十九はにっこりと笑みを浮かべて頷いた。

「それで、おれたちに会いたかった理由っていうのは、なんなんだ」

「いい質問だね、桂川……。そう、それが本題だね」

 まるで教師のような口調で九十九が言う。

 若い女性。九十九の見た目でそう思っていたが、話し方などを聞いているとそうではなく、実はもっとずっと年上なのではないかと思えた。

「桂川は、十二支を調伏したって聞いたけれど」

 その言葉に桂川は警戒した顔つきになる。

 二階堂には何の話であるかわからなかった。


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