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メガネの探偵、二階堂  作者: 大隅スミヲ
旧校舎の魔女

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旧校舎の魔女(4)

「旧校舎の魔女の話って知ってる?」

「なにそれ」

「え、知らないの。わたしも先輩から聞いた話なんだけどさ」

 部活帰りだろうか。ジャージ姿の女子生徒たちがそんな話をしながら、二階堂の脇を通り抜けていく。

 この学園には旧校舎にまつわる噂話がありすぎる。

 自殺した生徒の幽霊、戦時中に亡くなった兵隊の霊、そして今度は魔女と来た。学生たちは噂話が大好きだ。しかし、火のない所に煙は立たぬとも言う。だから、自分は学園長に雇われたのだ。二階堂はそう思い直し、自分の脇を通り抜けていった生徒たちを呼び止めた。

「なあ、ちょっと教えてほしいんだ」

 二階堂に声を掛けられた女子生徒たちは、一瞬強張った表情をして見せた。それもそうだろう。学校の中とはいえ、見たことのないスーツ姿の男に声を掛けられたのだ。

「なんでしょうか?」

 そう口にして一歩前に出てきたのは、ショートカットがよく似合う利発そうな少女だった。

「さっきキミたちが口にしていた噂話なんだけれど」

「ああ、旧校舎の魔女のことですか」

「そう、それ。先生もその話について、ちょっと教えてもらいたくてね」

「いいですよ。でも、わたしたちから聞いたって誰にも言わないでくださいね」

「もちろんだよ」

 二階堂が自分のことを先生と口にしたことで、彼女たちは二階堂をこの学校の教師なのだと認識したようで少し警戒感が解けた感じになっていた。

 彼女たちの話によれば、昨年の夏休みにS学園高等部の二年生がひとり姿を消したという事件があったそうだ。その女子生徒は深夜二時に旧校舎へとやって来て、ある儀式を行ったのだという。その儀式というのは魔女との契約と呼ばれている儀式であり、生贄を差し出す代わりに、ひとつだけ願いを魔女に叶えてもらうというものだった。

 その女子生徒には、七つ年下の妹がいたそうだ。ただ、妹といっても血は繋がっておらず、母親の再婚相手の娘という関係だった。魔女との取引に彼女は、妹を生贄として差し出した。そして、自分の願いである母親と元の父親との暮らしを望んだのだ。

 しかし、魔女はその願いを叶えなかった。代わりに、悪魔を召喚し、その女子生徒を頭から喰らわせ、妹も喰らってしまったのだそうだ。

「なんなんだ、その誰も救われない話は」

 思わず二階堂は本音を口にしてしまった。

「そうなんですよ。だから、旧校舎の魔女は信用しちゃダメなんです」

「そうなのか……。そういえば、最近、旧校舎に入り込んだ生徒がいるって話は聞いたことないかな」

「えー、知らないですよ」

「あ……もしかして」

 ショートカットの女子生徒の後ろに隠れるようにしていたロングヘアの女子生徒が言った。彼女は人見知りなタイプらしく、二階堂に対してどことなくおどおどとした態度を取っていた。

「何か知っているのかい?」

「ちーちゃんたちじゃないかな。あの子たち、魔女の話をしていたし」

「ああ、それならわたしも聞いた」

「ちーちゃん?」

「あ、えっと、チサトっていう二組の子です」

「いつも三人組の?」

「そうです。そのチサトです」

 二階堂はカマをかけて三人組と口にしてみたのだが、どうやらそれが当たったようだ。

「チサトさんは、学校には?」

「きょうもいましたよ」

「そうか……」

 二階堂は腕組みをして、頭の中で情報の整理をはじめようとした。

 するとショートカットの女子生徒が下から覗き込むようにして二階堂の顔を見てきた。

「あの、先生……もういいですか?」

「ああ、ありがとう。助かったよ。それじゃあ、さようなら」

 二階堂は笑顔で彼女たちにお礼を言うと、去っていく二人の背中を見送った。

 旧校舎に侵入した生徒の情報を手に入れることができた。それと旧校舎にまつわる魔女伝説とやらも、なんとなくわかった。あとは、事の真相を確かめるだけだ。

 二階堂は現校舎の階段を上がると、四階にある生徒指導室へと向かうのだった。


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